田舎暮らしに憧れるが、実はハードルがめっちゃ高いのよね
@yatuura
それは現代の魔境であるが旨味は少ない
都会に出て来て、早数年。
しかしどうにも都会の水が性に合わない。
深夜に鳴り響くスキール音にサイレン、泥酔者の大声・奇声、そして何より夜でも明るいのだ。
遮光カーテンでもしなければ光を遮れないのは、どうにも煩わしいのである。
というのも、目覚ましよりも朝陽で目覚めたい質であるので、その朝陽さえ遮ってしまうのは、スッキリとした目覚めを奪われている様で堪らないのであった。
そういったことが積もりに積もって、田舎に住みたい欲求が募り始めた今日この頃なのである。
私は、田舎の出身である。
ところで、田舎と一括りにするには田舎LVに差が有りすぎる。
私は田舎の度合いを、田舎LVと個人的な指標で表現しているのだ。
田舎LV1、鉄道が30分に1本運行する地域。
田舎LV2、コンビニが徒歩30分圏内にある地域。
田舎LV3、鉄道・バスが1時間に1本運行する地域。
田舎LV4、スーパーマーケットが車20分圏内にある地域。
田舎LV5、鉄道・バスの路線が大幅に減便された地域。
田舎LV6、無人駅・駅前に商店街の無い地域。
田舎LV7、学校の廃統合で通学困難者の為に、スクールバスを導入している地域。
田舎LV8、鉄道・バスの路線が廃止された地域。
田舎LV9、準限界集落(人口の半数が55歳以上)。
田舎LVMAX、限界集落(人口の半数が65歳以上)。
異論はあるだろうが、このように分類しているのだ。
この指標でいう所の、田舎LV4に相当するのが、地元である。
まあ、近い将来、田舎LV5に成るかも知れないが……。
ここで、地元の話をしよう。
今更話す事でもないが、一人に一台車を持っているのが、田舎の大前提である。
なので、少し車を走らせれば、衣食住に困らない地元(田舎LV4)は、田舎でも暮らしやすいと言えるであろう。
では地元にUターンしたいかといえば、私はそうは思わなかった。
実家が商店や農家であれば、また違ったのであろうが、公務員をしていたのだ。
仕事はさておき、地元に帰ったとして、実家で暮らしたいかというと、全くそれを望んではいないのである。
都会の人間が『田舎に暮らしたい』と言うのが、どのLVなのかが疑問ではあるが、私としては田舎LV6・7が理想である。
というのも、若干のコミュ障もあり、過度のコミュニケーションを煩わしいと感じてしまうのだ。
地元の田舎LV4・5ぐらいでは、住宅地が密集していて物理的に家屋の間隔が近いのだ。
なので、隣近所がそこそこ離れていて、田舎の一軒家に住み、食べる分だけ働ければ、いう事は無いのである。
とはいえ、世の中なかなかそのような理想通りの場所など無いのだが……。
都会と違い、田舎は地域のコミュニティが重要なのだ。
都会では、隣近所の顔を知らない事も珍しくはない。
これは都会に出て来た時に、不動産屋と雑談した際、『引っ越しの挨拶』で隣近所への訪問は控えた方が良い、と忠告されたのである。
田舎の人間の感覚から言うと、それでは地域に溶け込めないのではと、訝しんだものだ。
そもそも、溶け込む必要性が無いのだ。
逆に顔見知りになる事で、隣人トラブルに発展する可能性を重視しているのであろう。
この話をするのは、私がコミュ障なので、ご近所付き合いに敏感なのもある。
だがそれを抜きにしても、時々TVで見かける『田舎への移住』を取り上げた紹介VTRがどうにも穿った捕らえ方をしているからだ。
田舎では、ご近所の方が自家栽培した米や野菜を持ってくることがある。
確かに有難い事であるが、貰いっぱなしには出来ないのだ。
貰ったらお返しをする。
これが田舎のルールである。
田舎は人口も少なく、昔から助け合いの精神でやって来たのが今に続いていると思えば、理解もしやすいだろう。
TVのVTRで訝しんだのは正にここで『田舎の人は親切でいろいろな物をくれる』と、ニュアンスが微妙に変わっていたのだ。
善意で持って来ているのだと思うが、それに対してお返しをしなければ、悪評に繋がるのだ。
『ギブアンドテイク』は田舎の方が傾向が強くなるのである。
田舎の噂話ほど厄介なものはない。
SNS並に伝わるのが早く、そして何十年経っても噂が残り続けるのだ。
記録に残る傷をデジタルタトゥーというのなら、記憶に残る傷なので、アナログタトゥーと呼ぶべきか?
いや、それじゃあ、ただのタトゥーになってしまうか。
まあ、要するに、一方的に損得が発生する関係にならないような立ち回りを強いられるのだ。
間違っても『親切な人だ。いつもありがとう』と構えてはならないのである。
前述した通り、田舎はコミュニティを大事にする。
コミュニティの内外で区分するところが有り、つまりは、基本的に排他的なのだ。
とはいえ、それも一昔前の話である。
高齢化が進むと、そうも言っていられない状況へと変化を余儀なくされているのだ。
つまるところ、マンパワーが足りていないのであった。
これは、田舎LV9・MAXの準限界集落や限界集落での話である。
60歳で定年退職をして地元に帰ってきた、もしくはスローライフを夢見て移住してきたとする。
言わずもがな、この地域は高齢化が進んでいるのだ。
60歳であれば、この地域では若者に区分されるのである。
そうなると労働力(地域行事の実行部隊)と見做されるわけで、忙しい生活を送る事になるだろう。
例えば、清掃活動。
ついでに見回りを兼ねたりすることも。
道路が破損したり落石があれば、行政に連絡は必須だ。
例えば、寺の清掃。
住職が高齢のお寺や、寺仕舞いはされていなくても、無人の寺等は管理が行き届かない。
それを地域住民(檀家に限らず)で支えるのもまた、田舎の習わしである。
(どんな温厚な人間も、寺仕舞いで墓が無くなる事への反発は必至)
高齢化の進んだ地域がいかに大変なのかが身にしみてわかる。
では、集落から離れたところに家を構えるのはありか?
これはお勧めしない。
なぜなら、何でも出来る器用な人間しか、やっていけないからだ。
そもそも、行政もすべてに手が回るわけでは無い。
予算も限られているので、必然的に優先順位の高い所から手を付けざるを得ない。
そうすると、何か問題が起こっても、後回しにされてしまう事に繋がるのだ。
しかし、そこに住んでいる以上、放置する事も出来ない。
……であればどうするか?
自分が動かざるを得ないのである。
お判りいただけるだろうか?
その時々で、必要なスキルが無くては、離れたところで暮らすことが困難となるのである。
まとめると、田舎LV9以降は、のんびり暮らそうと考えている者にとっては逆の結果に繋がる可能性があるのだ。
予備軍の田舎LV8も同様である。
(ちなみに、バスの路線を一度廃止すると、国土交通省の再認可が難しいので、路線を残すために週に1本運行する場合もある。完全撤退しないのなら、まだ復活の望みはあるかもしれないが、あくまで保険として残しているだけ。逆に過疎化の歯止めが外れた様な状況である)
話を戻そう。
対人関係の希薄さを上げるのなら、私は都会の方が性に合っている。
だが、物理的な距離・喧噪などを踏まえて考えると、田舎の方に軍配が上がるのだ。
更に、最近ではどこでもネットショッピングで物が買える時代となった。
田舎のデメリットも随分緩和してきているのだ。
さて、ここで一つ考えなくてはならない事柄がある。
都会と田舎の物価についてだ。
どうにも田舎は物価が安いと勘違いしている人が多いのだ。
田舎と都会では、田舎の方が物価は高いのである。
確かに、漁港やJAの供給過多・規格に外れた物は産地で値崩れを起こしやすい。
しかし田舎は競合相手が少なく、ほぼ定価で物の売り買いをされているのだ。
例えば『イオン』等はそういったことを見越して田舎に店を出すのである。
そうすると地元の店は定価で売れなくなるので、経営が行き詰まり、『イオン』の一人勝ちが成立するのである。
場合によっては、大手コンビニにすら価格競争に負ける店もあるぐらいだ。
だが、『イオン』は本当に安いのか?
都会であれば、薄利多売で売り抜けるディスカウントスーパーや冷凍・長期保存可能な加工品がメインの業務スーパー等は、『イオン』よりも総じて2-3割は割安な印象がある。
時に怪しい物もあるが、家計的には都会の方が財布に優しいのではないだろうか。
しかし、飲食店となるとまた判断が変わり、難しくなる。
都会は土地が高いので、その分値段に反映するのだ。
推測であるが、仮に全く同じクオリティーのラーメンだとして、田舎で700円であれば、都会では薄利多売をしたとしても1000円を超えないと割に合わないのではないか。
そういう意味では、都会は何かと金が掛かるのである。
とはいえ、都会の方が給与が高い傾向にあるのも事実。
その土地にあっていると考えるのなら、正味大差ないのかもしれない。
問題があるとすれば、デリバリーが無い事だろうか。
私は都会に居ても使う事がなかったので、何も問題には感じないのだが、中にはデリバリーが無い事に耐えられない人も、居るのではないかと思われる。
店も軒並み閉まるのが早いのも欠点だろう。
街灯が全くない地域もあるので、夜に出歩くのが難しい場所もある。
なので、都会の方が夜の時間を有意義に使い易いのは間違いないであろう。
前述で一人に一台車を持っているのが、田舎の大前提と記した。
しかし過疎化が進むにつれ、燃料の給油をするためのガソリンスタンドが減少している事実も見られるのだ。
とはいえ、無くなる事は無いだろう。
周りが撤退する事で、残った所が客を総取り出来るのなら、過疎化が進んでもなんとかやっていけるのだろう。
事実、そういう場所もちらほら現れているみたいなのだ。
さて、このガソリンスタンドは、実は災害時の避難場所に適している事をご存じであろうか?
こうした災害時の事を考えると、田舎と都会も一長一短が浮き彫りになる。
田舎であれば、ある程度は顔見知りになるものだ。
逃げ遅れたのなら、すぐに察しが付くもので、救助に動くであろう。
しかし都会であれば、そうはいかない。
都会で、列車に火をつけるという痛ましい事件が起きた時、前の人を押しのけて逃げようとする姿がカメラに抑えられていた。
これを悪と断じることは出来ない。
都会では何をするにも、自己責任の風潮が強いのだから。
しかし田舎も良い事ばかりではない。
和歌山で地震が起きた時、対策本部と位置付けていた場所が被災したのだ。
老朽化で耐震が遅れていて、近くに新館を建てる計画であったそうなのだが、言っても栓の無い事だ。
指揮命令系統が機能しないのは、人災である。
更には、市民の避難場所も老朽化が進んでいる恐れもあり、不安材料は多い。
その点都会は、資金が多い事から、すぐにでも設備を整えられるのだ。
どこかの議員が東日本大震災が東北でよかったと言った。
すぐさま撤回したのを覚えている。
失言であるし、品位も常識も欠けている。
しかし、言わんとするニュアンスが分かってしまうのが、何とも悲しい。
『これが東京じゃなくて良かった』という言葉が、裏に隠れているのが読み取れてしまうのだ。
被災した場所が田舎であれば、直ぐに援助支援が受けられるだろう。
とはいえ、実働が早いだけで、その後の支援が続くとは言えないようだが。
翻って、都会であれば、直ぐに援助支援が受けられるのだろうか?
そんな事は無い。
人が多いと、その分支援援助にかかる時間はかかるものだ。
だが、政治なのだろう。
人口の多さは民意となり、国を動かす。
それが手厚い支援援助に繋がるだろう。
……懸念があるとすれば、都会は俗に言う、『上級国民』が多い。
彼らを優先しないとも言えないのである。
そう考えれば、災害に関しては、田舎とか都会とかは考慮に入れなくてもよいのではないかと私は結論付けている。
だが、一抹の不安があるのがライフラインだ。
電気・ガスはどんなに田舎だろうと開通していれば、都市部と条件は同じだ。
そこは安心できるであろう。
まあ、プロパンガスだったらお高めであるが……。
それに、自由化されているので、プランも選び放題なのである。
しかし、水道については各市町村でずいぶんと差があるのだ。
これは都会だから、田舎だから高い安いと一概に判別できない。
田舎でも高い所があれば、都会でも高い所があるのだから。
現状安い所でも、人口の減少が進めば、水道料金が高くなることも考えられる。
水道事業の維持費が変わらないのだから、当然の結果ともいえる。
都市部は人口が増加傾向だから、水道料金が安くなるかと言われれば、そうとも言えない。
耐用年数を超えた水道管が増えていて、早急な交換が必要であるからだ。
けれど、都市部ほど水道管が張り巡らせているもので、膨大な費用と時間がかかるものなのだから。
そう考えると、都市部と田舎で理由は違えども、今後は水道料金は増えていくものだと覚悟が必要なのだ。
ならば、やはり適度な田舎に住みたいと思ってならないのである。
田舎暮らしに憧れるが、実はハードルがめっちゃ高いのよね @yatuura
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