第9話 お蕎麦
私はある日、父と天ぷらを食べにとあるデパートにへと足を進めた。
今までにも二、三は来たこのあるお店だった。
父とともに仲良く入店すると、すぐに天ぷらを揚げる音が耳に聞こえてきた。
「いらっしゃいませ。」
店員さんの声が続けて耳に入ると同時に、私たちはカウンターに腰を掛けた。
すぐに大きなエビ天が複数付いてくる定食を二つ私たちは頼み、スマホゲームで時間をつぶした。
御飯とみそ汁、そして、お茶がおかわり自由だった。
その日は久々にゆっくりとできる時間帯で、平日の終わりごろでもあったからか、疲労がたまっていた。
だから、何かしらのおいしい物でも食べようという話になってここにへと来たのだ。
しばらくするとすごく優しそうな顔をした紫色の着物姿のおばあさんが私たちの前にへと出て来た。よく見ると店員さんの一人だった。
彼女は私たちのテーブルの上に温かいご飯とお味噌汁、天ぷらからなる定食を置いてくれた。
すぐにでも口にしたいほどおいしそうな香りが漂っていた。
すると、突然「申し訳ございません。」と声が響いた。
見て見ると先ほどの店員のおばあさんが何故か頭を下げていた。
「実はご飯はおかわり自由とそのメニュー表には書いてありますが、、、実は今日の分のご飯はすでに無くなってしまいました。大変申し訳ございません。」
ですが、と彼女は続けた。
「代わりと申しましてはお蕎麦を代用としても大丈夫でしょうか?もちろん、そばつゆやねぎもセットです。」
その提案に私たちは大丈夫ですよと答えて、熱々の天ぷらを頬張った。
天ぷらはよく揚がっており、噛むごとに幸福感が積もっていった。
後々、やってきたお蕎麦は冷たく冷えており、一口一口食べるごとに私たちをさらに幸せにしていった。
その日の事を私は忘れないだろう。
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