第23話 別れ

「・・猫丸、、、」

朝、起きてすぐに二階から一階にへと下り、ペットの猫丸のお気に入りのキャットタワーの方に向かうと、愛猫は昨日の夜に置いていた鰹節とカリカリのセット御飯を、大量に残したまま眠っていた。

どちらも愛猫の大好物であった。

愛猫である猫丸は、荒い息を吐いていた。とても弱弱しかった。

スッと、この家の主人である護(まもる)は、愛猫の額を撫でた。

「もう、お前を拾って十六年だよなぁ、、、猫の寿命っていくつだっけ、、、たしか、十五だったか、、、

歳をとったものだな。」

猫丸との出会いは16年前に、雨が轟轟と降る中で、足に怪我して路地裏にうずくまっていたところを、当時、駆け出しのサラリーマンだった護が保護したことから始まっていた。まだ、生まれて間もない子猫だった。他に近くにいた兄弟と思われる子猫たちは、残念ながら助からなかった。

あの頃は、ただただ甘えん坊だった愛猫丸も、人間に例えれば今となっては良い歳のおばあさんだ。

「・・はぁ、、、前々からずっと、いつか来るとは思ってはいたが、、」

何故か少し目に清廉な涙が溜まった。

その時、猫丸は「ニャーオ」と掠れた声を護の方に向けて、鳴いた。少し、恥ずかしそうな笑顔を浮かべている気がした。

また、額を撫でてあげた。無意識のうちにそうしていた。

「・・・なあ、猫丸。俺、あの時お前を拾った時にずいぶん昔にお前に会っていたような気がすんだ。」

護は目に溜まった清廉な涙を流し、また、猫丸を撫でた。

「だからさぁ、、、保証なんてないけど、お前とはまた会って暮らせる気がするんだ。」

そう言って、護は囁くように猫丸に向けて言った。

「・・また、どこかで巡り会って君を撫でてあげるよ。だからさ、待っていてくれ___」



「ん、、、夢?」

丸竹花はベットの上でそう呟いた。

部屋にある窓からは横浜の街が良く見える。

そして、ガチャリと部屋のドアが開く音がした。

「おはよう竹花。よく眠れたか?」

「あ、おはよう!マモル!」

手に付けた指輪を光らせながら、護と言われた青年は竹花の頭を撫でた。

彼女は気恥ずかしそうな顔をしながら笑った。


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