翔斗視点

第157話  7月1日 同棲=なんでもあり

「お邪魔します……じゃなくてただいま」


「うん、おかえり」



 美香が彼女となった昨日――4人で?3人でと言った方が合っている気がするが――話し合った結果僕と一緒に過ごす人を3人でローテンションすることになった。


 くじ引きの結果、今日は凪、明日は美月、明後日は美香という順番に決まった。


「結構買ったよね。ある程度でよかったのに……」


「ううん、夜ご飯を一緒に買いに行くことが重要なんだもん――だからいいの」

 と凪はいう。


 学校が終わり凪と家に帰ろうとしていた時、凪からスーパーに寄ってから帰りたいと言われた。

 僕と美香は毎週日曜日に1週間分の食材を買うようにしている。

 なので、冷蔵庫の中は充実していてわざわざ買いに行く必要はなかった。


 だけど、凪にとってはスーパーへ買い物に行く行為自体が大切なことらしい。

 何となく言いたいことはわかった。


「まぁ、それもそうか。凪はこの後いつもどうしてる?お風呂とか入ってからご飯?」


「私はご飯作って食べてからお風呂!」


「了解です!なら一緒に作っちゃおうか」


「うん!」


 という事で、制服から部屋着に着替え2人で料理を開始する。


 途中、お風呂を洗うため離れたが、ほぼほぼの作業を僕は凪と2人でこなした。

 ほとんど無言だったというのに、僕たちの動きは止まらない。

 その時、何が欲しいのか、どういうことをして欲しいのか、話さなくてもわかるからである。


 それでもコミュニケーションを取らなくてはいけない、とわかってはいる。

 わかっていると思い込んでコミュニケーションを取らないと、お互いわかってないことが炙り出されないから。

 それでもこの作業に関しては必要がなかった。


 2人で作ったのは、生姜焼きとポテトサラダとお味噌汁。

 帰ってきてすぐに米を炊いたからちょうど料理が出来上がるタイミングで米が炊ける音楽がなった。


 やっぱり凪といると落ち着くな――と心から僕は思う。

 これは他の2人にも感じる時はあるが、やっぱり凪に対して感じることが多い。



「お風呂はどうする?凪が最初に入る?」

 とご飯を食べながら僕は聞く。


「入らないよ」


「あ、じゃ僕が最初に入る感じなのかな?大丈夫?僕からで」


「いや、ダメだよ」


「え?何が?」


「翔斗くんはわかってないよ!これはいわゆる同棲。同棲っていうのはお風呂を一緒に入るってことなんだよ」


 何言ってるんだこの人。


「何言ってるの?」


 言うことと思っていることが完全に一致してしまった。


「そのままだよ。お風呂は一緒に入らないといけないのが同棲って意味なんだよ」


「同棲って意味をもう一度調べてきた方がいいと思うよ」


「うんん、平気」


 ちょっと怖くなってきた。


「断ることは……」


「もちろんダメだよね」


 前にもこう言うことがあったように思う。

 あれは突然入ってきたため避けられなかったことだったし水着も着てた、だから諦めて入ったのだが今回は違う。


 そもそも、最近キスができたと言うのに、いきなり裸を見せ合うってハードル高すぎではないだろうか。


 さっき程まで、話さなくても考えていることがわかる、とかほざいていましたが、すいません、あれ嘘です。

 まったく凪が考えていることがわかりません。


 絶対美香から影響受けてるよ……と僕は心の中で呟く。


 絶対に引きそうに凪を見て、僕はどうしようかと考える。

 別に入りたくないわけではない――むしろ入りたいし見れるなら見れるに越したことはない。


 彼女の体を見たくない彼氏などいないのだ。

 いや、女性の体を見たくない男性などいるわけがないのだ!


 だけど、そのせいで理性が飛んでしまいました……なんて言うのは洒落にならない話であり、僕としても不本意ではない。


 だからせめてもの抵抗をさせてもらう。


「せめて……タオルだけ巻いといてください」


「う、ういっす」


 そんな返事、凪から聞いたことないぞ……絶対美香の影響だよ。


 美香の存在がデカすぎる――色んな意味で。





 という事で、後日談。


 何事もなくお風呂は入れました。

 お風呂の中では凪が巻いてるタオルが取れることはなく、僕自身も理性が飛ぶと言うのはなかった。


 ちなみに僕も下半身にタオルは巻いていた。


 お湯に浸かった時に僕の前に座られた時はとても危ない状況だったが、いつかはこう言う時に後ろから抱きしめられるようになりたいなと思う。


 いつになるのかはわからない。


 まぁ、何事もなかったと言ってはいるが、実際のところ何事もなかったように話しているだけ。


 お風呂から上がった時、凪のタオルが取れ、綺麗な体が少しだけ、いや、少しだけと言う名のガッツリ見えてしまったわけだけど、綺麗だった……。




 今、僕たちは同じベットに入っている。

 今日は凪から初めて、僕にキスをしてくれた。

 それに答える形で僕も凪にキスをする。


 それ以上は進まない。

 もう少しだけ、それは先でいいだろうと思うから。


 気が付いたらハグをしながら僕と凪は寝ていた。

 お互いがお互いの想いを確かめる様に……。


 凪とはコミュニケーションよりもこうした触れ合うことを多くしていきたい。


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157話読んで頂きありがとうございます!


ハグして寝るって息苦しくないのかな?とか思ってしまう私はすでに末期ということですねわら

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