第19話 優秀な女性陣とパッとしない男性陣
俺と野原がクラスに入ると、珍しくほとんどの人が既にいて、その中でもとりわけ女子陣が
「今年も始まるね!体育祭!」
「うん!うん!今年は優勝間違いなしだと思うよ!」
「そうね!今年は朝比奈さんと神崎さんというチートキャラがいるんだから!」
「だよね!でもさ……」
「うん?」
「女性チームは言うことなしだけど、肝心の男性陣がさ……」
と、渋い顔で言いつつ、自席へと歩いてくる俺たちに向けてため息をつく。
「……ん……ちょっと微妙かもな……」
なんで俺たちを見て浮かない顔をしてんの?失敬な!いくら野原が冴えないやつだからと言って、面と向かってあんなこと言われるとちょっとムカつく。
「いくら倫太郎が冴えないやつだからと言って、面と向かってそんな生ゴミを見るような視線向けなくてもいいだろ!」
おいこら!
「ちょっと!今のはてっきり成幸に向けられたんだろ?」
「いや、ないない。俺、こう見えても、体力と体動かすのには自信があるよ!」
「お前、毎晩毎晩徹夜でゲームばっかして、体育のとき50Mくらい走ると、死ぬほど息切れするくせになに言ってんの?」
「ぎくっ!は、ははは!なにを言ってるのかな!倫太郎は!倫太郎こそ、アニメとラノベばっか読むから全然運動しないくせに!」
「ち、違うぞ!俺だって運動くらいするから!」
「なんの運動だい?」
「……」
この学校における一番可愛い美少女と2番目に可愛い美少女の頭を全力でなでなでする運動とは口が裂けても言えぬ……
俺たちが攻防戦を繰り広げていると、女性たちがもっと軽蔑の視線を向けてくる。
「は……どんぐりの背比べとはよく言ったものね」
「うちのクラスの男子、ほとんどあんな調子だもんね」
「本当にバカばっか」
まあ、確かに、うちのクラスの男性陣が冴えないやつばっかなのは正直認めざるを得ない。あ、ひとり例外がいるな。俺が目を見開いて、その例外にあたる存在を見やれば、図ったようにパッと立ち上がる。
「やれやれ、僕をここにいるビリどもと同じ扱いするのは良くないぜ!」
気持ち悪い笑顔を浮かべてふんぞり返るのはイケメン(笑)の
「木手山は、冴えない以前にキモいんだもんえ」
「「ねえ〜」」
「ズキュン!あ、女子たちが声を合わせて俺をキモいっていうなんて……なんて幸せ!」
木手山のやつ、Mだったのかよ……
俺が全力でドン引きしていると、クラスの女子の一方的な態度に痺れを切らした男性陣うちの一人が口を開く。
「女子たちひどくね!?俺たちもできるもんなら、思う存分活躍したいんだよ」
「そう!俺たちにも人権というもんがあるで!」
「男なめんな!」
「そうだ!俺たちだってやればできるんだ!!」
男子たちは、意気投合する。そして、いつしか男性陣と女性陣が分かれて互いを睨みつけていた。取り残されたのは俺だけか。ちなみに有紗と真礼も女性陣に紛れ込んでおり、男子たちを睨んでいる。まあ、確かに負けることが大っ嫌いな二人からしてみれば、俺たちは単なる足を引っ張る存在にすぎない。
二人は、いわゆる高嶺の花。そして俺は冴えない男。だけど、俺たちはお互いのことが好きだ。
だから俺も、あの二人にふさわしい男にならなければならない。目立つのは嫌だし、野原がいなければ、完全にボッチ貫いたはずだけど、今度は一肌脱ぐときだ。そう考えていると、冷め切った表情の有紗とめらめらと闘志を燃やす真礼が挑発するような口調で話す。
「へえ〜じゃ、なめられない活躍を見せてくれるのかしら?」
「ぎく!」
「もし、足手まといになるなら、私が許さないわよ!」
「うはっ!(むしろ、ご褒美かも……)」
有紗と真礼が放つ雰囲気に圧倒されている男子たち。ここは、俺の出番か。ちょうど真ん中に立っている俺は、咳払いをしてから、口を開いた。リア充人生を
満喫していた小学生だった頃のように。
「男性諸君、このままやられっぱなしでもいいのか」
「……」
「このままクラス女子たちの尻に敷かれまくってもいいかと聞いてるんだ。答えろ」
「「い、いやだ」」
「クラスの女子だけじゃなく、隣のクラスにいるイケメン集団からも見下されている現状から打破したくないのか?」
「「打破したい!」」
「なら勝つしかあるまい!一生懸命汗を流すしかあるまい!」
「「おう!!!」」
「倫太郎くんの汗?(真礼)」
「倫太郎が汗をかく?(有紗)」
「だったら、体育祭が始まるまで放課後になったら特訓だ!汗水流して、汗臭い体をぶつけ合って、優勝のための
「「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」」
俺が数年ぶりに、熱弁を
「古澤くん!すごいよ!俺、君を見直した!あまり喋らないし、一時期、朝比奈さんと神崎さんとの間で変な噂立ってたから、二人の弱み握ってるクズだと思ってたのに……こんなに男心くすぐる演説ができるなんて……本当にクズだわ」
おい、モブ
「神崎さんと幼馴染って聞いた時は、なんであんなパッとしないやつがと、すごく恨んでいたのに、今は尊敬するぜ!」
パッとしないって……おい、モブ
と、心の中で思いっきり叫んだが、届くはずもなく、見えるのは有紗と真礼の姿。
「……んたろうが汗水流して汗臭い体を……」
「……たろうくんの汗だくになった匂い……」
ちょっと?二人とも……顔怖いんですけど……有紗は目がやばいし、真礼はよだれまで垂らしているし……
本当に、体育祭で優勝できるのだろうか。クラスの優秀な女子たちに認めてもらえるのだろうか。
始まる前から心配になってきた。
追記
いつも12時01分にアップロードしていたのですが、いつしか13時01時になってしまった……
なのでこれからは間を取り、可能な限り12時02分に投稿します。
おかげさまで★300、超えました!そしてなんと!カクヨムWeb小説短編賞で、現在、総合1位となっています。本当に嬉しいです!(一万字以内なので、ちょっとあれですが……)
これからも頑張っていきますので、よろしくお願いします!
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