第3話 エロフラグは回避するもの
「え?」
クッションから、
「だから、ゲームすっぞ。とことん付き合ってやるから」
「いいんすか、
「手なんか出すかよ! オレらまだ高校生だぞ」
ベタな理由だが、オレはマジでコイツに変なコトをしようとは考えられない。
「大丈夫っすか? おっぱい揉むっすか?」
「揉みませんっ!」
だいたい、自分を美少女とぬかすヤツにちょっかいなんかかけられるかっての。
「でも、普通じゃないっすか? ラノベだといいカンジになるっすよ?」
「オレのラノベじゃ、据え膳は食わねえんだよ」
それに、こんなムードも何もない子ども部屋おじさんな趣味全開部屋では、そんな気分にもなれなかった。
どっちかというと「少年心」を常にくすぐられ続けている。童心にかえるというか。
「お前、遊び友達いないんだろ? オレでよかったら、もっと遊ぼうぜ」
「……はい! 夕方まで遊ぶっす」
こうして、オレたちはご両親が帰ってきそうな時間帯まで、ずっとゲームをすることに。
「おっ、今度は女性キャラっすか? こういう子が好みなんすね?」
「違うよ。オレはもっと落ち着いた子がいい!」
「とかなんとか言っちゃてえ。こうもっと大胆なスリットの入った女子が」
「お前スカート!」
実代は、自分のスカートをたくし上げていた。
「ぴゅああああ!?」
ようやく異変に気づき、実代はスカートを直す。
「と見せかけてスキあり!」
なんと、実代はすぐにコントローラーを握って大技を繰り出してきた。
ハプニングと思わせて実代の作戦だったとは。
「色仕掛け作戦、成功っす」
「くっそ。テメエ卑怯な」
「後輩相手に容赦しないセンパイには、これくらいしないと」
全く。油断もスキもないやつだ。
「じゃあ、質問っす。好みの女のコってどんな感じっす?」
「特化型より、バランス型がいい」
「それ今読んでるラノベのヒロインじゃないっすか! やめやめこの質問はやめっす!」
頬を膨らませて、実代はオレと再戦した。
とはいえ、ずっとゲームをしていたわけじゃない。
休憩がてら、お菓子をパクつく。
「そういえば、お前ん部屋って本棚ねえのな」
小分けのスナックをバリボリ食いながら、オレは実代の壁全体を指差す。
棚自体はあった。ゲーム機やフィギュアが大量に置いてある。
「本は全部、電子にしたっす。収集癖持ちのあたしじゃ、一番場所を取るので」
書籍ならデジタル化でいくらでもスペースを開けられるという考えらしい。
「なので、書籍類は全部こっちで買ってるっす」
といって、実代はノートPCをパンパン叩く。
時代だなぁ。オレも電子は扱うが、小説はなるべく紙で取っておきたい。
実代とオレとは、考えが大違いである。
「親御さんはOKしたのか? クレジットカードだろ?」
「バッチリっす。通販サイトのギフト券をコンビニで買って、払ってるっす。センパイとのお買い物したときも、払ってたっしょ?」
たしかに見た。ギフト券なんてやけに高い買い物をしているなと思ったら、そういう事情があったのか。
あっ、もう夕方だ。帰らないと。
「ホントに、何もしないっすか?」
「しません」
しつこいぜいい加減に。
「それより、読んでくれ。今日は読み合いだろ?」
印刷した原稿を、オレは実代に突き出す。
「あー。あたしの小説は、持ち帰ってほしいっす」
「なんでだよ」
目の前で読み合って、感想を言い合えばいいのに。
「恥ずいんすよっ。察してくださいよ」
「どこが恥ずかしいんだ?」
「読んでるところを見られるのも、あたしの原稿が読まれるのも、っす!」
あまりに頑ななので、仕方なくテイクアウトということに。
オレの小説原稿を受け取った実代は、オレにSDカードでよこした。
原稿のデータを、オレは手持ちのタブレットPCに移す。
外出時の執筆と、電子書籍を読むために買ったものだ。
家ではもっぱら、デスクトップである。
その方が結局安いからだ。
「明日の昼までには、感想をまとめる」
「帰ってすぐ読むんすか?」
「そりゃあそうだ。オレも新人賞が近いからな。時間がないのだ」
「じゃあ、呼び出したのは悪かったのでは?」
やや申し訳なさそうに、実代はションボリした。
「いいよ。オレも最近ピリピリしていて、感じ悪かったろ? いい気分転換になったよ。ありがとな」
あのまま家に引きこもっていたら、いいものが書けなかった気がする。
同じ思考を堂々巡りしていただろう。
やはり他人の目が、新しい血の巡りが必要なのだ。
「よかったっす。お役に立てて。では、お送りするっす」
「いいっていいって。じゃあな」
ご両親とハチ合わせる前に、オレはゴミ袋を手に実代宅を後にした。
それにしても、どんな話だろうな。
家に帰って、PCを立ち上げる。実代の小説を読むために。
「また、ゲーム世界を舞台にした友情モノだろうな」
オレは好きだが、文芸部じゃウケねえだろうなぁ。
しかし、書いてきたのは以外にも恋愛を絡めたスポ根モノだった。
これは面白いな。
そう思いつつ、オレは感想をまとめた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます