第28話 逃がさない


パチリ、、パチリ、、パチリ、、、

ただ、ひたすらに駒音が響く。

もう、何時間以上対局が行われ、こうして座っているのだろう。

未だに俺の玉は危ない状況だ。

金、銀、飛車、、、ありとあらゆる駒が俺の玉に襲い掛かる。

相手の玉に必死に食らいつくが、幾度となく受け流される。

歩よ、成れ!

角よ、下がれ!

龍よ、相手に金を取れ!

俺は駒たちに命令したつもりで、自ら駒をできるだけ傷つけぬように動かしていく。

形勢は俺が大劣勢だが、いつひっくり返ってもおかしくはない。

手数はすでに150はとっくに超えていることだろう。

もう、朝からこの調子だ。昼食も、夕食も、一切味がしなかった。

この対局に勝てなければ、俺は一つ順位が下がってしまう。

それだけは嫌だ。死んでも降級だけはしたくはない。

絶対に、、、負けてたまるか。

負けてたまるか、負けてたまるか、負けてたまるか、負けてたまるか、負けてたまるか、負けてたまるか、負けてたまるか、負けてたまるか、負けてたまるか、負けてたまるか、、、、

祈ったところで何にも変わらないのくらい分かっていた。

だが、願わずにはいられなかった。

その時、相手が何気なくある一手を指した。

その手は一見、何の変哲もない手に見えた。

だが、棋士である俺には分かる。

その手は大悪手だと。

相手もそれに今更気づいたが、もう後の祭りだ。

これを逃さない俺ではない。

さあ、、、反撃開始だ。



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