第156話  6月30日 今日から始めちゃう?

「という話なんだけど……2人はどう思う?」


 学校が終わり、予定通り美香の家に4人で集まった。

 美香とお兄ちゃんが横並びに、その反対側に凪ちゃんと美月ちゃんが座っている。


「どう思うと聞かれると、これ以上ライバルが増えると翔くんとの時間が少なくなるなとは思う」


「それは私も。でも嫌だとは思ってないし、もう美香ちゃんとも話したから、全然向かい入れる準備はできてるよ!」


 昨日話した時には、かなり動揺していた凪ちゃんだけど、1日で立ち直ったらしい。


 これで正式に2人に認められ、後はお兄ちゃんだけとなった。


「そっか……」

 と歯切れ悪そうにお兄ちゃんはいう。


 こんなにも早く、2人から了承を得られるとは思っていなかったのだろう。


 美香に対しての気持ちは今日の朝聞いてしっかりと理解した。

 だから、今すぐにでも凪ちゃんや美月ちゃんの仲間入りをするつもりはなかった。

 只、お兄ちゃんにしっかり意識をして欲しかっただけ。


 それなのにお兄ちゃんは今ここで答えを出そうとしているみたい。

 そんなに悩むならもう少し考えさせてくれとか何とか言ってくれればいいのにと思いながら、すぐに決められるならそれに越した事はないと思っている自分がいた。


「お兄ちゃんは1人で考えさせといて、美香たちは美香たちでこれからどうするか決めませんか?」

 と美香は2人に提案をする。


「まだ僕が答えを出す前なのに……」


「うん!いいよ何を決めるの?」


 お兄ちゃんがボソッとなんか言ったように感じたが無視。凪ちゃんの返しに美香はすぐに答えた。


「まず、お兄ちゃんと一緒にいる時間を平等にしようかなって思うんですよね」


「ほうほう、いいね!」

 と美月ちゃんが前のめりで聞き返す。


 待ってましたと言わんばかりのその姿勢に少しだけ笑いそうになった。


「まず、1日ずつ交代でお兄ちゃんと一緒に過ごすってどうかなって」


「え?それって月曜から日曜まで3人でサイクルするって事?少なくとも翔くんと1週間に2回、2人だけで過ごせるってことになるのか」


「そういう事です」


「でもそれだと美香ちゃんの時間が減っちゃうけどいいの?」

 と凪ちゃんからの質問。


 逆に凪ちゃんは美香の時間が2人よりも多くていいと思ってるのかな?もしかして舐められてる?


 少しぐらい2人に危機感というものを教えてあげなければいけないかもしれない。


「逆にいいんですか?既に美香の方が数歩、いや数え切れないぐらいお兄ちゃんと進んでると思うんですけど」


「へ〜」「ふ〜ん」


 2人とも平然を装って答えてはいるものの、顔が若干引き攣っている。


 笑そうになるのを必死に堪えつつ、美香はさらに2人に喧嘩を売る。


「まぁ、そこまで一緒に居たくないのなら仕方なく、仕方なくですけど美香が1週間の半分をもらいますね。あー申し訳ないな〜でも嬉しいな〜これで2人よりも美香は進めるって事だし」


「凪ちゃんだから言ったじゃん、美香ちゃんを甘やかしたらダメだって」


「そうだね、やっぱり危険だよこの子。1週間の半分も一緒に居させたら翔斗くんのこと根こそぎ持っていかれそうだよ」


「と、いう事で凪ちゃんの言ったことは気にしないで、最初の提案で大丈夫だから。これからよろしくね」


「こちらこそよろしくお願いします〜」



 という事で、美香が当初から考えていたやり方になったわけだけど、お兄ちゃんが何だか言いたそうな顔をしていた。


「どうしたのお兄ちゃん」


「いや、一応まだ答え出してないんだけどなと思ってさ」


 まったくいつまでそんなことを言っているのか。


 外堀は埋まってる。

 お兄ちゃんの気持ちも決まってる。


 どこに美香のことを断る要素があるというのか。


「「「つべこべ言わず了承しろ!」」」


 4人揃ってから初めて美香たち3人の意見があったような気がする。


 それは、何人増えてもお兄ちゃんなら幸せにしてくれると、美香たちが確信を持っているからだと思う。

 家族としてではなくて1人の異性としても、お兄ちゃんが幸せにしてくれることに疑いは持っていない。


 もし、これで3人の誰か1人でも不幸せになるのであれば、美香は躊躇なくお兄ちゃんを葬ることを約束しよう。


 お兄ちゃんなら美香が加わっても凪ちゃんと美月ちゃんのことを幸せにしてくれると信じてる。

 信じてるから義理とわかった時点で彼女になるべく動いたのだ。


 ちゃんと答えてくれると信じてるからね、お兄ちゃん。


「あ……はい。すいません、美香さんこれからよろしくお願いします」


「こちらこそ、よろしくお願いします!お兄ちゃん!」

 と美香は油断しているお兄ちゃんの唇に自分の唇を重ねた。



 反対側ではやられた!みたいな顔を2人はしている。


 ふふ、これからは幸せな日々が待っているのだと美香は思う。


 自分の気持ちに蓋をして我慢し続ける日々は今日を持って終わったのだ。


 もう自分の気持ちは隠さない。


 お兄ちゃん大好き!愛してる!


 ゆっくり唇を離し、美香はお兄ちゃんに言い放つ。


「あ、それで子供は何人作る?今日から始めちゃう?」


___________________________________________

156話読んで頂きありがとうございます!


美香が(仲間入り)しました。

鉤括弧の中が今回の本当の題名です。

今着いている題名はほぼほぼふざけておりますのでご理解お願いします。


残り三話ほどでこの章は終わりになります。

その後は一旦エピローグを入れて本編は閉められればなと思っています。

と言ってもまだ続きは書くと思います。

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