第26話 失恋と花
「アンタなんか大嫌いよ。」
彼女にそう言われたのは初めての事だった。
胸にポッカリ穴が一瞬、開いた気がした。
「え、ええと、どうしてだい?」
勇気を振り絞って恐る恐るそう尋ねた。本当に理由がわからなかったからだ。
浮気もしていないし、悪口だって言っていない。それに、何かとんでもないことをしでかした覚えもない。
「アンタのその態度が気に食わないのよ!何?被害者ぶってるような口調で、ペコペコ頭下げたりして、自分は弱弱しいですよアピール?はっ!バッカみたい!あたしはそんな間抜けな人嫌いなの!そんな人とこれ以上付き合ってらんない!別れましょう!」
一方的にそう彼女は伝えると、すぐさまバックと帽子とお気に入りのコートを着て、ズカズカと玄関を開けて外へ出ていった。「おい、待てよ!」そう言って引き留めようとしたが、彼女は止まらなかった。
しばらくの時間の流れた。
彼女は当然、帰ってきていない。
どうしてこんなことに、、、
そう思い、自分もコートと帽子を着て、家の鍵を閉めてから、外で歩き始めた。
しばらく夜の街をふらついた。すると突然、悴んだ彼女の手を、握りしめていた時をふと思い出し、とある公園にへと向かった。
初めて彼女とデートした場所だった。
しばらくその公園にあるベンチに腰を掛けていると、目に公園の花壇に植えられている美しい花々が映った。彼女とはこの公園でその花々を見つつも、いつまでも一緒に居ようといった記憶がある。
邪魔だ。もう、あんな記憶は思い出したくもない。
そう思い、男は植えられていた花々を泣きながら千切っていった。
千切っては捨て、千切っては捨てを繰り返し、ただ時間が過ぎてこの気持ちが消えるのだけを願った。
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