第2話_お嬢様の逃亡とお供の門番

お兄様に会いに行くのが遅くなったら、

お父様とお母様は、お金のために私にまた別の縁談を持ってくるかもしれないわね。

こっそり抜け出さなきゃ。


皆が寝静まった頃、シルフィは下町散策用の街娘の衣装に着替えて、こっそり屋敷を抜け出すと、門番の青年に声をかけた。


「ねぇあなた、私と一緒にお出かけしない?」


「旦那様の許可がないと、外出いただけません。そもそも、こんな夜中に危ないではありませんか。」


「私には私の事情があるの。ここにいると危ないのよ。じゃあ通してもらうわね。」


強引にシルフィは門を通ると、一目散に駆け出した。


「ちょっと、待てください!本当に危ないんですってば!ちっ、これだから箱入り娘は!仕方ないが追いかけるか。待ってくださいよーー!お嬢様~!」


門番の青年、カイトは幼い頃に亡くした小さい妹を思い出し、お嬢様を放って置けなかった。



(カイト side)


とても綺麗なお嬢様。

使用人への気遣いもいつもしてくださり、皆に慕われるお嬢様。

遠くから見ているだけで十分だと思っていたのに、こんな近くでお話することになるとは。

昔はセシリオ様に「我が最愛の妹を見るな!」と言われていたっけ。


「あなた、カイトというのね。私の無茶に付き合ってくれてありがとう。正直言って、夜に抜け出したのは初めてだったから、少し困っていたの。」


おいおい勘弁してくれ。何かあったらセシリオ様に殺されてしまう。


「勘弁してくださいよ、お嬢様。夜は人攫いや荒くれ者が多いんですからね。お嬢様のようなお綺麗な方がうろうろしていたら、すぐに連れ去られますって。」


「大丈夫よ。私、こう見えても護身術は使えますもの。あなたこそ、荒事は大丈夫なのかしら?」


ご令嬢の護身術なんて、戦力になんてならねーよ。全く分かってねーな。。でもそこは指摘してはいけないな。お嬢様の努力の成果だもんな。でも危なさは伝えないとな。


「ハァァー。お嬢様、護身術なんてお飲み物やお食事に毒を盛られたらおしまいです。私は門番になるために、騎士養成学校を出ましたから、そこそこは強いですよ。」


「まぁカイト、頼りにしてるわ!」


思わず見惚れてしまった。なんて無邪気に笑うんだろう。

ここは気を引き締めないと。


「お嬢様、危ないので、少し散策したらお屋敷に戻りましょう。朝までにお部屋に戻れば問題にならないでしょう。」


「いやよ、あっ、まだ言ってなかったわね。わたくしは身の危険を感じたので、今からセシリオお兄様に会いに行くの。お兄様の留学先は、馬車で3日行った先にあるセーポルタよ。案内よろしくね!」


えええええ、下手するとオレ誘拐犯になってしまうでしょ、これは。でもお嬢様は放っておけないし。。。ええい、仕方ない。


「お嬢様、セシリオ様のところまでお供いたします。が、ここは市井。お嬢様と使用人では目につき、変な輩に目をつけられるでしょう。ここは恋人のふりをお願いできますか?」


下心はない。たぶん。きっと。


(続く)

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