第8話 出してごらんよ
幼少期から僕は臆病者だ。
ただ何一つとして、自分から声を出して行った物事などない。
ほとんど大人たちに振ってばかりだ。
旅行も、学校も、時間も、すべて大人の言いなりだ。
自分は何もかもどうでもいいというか、めんどくさいというか、なぜか考えることは嫌いだった。
人間だれしもそうではないが、私はそうなのだ。
どうせ、中学入ろうが入らまいが、どちらにせよ変わらないんだなと心から信じて疑わなかった。自分の事は、自分が一番よく分かっている。
だが、ここ最近は妙なやつが話題を振って私から離れようとしない。そいつは、簡潔に言えば黄色の髪の毛の不良だ。
名は健と言うらしい。
この男はしつこく私に絡んでくるのだ。
「ねえ、君でしょ?何も考えない人。」
そんなあだ名がいつの間についたのかと心から思った。
あいつの口が言うには、小学校の同級生がそんなことを言ったそうだ。
全く、好きにしてろと思う。
「君さあ、なんで何も考えないの?勉強とか大丈夫なの?」
そんなよく言われる質問するな。
どうでもいいからに決まってる。
「さあな、たぶん俺がどうでいいからなんだろ。」
奴は「ふぅん」とした顔で、
「どうでもいいとか思ったら、ダメだよ?」
と言った。
「自分の事をもっと考えてみようよ!な?自分でやろうと思わなきゃ始まんないだろ?」
奴は、陽気な声で私にしつこく、「な?な?」と話しかけてくる。
とりあえず私は反射的に、
「一理あるかもな。」とだけ言った。
初めて私の本当の声を叫んだ気がした。
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