第27話 お泊りに誘われた

「ななな、実代みよ! お前、自分が何を言っているのかわかっているのか!?」


 男を家に泊めるってことは、何をされても文句を言えないぞ。いくらオレだって、変な感情を抱くかわからない。まして相手は、後輩だ。言いなりにする可能性だってある。深夜のテンションってのは、バカにできないのだ。 


「わかってるっす。もちろん、変な関係はナシっす」

「当たり前だ! オレら、まだ学生だぞ。R18な関係は、ネット小説界隈でもタブーだ。『センシティブすぎらあ』って、削除対象になるんだぞ!」

「そうっすから、清い関係のまま朝チュンしようって言ってるんすよ!」


 わけがわからんのだが?


「なんで、そこまでお泊まりにこだわるんだよ?」

「単に、『男女間の友情って成立するのかな』って、疑問に思っただけっす」


 それで、オレを巻き込むのかよ!?


「あのなあ。それ、色んな専門家の人が『性欲がある限り、ムリでーす』って提唱しているぞ」

「でも紺太こんたセンパイならわかんないじゃないっすか。だって紺太センパイですし」


 どういう意味だ?


「そもそも、なんでオレなんだよ?」

「朝までゲームに付き合ってくれる人なんて、センパイくらいじゃないっすか!」


 アホか! 夜は寝なさい!


「一度やってみたかったんすよ。朝まで耐久ゲームとか」


 なるほどな。持て余す体力の限界に挑戦したいと。しかし、自分の女友だちはついていけないから、オレに頼んでいるというわけだな。


「ゲームだけに付き合うぞ」

「ホントっすか? やった」


 じゃあさっそく家に着替えとかを取りに向かおうか。


 そう思っていた矢先だった。 

 


 家の電気が点いてるじゃねえか。



「おおう……親が帰ってたっす」


 はいしゅーりょー。


 まあ、わかっていたさ。淡い期待をしていた自分を、殴りたい気分である。


「でも、せっかくのGWっすよ。どっかお泊りしたいっす。誰かを泊めたいっす」

「いや別のヤツを泊めろや。オレみたいな異性じゃなくてよお。同性のお友だちとかいねえのか?」

「いねえから、紺太センパイに頼んでるんじゃないっすか!」


 逆ギレかよ!?


「いや、いるだろ女友だちが!」

「あの子には頼めないっすよ。ゲーム知識に疎いんで」


 なんつう理由だよ?


 めんどくせえなあ。


「じゃあ、オレんち来るか? 親いるけど、なんとかする」

「はい! お願いするっす!」

「家に電話かけるから、待ってろ」


 ケータイを出して、親に連絡を入れる。


「ああ、オヤジ? 今から人を泊めるんだけど……はあ? 親戚が倒れた?」


 なんでも、オレを除いて家族で見舞いに行くという。


 そんな話は、出たっけ?


「前から話してたって、あっ」


 思い出した。たしかGWは家族で出るからって言っていたな。

 オレは来なくていいし、オレ自身も「受験勉強したい」って、断ったんだっけ。


 父が、姉貴と代わった。


『あんたは学校の友だちと試験勉強するから、家にいたいって言ってたじゃん』


 元々オレが遠出を好きでないことは、姉貴が一番知っている。

 まして、親戚の用事だ。オレが行く必要はない。


「言っていたな。見舞いって、今日からだったのか」


 姉貴のゼミって休日でもやっていて、今日からになったんだとか。


『おみやげ買ってくるけど、何がほしい?』

「いらないよ。見舞いだしな」


 オレは好きで断ったんだ。この際、気を使わせたくない。


「それと、今日は人を泊めるから」

『女?』

「男です! 勉強です!」

『女ね』


 怖いな。さすが女のカンというべきか。


『いいよ別に、どっちでも。女連れ込んでも、どうせ朝までゲームするだけだと思うけど』


 鋭い。さすが身内である。


『ハメ外すなよ?』

「男相手にハメ外すも何もねえよ。じゃな」


 電話を切った。


「ウチ、くるか?」

「行くっす! じゃあ、先にコンビニ前にいててくださいっす。荷物とってくるんで」

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