第二章 デートじゃねえから!

第15話 GWにデート取材

 待ち合わせ場所に、実代みよが立っていた。


 なお今日の待ち合わせ場所は、いつものコンビニ前ではない。国立公園だ。


「デートっぽい待ち合わせスポット」を実代が希望したので、待ち合わせ場所も時計のある噴水前にした。

「よお」

「どうも、紺太こんたセンパイ」


 今日の実代は、なんかやたらめったらめかし込んでいる。


 海老茶色のカーディガンに、ふわっとしたグレーのミニスカートだ。


「こんなカワイイ服を持っていたんだな」と思えるくらいだ。いつもは部屋着に近い服装だったから、気を使われていたのか?

「センパイも、似合ってるっす」

「おお、そうか。ありがとうな」


 オレの衣装は、姉貴に選んでもらった。


 姉貴いわく、女性と会うときの衣装はシンプルがベストだという。


 おしゃれで失敗する人のパターンは、やりすぎてしまうことらしい。自分ではイケていると思っていても、大外ししてしまうケースは多いのだ。

 なので、地味でいいから無地で行けとのこと。

 オレはそれを信じて、無地の服を選んだ。


 評価は、上々のようらしい。


「いいデート日和っすね?」

「よくわからんが、ちょうどいい天気じゃないか?」


 空を見ると、それなりに晴れている。


 人々は行楽に励んでいるのか、公園で遊んでいる人たちもまばらだ。観光なんて、もっと近場で済ませるのかと思ったが。


「せっかくのGWだから、遠出したいんすよ。みんな」

「そんなもんか。もっと人との時間を大切にしてもいいと思うけどな」

「まったくっす。では紺太センパイ、何をするっすか?」


 実代が聞いてくる。


 オレは、軽くフリーズした。


「え、お前、プランがあるんじゃねえの?」


 聞き返すと、今度は実代が固まる。


「ちょ、ちょっと待ってほしいっす。こういうのって、男性が考えてくるもんじゃないっすか?」


 ヤバイ。いきなり、デート内容に暗雲が立ち込めた。空はこんなに晴れているのに。


「いやいや、だって取材じゃん? 筆者のお前が、考えるもんだろうが」

「何を言ってるんすか、センパイ? 恋愛初心者のあたしに、そんなの求められても」


 お互いデートしたことなんてないから、何も考えてこなかった。


 これは、本格的にヤバイ。


「ごめんなさいっす。ちゃんと言っておけばよかったっす」


 実代がションボリした。


 元はと言えば、オレが実代のポテンシャルを当てにして、ノープランを打ち立てたことだ。

 いくら言い出しっぺでも、実代の考えを予想しておくべきだった。


 ここで実代を悲しませると、デートにトラウマができてしまう。


 よし。ここはセンパイとして、リードするか。やるしかない。


「ひとまず、歩くか!」

「そうっすね!」


 目的もなく、公園を一周することに。


 若いカップルが、ベンチに座って語らっている。


 犬を連れたカップルが、お互いの飼い犬を遊ばせていた。


 熟年のカップルが、トレーニングウェア姿でジョギングしている。


「なんか、カップルだらけっす!」

「多すぎぃ!」


 ここは、想像以上のカップル生息地なのかも知れない。


「そうっすけど、いい取材にこそなるのでは?」

「じゃあ、こういうのはどうだ? 恋愛シミュレーションゲーだと、どういう展開になるかで思考するぞ」


 幸い、オレたちにはゲーム知識がある。大事なことは、全部ゲームから学んだ……つもりだ。


「なるほど、そっちから考えるっすね? わかったっす」

「だな! よく観察しておけ!」

 

 自分たちが楽しむことそっちのけで、実代は取材に励む。


 そうだ。これはデートと言っても、取材である。


 周りから白い目で見られつつも、実代は観察を続けた。


 フリスビーしているカップル、ビニールシートを敷いて昼寝するカップル、サイクリングするカップル、カップル……。


「センパイ」

「どうした?」

「なんか、いたたまれないっす」


 実代の心が折れる。

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