第27話 機会


昔は無我夢中だったとしか言うことがない。

まだ、駆け出しで、売れるかどうかも分からない自分の物語(マンガ)を、ただひたすら書きまくっていた。俺が某有名雑誌で生き残れるなんて夢にも思ってすらいなかった。

昔はとにかく金がなくて、金が欲しくて、売れれば大金持ちになれる漫画家に憧れた。

そんな、子供のころから憧れていた漫画家になれて、本当に嬉しかったことだけは分かった。

物語の展開はアンケートに振り回されたり、編集者に色々言われたりして、何とか調整していった。

俺にはゴールデンウィークも、ありとあらゆる祝日なんてものもなく、ひたすら漫画にすべてをつぎ込んだ。

そのかいもあってか、ついに俺の作品は超人気作品、、、看板の作品に成った。

アニメ化もされ、累計発行は5000万部を超えた。

あんだけ罵詈雑言ばかりはいていた編集者も、あまりきつくは言わなくなった。

立派な家も手に入れ、嫁もでき、まさに順風満帆だった。

そんなある日に突然思った。否、思ってしまった。

アレ?俺、もう漫画描かなくてもよくね?

そう思ってしまった。


それからというもの、俺のペンは全く動かなくなった。年に一週間しかなかった休載が二週、、三週、、、四週、、、、と増えていき、ついには、一年以上も休載するようになってしまった。

ついには、いつ連載を再開するかと言う機会すら分からなくなってしまったのだ。

そして、最後に漫画を掲載してからもう三年は経とうとしている。

段々と人々は俺の事を忘れていっている。

かと言って、俺は今、ペンをとるべきなのだろうか?

もう、漫画の描き方すらも覚えていない、、、、、


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