釣果
ドンッ ドンッ ガスッ ドンドンッ
「じっちゃんや、どれくらいのが釣れたんだ」
「ええのが釣れた」
「おう、これは! でっかいな。小学校高学年くらいはある。手足がいちにいさん…………十三本もある。しかもぶっとい。ハサミもウロコも血走ってツヤが出とる」
「こんくらいの納言さまはひさびさじゃ。海がよう荒れてくれた」
「みんなが海から上がってくるのが待ち遠しいなあ」
「お前の怪我はもうええんか」
「動くだけなら充分だ。ただあのクソバカやたらめったら刺してきたんで体中かゆくてたまらん」
「十人は殺しとる。あれは」
「そう思う。俺を殺すのにも迷いちゅうもんがなかった。大方ここみたいな人のおらんところでの強盗に味をしめたんだろう」
「あいつの車見たか」
「見た。すぐそこにとまっとるグレーのワゴンだな」
「始末しといてくれるか」
「ひとしきり確認してそれから処分しとく」
「すまん」
「なに一応は警官だ。にしてもこの納言さまはでっかいなあ。目ん玉も膨れたのばっかりだ。まあしかし腹ん中に食ったもんがようつまっとるな。こりゃなんだい」
「手首じゃ」
「おう手首丸ごとだ。指輪もついたまんまだ。この緑の宝石ほんものか? やけにでかい」
「いるならやる」
「いらんいらんよ。俺を殺した男の持ち物なんて」
「したが餌としてはええ男じゃったで。おかげでええ正月が迎えられる」
ドンッ ドンッ ガスッ ドンドンッ
ザクザクザクザクザク ジュルジュル バキバキッ
時化まち十二月 古地行生 @Yukio_Fulci
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