【3】一九九六年 一月 二十五年前
「自分、よく飲むねえ」
野瀬姉妹の父親は、満腹の人間に鍋セットを売りつけることができそうだ。萩山はそう思いながら、五杯目の酌に付き合った。あれだけ静かだった集落が、夕方になると一気に賑やかになった。公民館に集まった十五人に用意された夕食は豪勢で、萩山が普段、店の薄暗い事務所や、家族が寝静まった台所で食べる食事とは違い、温かさがあった。日が暮れる直前に風呂に案内され、旅館のような湯船で寛いだ後、宴会のような場に合流して食事を取る。今までの人生で、そのような経験は記憶にない。萩山家は、家族旅行とは無縁の家だった。
「ほんとに、助けていただいて、どう感謝したらいいか」
萩山はそう言いながら、頭を下げた。康夫も空気を読むように、小さくうなずくように首を動かした。その目は少しだけ怯えているようで、理由は明らかだった。野瀬姉妹の妹、万世だ。萩山は、その姿を探した。万世は、康夫のことをペットの犬と同列に考えている節があり、公民館の入口で再会したときは『あー、いた!』と叫んで、彩乃に口元を押さえられていた。今は、二人とも別の一家の子ども達と話しているから、大人だけで囲む酒の席はまだ静かで、落ち着いているほうだった。しかし、いつ両親のもとに飛んで帰ってくるか、分かったものではない。野瀬姉妹の父は淳史、母は牧子と言い、共に三十五歳で萩山よりも少し年上だったが、その表情は柔らかく、『朝ごはんはうちで揃うよ。いや、勝手に食べさせたら、ちーちゃんに怒られるな』と言って、お決まりの冗談のように、夫婦で顔を見合わせながら笑った。七福神のように朗らかな表情が真顔の淳史は、康夫がすでに三度おかわりした煮物の鉢に目を向けて、言った。
「弟さんも、遠慮せずにもっと食べなよ。にしても、でっかいなあ自分」
康夫は、あまり飲めない酒を、飲んだふりでもするようにちびちびと進めていたが、相槌を打つその表情は穏やかな方だった。大勢の人間がいる場では緊張して、最終的には萩山が逃がすように外へ連れ出すのが常だったが、今日は隣で、落ち着いた様子で聞き役に徹している。萩山は、視線を左右に泳がせた。長池親子の姿はない。千尋は、炭谷家だけで固まるように、父と母を合わせた三人で楽しそうに話し込んでいる。少しだけ黄みがかった冷酒を口に含むと、萩山は足の指を動かしながら顔をしかめた。
「ぼちぼち、足に来てます」
「なあに、痺れてんのよ。自分、椅子生活やろ? 洋風な顔しとるもん。こういう座敷で足が痺れるのは、普通やって」
この男の遺伝子を継いでいるなら、万世が機銃掃射のように話すのも納得だ。隣でにこにこしているだけであまり話さない妻の遺伝子は、彩乃が継いだのだろうか。萩山はそう考えたとき、何年も見知っているように、この集落に住む人間の特徴が自分の頭に刻まれていることに気づいた。自分の頭の中に、家族以外の人間が小さな明かりを灯して、酒盛りをしている。そこはしばらくの間にしろ、彼らの居場所になる。ずっと金を数えている父親と、その金を数えなおしている母親。中学校のときの担任教師は、店の常連客のひとりで、萩山が学校で繰り広げる暴力行為に見て見ぬふりをしていた。その暗くて薄っぺらい記憶の集合体が、萩山家だ。炭谷家も、野瀬家も、ここに集う家庭は、何もかもが違うように感じる。
「ここ来るとき、川を越えたでしょ」
牧子が言った。口を開けばその表情は彩乃と瓜二つで、若々しい。淳史が代わりに答えるようにうなずき、話を継いだ。
「あの川にかかる橋は、昔はなくてね。木の橋を何度かけても流されちゃうから、ずっと下流まで行かないと、町側には出れんかった」
そろそろ、歴史の時間だ。こちらの自己紹介は終わった。仕事のことや、旅の目的を深く尋ねられなかったのは、好都合だった。萩山兄弟ということは知られてしまったが、それはもう取り消せない。明日の午前中ぐらいまでには、集落の全員が知ることになるだろう。萩山は、本当に痺れだしてきた足の位置を少し調節した。宿に腰を下ろしたときは、この語りの場を想像して気が重くなっていたが、いざ身を置いてみると、満腹感と酔いの組み合わせもあってか、それほど悪くないどころか、むしろ興味深くも感じる。
「上りは大変でしょう」
萩山が言うと、淳史はうなずいた。
「そう、ほんとにね。橋ができたら、今度はその道を誰も掃除しないから、獣道になっちゃってね。とにかく、ここは冬になると、外から切り離される村なんよ。やから、夏から秋にかけて、いやっちゅうぐらい食料を溜め込んで、冬の間はパーッと切り替えて、毎日火を起こして騒ぐ。合理的でしょ?」
淳史はそう言って、息継ぎ代わりに笑った。元から笑顔のような表情をしているが、笑うときには、はっきり笑顔に変わったことが分かる。いい店長になりそうだ。萩山はそう思いながら、相槌代わりの笑顔で応じた。淳史は裏山の方角を指差すと、言った。
「祭事もあるんよ。真冬にやるのは珍しいでしょう。昔からこの地域を守ってきた神様に、今日まで無事に生きてこられた感謝をする。まあ、よくあるやつ」
冬に閉ざされたとき、十分な食料がなかったら。萩山は、目の前に並んだ料理を見回しながら、ふと思った。その反動か、皆の前に並ぶ皿は、わざと『食い散らかされた』ようにも見える。それは豊かさの象徴なのだろうか。
「もし、収穫が進まなかったら、冬を越せないこともあるってことですか?」
萩山が言うと、淳史はうなずいた。
「昔は、あったみたいやね。今は便利な時代やから、どうにかなるんやけど。はちがしら様も、肩の荷が下りたと思うよ」
聞き慣れない単語が出てきて、萩山は愛想笑いのまま、淳史と牧子の顔を交互に見た。牧子が口元に手をやりながら上品に笑い、言った。
「八に頭と書いて、はちがしら様です。ここの神様で、社にいます」
収穫と繁栄の守り神。萩山はうなずいて、それとなく宙を見回した。淳史が笑顔で社の方向を指差した。
「あっちね」
牧子が上品に笑ったとき、両端に彩乃と万世が飛びつくように帰ってきた。万世は全員の顔を見回しながら言った。
「楽しそうー! あー、寝てるー!」
萩山は反射的に隣を向き、船をこぎ出した康夫の頭を叩いた。乾いた大きな音が鳴り、肩をびくりとすくめるのと同時に康夫が目を見開いて、言った。
「ごめん! ごめん、ごめん」
集会場全体の空気が泥にはまったように動きを止めた後、再びのろのろと動き出した。萩山は心の中で舌打ちしながら、繕うように淳史と牧子に笑顔を向けた。萩山家にようこそ。都会でドブネズミを相手に、次の日を生きていけるだけの性欲処理を、良心価格で施している。そんな生活の中では大抵、声に出すより手の方が早い。目の前の景色が色を失くしていく前に、何かを言わないといけない。そう思っていると、万世が口をわざとらしく結んでから、ぱっと口を開いて言った。
「叩いちゃダメ」
「そうだね、ごめん」
萩山が首をすくめると、淳史が目を丸くして、彩乃に言った。
「万世が誰かに言って聞かせるなんて、今まであったか?」
彩乃が口角を上げて、大人のように思慮深い笑顔を見せて言った。
「ない」
牧子が万世のおかっぱ頭を撫でて、微笑んだ。のろのろと動いていた空気が元の速度に戻り、どこかで子供の笑い声が上がった。淳史がお猪口を空にすると、牧子と彩乃と万世の三人全員が非難の目を向け、淳史は萩山に言った。
「萩山さん、お子さんはいる?」
「はい。一男一女です」
酒の力もあるのだろうし、不自然さを避けるには年齢まで言うのが、普通だろう。ただ『います』とだけ答える雰囲気ではない。萩山は財布を探る振りをして、肩をすくめた。
「写真は、ないんですけど」
牧子がその言葉に相槌を打とうとしたとき、淳史が入口の方へ顔を向け、その場にいる全員の会話が止まった。まるで、個々の会話の集合体ではなく、ひとつの塊のように。萩山は、他の十数人と同じように、入口の方を向いた。長池が靴を脱ぎ、帽子を取って入ってくるところだった。息子の敏道はおらず、父親ひとりでやや心細そうに見える。長池の目的は萩山で、すり足で静かに歩み寄ると、隣に屈みこんで言った。
「萩山さん、道が通行止になっちまった。部品を取りに行けない」
萩山は思わず、体ごと振り返った。長池はそれが自分の責任であるかのようにかぶりを振った。萩山は、酔いが醒めていくどころか、逆に腰から下が座布団に沈み込んでいくように錯覚し、姿勢を正した。
「雪ですか?」
「雪やね。あれからずっと降ってるから」
会話を聞いていた淳史が首を伸ばすと、炭谷家の面々に向かって手を振った。
「炭谷さん、道が閉まっちゃったって」
炭谷家の集まりは、千尋と父と母の三人だったが、今はもうひとりが増えていて、ややかしこまった雰囲気で、何よりもひとりだけ正座していた。千尋が立ち上がり、長池と萩山のすぐ隣まで来ると、腰を下ろした。さっきはいなかったひとりもついてきて、千尋の隣に静かに座ると、長池に目を向けた。
「神谷さん、悪いね」
神谷と呼ばれた細身の女は、シャツの左胸に名札をつけていて、そこにはフルネームで『神谷清美』と書かれていた。神谷は、萩山と康夫を交互に見て、利発そうな印象を付け足している眼鏡を、少しずり上げた。
「隣の部屋ですよね、神谷です」
萩山は握手をして、名札に小さく書かれた会社名を読んだ。
「記者なんですか?」
「はい。お祭りまでは、ここにいます」
神谷は歯を見せて笑った。長池が咳払いをして、ささやかな『緊急会議』を進めた。
「萩山さん、燃ポン……、いや、燃料ポンプは部品がないと、どうしようもないんよ。どこまで行く予定やったんかな?」
「海側に抜ける予定でしたけど……」
その先は、どうしても言えない。それに、神谷は記者だ。隣の部屋に泊まっているとなると、閉じ込められたのも同然で、何も行動できない。何しろ、取材が終われば神谷はこの地から離れるのだ。萩山兄弟の顔をしっかりと頭に留めて。集落の人間の行動範囲は知れていても、記者は違う。そこまで考えた萩山が小さくため息をついたとき、隣に座る神谷が言った。
「海ってことは、旅行ですか?」
萩山はぎこちない笑顔でうなずきながら、思った。違うよ、このガリ勉眼鏡。隣で寝そうになってるでかいだけのぼんくらを殺すんだよ。愛すべき弟だが、家族の恥なんだ。商品を自ら殺すような店で、誰が働こうなんて思う? 頭の中が、自分の本来の住処と今置かれた状況の間を、発作のように行き来している。
「明日、現場を見てくるよ。取りに行けなかったら、そのとき考えよう」
長池はそう言って締めくくると、立ち上がった。靴を履いて帽子をかぶり、逆再生のように入口のドアを閉めたとき、待ち構えていたように、さっきまで明らかに止まっていた空気が動き出した。萩山は、長池が現れたときの空気の変化を思い出していた。申し合わせたように全員が、一斉に話すのをやめた。よそ者が不肖の弟の頭を叩いたときですら、そうはならなかった。萩山は、誰にともなく言った。
「長池さんには、助けられました。通りすがりなのに、わざわざ停めて、様子を見てくれたんですから」
どの道、通行止になる前に山を抜けることは叶わなかっただろう。だとしたら、この待遇は考えうる限り、最高のものだ。
最後の一杯が終わり、後片付けが始まったが、手伝おうとする萩山を千尋が止めて、言った。
「お客さまなんですから、お気になさらず。戻りましょう」
野瀬一家も特別扱いされているように、上着を着こむと家族全員で出て行った。
「野瀬は、この食事を用意する係。だから、片付けはしないんです。合理的でしょう」
千尋はそう言って笑った。『合理的』という単語は少し前にも聞いた気がしたが、もう思い出せないままに、萩山は愛想笑いを返した。同じ集落に住む人間だから、言葉遣いも似てくるのかもしれない。上着を羽織り、白く染まった集落の中、康夫と神谷の三人で千尋の後ろをついて歩いていると、どこかで現実から道を外れて、妙な夢に入り込んでしまったように感じる。照明柱が数本、申し訳程度に照らすだけで、それ以外の景色は漆黒だった。自分たちが歩く場所だけにスポットライトが当たっているような感覚で、それが余計に現実感を削いでいた。
「た、たのしかった」
康夫が出し抜けに言い、千尋が一瞬振り返ると、嬉しそうに笑顔を見せた。萩山は思わず、康夫の横顔を見た。そんな言葉を聞くのは、何年振りだろうか。十年以上経っている可能性もある。康夫は、人生のほとんどを、霧のかかった頭で理解してきた。何かを楽しいと感じても、それを直接表現することは少なかったように思える。
「よかったな」
萩山が言ったとき、近くで鳴き声がした。康夫が首を回しながら言った。
「ねこ?」
萩山は前を向いたままうなずいた。可愛いと思ったら、次に康夫が考えることは、捕まえることだ。そして、暴れるのを押さえつけている内に、首の骨を折って殺してしまうだろう。萩山自身は、猫の抜け目ない雰囲気が苦手で、実際に対面したいとは思わなかった。それを察したように、神谷が言った。
「猫は苦手ですか?」
「どうもね、人間より賢そうで」
萩山が言うと、神谷は、眼鏡の奥で大きく開かれた目を向けて笑い、民宿の隣の空き地に停められた車を指差した。最新型のハイラックスサーフで、黒の車体はほぼ雪で覆われていた。フロントバンパーには、大きなフォグランプが取り付けられている。
「道さえ開いてれば、町まで送れるんですけどね」
「これで来たんですか?」
萩山が言うと、神谷はうなずいた。萩山は、ハイラックスの前に立つ神谷の後姿を見つめた。見た目の印象は、二十代半ば。四駆を乗りこなすようには見えない。千尋が引き戸を開けながら、言った。
「風邪、ひいちゃいますよ」
玄関で靴を脱ぎ、康夫が丁寧に揃える様子を見て、神谷が自分の靴を綺麗に並べ直した。萩山は、千尋から新品の歯ブラシを手渡され、神谷が洗面所を使う間、順番待ちをしながら思った。こんな風に誰かが歯磨きを終えるのを待つのは、子供のとき以来だ。今でも、妻の明日奈と生活リズムが合うことはあまりない。修也と玲香は大抵の場合先に眠っているし、会うとすれば朝だが、それは萩山の生活サイクルだと、寝る直前の時間だ。疲れていてあまり相手をできないし、特に玲香はそれを理解していて、気を遣って距離を置いているようにすら見える。結婚して四人家族になったが、基本的にひとりだった。神谷が出てきて、康夫を入れ違いに洗面所に送り出したとき、隣に立った神谷が言った。
「お祭りは、明後日にあります。この集落は歴史が長いんですよ」
萩山は、野瀬から聞いたばかりの知識を頭に呼び起こして、言った。
「ご先祖様に、平和に過ごせた感謝をする。ですよね?」
神谷はうなずいた。居間に置きっぱなしになった食器を片付けている千尋の後ろ姿を見ながら、呟くように言った。
「実際には、村人が神様を守るお祭りなんです。普段守ってもらっているから、そのお返しをする」
「守るって、一体何から?」
萩山が聞き返すと、神谷は居心地悪そうに、自分の名前が書かれた名札に触れた。
「悪いものからですよ。この集落では、神様というのは完璧な存在じゃないんです」
萩山は、神谷の言葉を聞きながら思った。千尋が食器を片付ける手が、少しだけ静かになったように感じる。神谷が今話した内容と比べると、野瀬の説明は言葉足らずで、不正確だ。記者なのだから、そう話すだけの裏付けは取っているだろう。萩山は、食器を重ねて台所へ歩いていく千尋を目で追った。
「ご両親は、なかなか帰ってきませんね」
神谷はうなずき、萩山の方をちらりと見てから言った。
「お祭りが近いので、大人は皆、社の方へ寄っていますよ」
片づけを終えて戻ってきた千尋を見た萩山は、彼女もまだ成人していないということを思い出した。
「ここの歴史は、私より、神谷さんの方が詳しいですよ」
千尋はそう言って笑い、萩山が歯を磨いている間も、まだ何かを話していた。康夫の笑い声も混じっている。萩山が洗面所から出ると、全員の寝支度が終わったことを確認するように、千尋が視線を走らせた。
「朝食は、八時に準備します。起きられますか?」
そのいたずらっぽい笑顔は康夫に向けられていて、康夫は所在なさげにうなずいた。萩山は、康夫の表情をじっと観察した。夜型で、寝入るまでに時間がかかる。問題は、千尋がそれをすでに知っているということだ。たった一日なのに、千尋は萩山兄弟について、ずいぶんと詳しくなっているように感じる。その一夜漬けの知識の中には、康夫が罪悪感なく話せる『犯罪』も混じっている可能性がある。胃の中はそういった懸念に邪魔されて、動きを緩めたり、すぐに勢いを取り戻したりして落ち着かなかったが、出てきた言葉は全く違った。
「ほんとに、ごちそうさまでした」
萩山の言葉に、千尋は微笑みながら言った。
「気に入っていただけて、よかったです。おやすみなさい」
萩山は、部屋までの階段を上り終えて、部屋に押し込むように、康夫を先に入れた。奥の部屋の扉を開いた神谷がぺこりと頭を下げた。
「では、おやすみなさい」
「おやすみなさい」
萩山は頭を下げながら言い、部屋に入った。康夫が後ろからついてきて、扉を閉めた。電気ストーブの前に座ると、電熱線が赤く熱されるのに合わせて、頭の中は澄んでいった。もちろん、酒の力が相当、思考力を削いでいる。後ろで、康夫がドタバタと靴下を脱ぐ音も、現実に引き戻すのに一役買っている。名前と顔は、当然知られた。カローラバンには個人を示す情報は何も乗せていないが、車検証は入っている。一番の問題は、動かないことだ。対して、軒先に停められた神谷のハイラックスは、四駆だ。鍵は隣の部屋にあるのだろう。突然現れたデコボコ兄弟。あっさりと姿を消したとして、どれだけ覚えているだろう? さっきの集会場での宴会では、写真を撮っている住人がいた。顔を逸らせていたから、写り込んでいても分からないだろうが、それでも記録の一部になったのは事実だ。
「寝ろよ」
萩山は、電熱線を眺めながら康夫に言った。布団を巻き上げる音が聞こえてきて、隙間風の音をかき消した。それだけでも、ひとつ手間が減ったように感じる。この静けさは、さっきも似たようなものを一度感じた。長池が集会場に現れたときのことだ。萩山は、不自然なぐらいに整った沈黙を思い出していた。
長池の家は、川の手前にあった。あの家も『よそ者』なのかもしれない。
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