第22話 !!!!!!!!!

「え?あ、う、うん」


 なんで二人してここにやってきたのかはわからない。だが、俺が意地を張って頑なに拒んだらそれこそ超格好悪いので、三人で片付けることにした。


 二人は黙々と体育祭で使った道具やら備品やらを倉庫に運んでくれた。だが俺たちの間で会話は成立しておらず、無言のまま作業を続ける。ていうか、有紗と真礼を見ることもできずにいる。


 二人にお膳立てされたのに、全部台無しにしてしまった罪悪感が俺の心をむしばむ。


 そんなもどかしい気持ちを抱えたまま作業を進めると、あっという間に片付いた。主に重い荷物は俺が運んだので、ちょっと汗をかいてしまっている。


「よっこらしょっと!これで終わりか……」

「そう見たいね」

「思ってたより大した量じゃなかった!」


 作業が終わった俺たちは体育倉庫の中でくつろいでいる。マッドで三人並んで仲良く座っていると、また罪悪感が押し寄せてきた。


 やっぱり、ここは……


「あのさ……二人とも」

「ん?」

「どうした?」

「選抜リレーの……」




「全く誰だよ!使い終わったらちゃんと閉めろって何度も言ってるのに!」

 

 と、俺が二人に派手にしくじったことに対して謝ろうとしたが、別の先生が体育倉庫のドア付近までやってきて怒鳴り声を出す。


「全く!」


 がチャッ(南京錠をかける音)


「あ……」

「あ……」

「あ……」


 わずか数秒間のことで、声をかける暇もなかった。


「嘘だろ……ん!」


 俺は立ち上がり、出入り口へと歩きドアを押したり引っ張ったりするが、一向に動かない。


「外から鍵がかかっているから出られないぞ!ん!くそ!」

「倫太郎……本当に鍵、かかってるの?」

「ああ。携帯も更衣室に置きっぱなしだから連絡できる手段もない。ちくしょ」

「倫太郎くん」

「ん?って!おい!なんで二人とも急にこっち来てるんだ?びっくりしただろ!ていうかなんなんだ、その目は!?」


 俺がドアを開けることを止めて後ろを振り向くと、有紗と真礼が鼻息を荒げ、獲物を狙う鷹のような目で俺を睨んできた。まさか、俺が選抜リレーでしくじったから怒ったのか?

 

 きっと、一位になれなかったことを根に持ってるんだろう。こいつら、仲直りする前までは何事のおいても一位になろうと血反吐吐くほど努力してたし。


 俺は二人にちゃんと謝らないといけない。いきなりやってきた先生のせいでうやむやになったが、ここは頭を下げるべきた。


「ごめん!二人とも!せっかく頑張って一位になりかけたのに、冷や水をさすようなことをしてしまった!」

「はっ?倫太郎は一体何を言ってるのかしら?」

「倫太郎くん……そんなの私たちはどうでもいいの!」

「い、いや!どうでもよくないだろ?だって、全部台無しにしてしまったぞ!」

「そんなのいいから……」

「そんなのいいから……」

「ん?」




「匂い嗅がせて!!!!!!!!!!!!」

「匂い嗅がせろ!!!!!!!!!!!!」






「ふえっ?」



 二人の美少女はそう言って、俺を押し倒した。ドアにもたれかかった状態の俺に二人は鼻を俺の胸にくっつけて匂いを嗅ぎ始める。


「すうーはあーすうーはあー……これよ……これが欲しかったわ!」

「くんくん……くんくんくん!はあ……1週間ぶりに味わう倫太郎くんの匂い……さいっこう……」

「お、おい……二人とも!ここは学校だぞ!ていうか、今汗かいてるから止め……やめんか!?」

「すうーーーーーーーーーーーはあーーーーーーーーーーー」

「くんくんくんくんくん……くんくんくんくんくん……」


 俺が必死に訴えかけても、二人はもうすでにスイッチが入っていて、完全に音声情報を遮断している。認知できるのは嗅覚だけ。


「あああもう!なるようになれ!(なでなでなで)」

「すうーはあー」

「くんくん……」


 俺は自暴自棄になって、両手を伸ばして、有紗のポニーテールに結った黒髪と真綾の柔らかい金髪を撫で撫でしてあげた。


 二人も汗をかいているため、体育倉庫は、男女の汗の匂いで充満していた。


 やばい……理性が持たん……


 密室、美少女二人、密着、くんかくんか……どのキーワードも刺激的で男心をくすぐるに足るパワーを持っている。


 こんなの……


 こんなの……






「全く誰だよ!!勝手にドアを閉めたやつは!!まだ片付け終わってないんだよ!!」



ガチャン(勢いよく体育倉庫のドアが開く音)



「内藤先生!!!!!!!!」

「内藤先生!!!!!!!!」

「内藤先生!!!!!!!!」




「え?あああああああ!!?」



 詰んだ。

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