夜光視点

第153話  6月29日 敵わない

「だってわたし、翔くんの彼女だもん」


「え?どういう意味?」

 と凪ちゃんから真顔で質問を受けた。


 そんな真面目に回答されると困る……。

 今の言葉に理由なんてなくて、美香ちゃんが翔くんの彼女だろうと凪ちゃんが翔くんの彼女だろうと、わたしに対する想いは変えないし変わらないと翔くんは言ってくれた。

 それなら何も心配することはないんだなと……一昨日の時に改めて気がついた。


 それ故の言葉だった。


 だから、翔くんの彼女であるのなら心配することなんて何もないかなって思ってる。


 強いて言うなら、美香ちゃんが翔くんの彼女になったら、翔くんとずっといるのはずるいって思うだけ。

 せめて、1日交代で翔くんと過ごさせてほしいなと思った。


 逆にわたしは疑問だった。

 なぜ凪ちゃんはそんなにも深刻そうな顔をしているのかと。


「逆に凪ちゃんどうしたの?そんなに美香ちゃんのこと反対なの?」


「いや、違うよ、そんなことないよ。でもさ、美香ちゃんだよ?翔斗くんのことなんて私たちよりも知ってる美香ちゃんだよ?その美香ちゃんが彼女なんかになったら……私じゃ敵わないよ」


 どうやったらそんな言葉が出るのだろうかとわたしは思う。


 美香ちゃんに敵わないってなんなんだろう。

 わたしにはない考え方を凪ちゃんがしていることは時々あるけど、今回に関しては決して良い考え方をしているとは思えなかった。


「敵わないってなに?」


「え?だって翔斗くんに取って美香ちゃんってすごく特別なんだよ?それこそ私と美月ちゃんは彼女と言う存在になって初めて釣り合うぐらいに」


「え?美香ちゃんが特別ってことは見てればわかるけど、翔くんにとってはわたし達も特別だと思うんだけど」


 自分にとっては当たり前だと思っていることが相手にとっては当たり前じゃないと言うのはよくある話。

 だけど、今の凪ちゃんはちょっとおかしい。


「それでもだよ〜」


「いや、待ってよ。凪ちゃんは翔くんがわたしたちよりも美香ちゃんのことを大事にしてるって言いたいの?」


「そうじゃ、ないけど」


「てか、逆だと思うんだけど」


「逆?」


「うん。今までどっちかって言うとわたしたちのことを優先してくれたと思うけど。美香ちゃんが一緒に行動するようになったのだって最近からじゃない?」


「でも、それって美香ちゃんが譲ってくれてたから……」


「違う、違う。譲ってくれていたのかもしれないけど、それは譲ったって思いたかっただけだと思う。わたしでもそうすると思うもん。好きな相手が誰かと、女子と遊びに行くとか聞いて、止めても行くんだろうなと思ったら自分を守るために譲ったって思う」


「でも……」


 何をそんなに引っ掛けているんだろう。

 昨日はとても幸せそうな顔をしてた。

 わたしと同じように、凪ちゃんも翔くんから色々貰ったんだろうなと思ってた。


「さっき凪ちゃんは敵わないって言ったけどさ、そもそも敵うとか敵わないとかそんなことって考える必要あるの?別にわたしにも美香ちゃんにも勝つ必要なんてないじゃん。凪ちゃんは凪ちゃんのやり方で翔くんと仲を深めてきたわけだしさ」


 未だ納得がいっていない顔をする凪ちゃん。

 もう少し踏み込んであげなければいけないのかもしれない。

 わたしにはわたしの武器があるのと同じで、凪ちゃんにも凪ちゃんの武器がある――それをわかって貰えばいいのかな?


「わたしだって凪ちゃんに敵わないと思うところあるよ」


「え?」


「わたしは凪ちゃん様に、翔くんに安らぎ与えることはできない。わたしには翔くんをドキドキさせることしかできないの」


「いや、そんなこ……」


「それでもいいと思ってる。それがわたしの武器であり、翔くんがわたしのことを好きになってくれた根本的な部分だから。凪ちゃんは敵わないって言うけど視野が狭いよ。凪ちゃんだって勝ってることはあって、敵わないって思われてることは多い。お互い様なんだよみんな。だからさ、敵う敵わないで翔くんとの関係を考えるのはやめようよ。翔くんは絶対見てくれるから。誰かと誰かを比較して順位付けなんて絶対しないから。美香ちゃんのことが特別だからわたしたちのことを蔑ろにする様な人じゃないよ。わたしそんな人を好きになったつもりはないよ」


「そっか……みんなそれぞれ敵う敵わないがあるんだね……私だけじゃないんだ。そうかも。少しだけネガティブになりすぎてたかも知らない。昨日あれだけ翔斗くんから貰ったって言うのに。そうだね。もうやめる。敵う敵わないで見るのはやめるよ。私だって師匠に……いや、美香ちゃんに勝ってるところあるもんね!」


「う、うん」


 凪ちゃんって変なところでポンコツだと思う。

 だって自分では気付いてないんだもん。


 凪ちゃんはわたしと美香ちゃんが揃っても敵わないぐらい良い武器を持ってる。


 決して口には出さないけど、凪ちゃんが何もしなくても翔くんの方から動いてくれる。

 それは絶対凪ちゃんしかやらない翔くんの癖の様なもの。


 翔くんからしてもらう様に仕向けることはできても、凪ちゃんみたいにはできない。


 凪ちゃんの武器は翔くんに安らぎを与えることではない。


 凪ちゃんの本当の武器は、翔くんを自ら動かすことができる存在という凪ちゃん自体が武器なのだ。


 美香ちゃんも人が悪いよ。

 それを気付かせないためにずっとアドバイスして凪ちゃんからアクションを起こさせていたんだから。


 これから先、美香ちゃんが加わることで色々変わっていくことはありそうだけど、わたし的には味方が増える様で嬉しい。


 それに、ライバルが1人増えるのは張り合いがあって楽しそうだとわたしは凪ちゃんを見ながら思った。


___________________________________________

153話読んで頂きありがとうございます!


 やっぱり私って美月ちゃん好きなんですよね笑

 物語に私情はいれないですが、キャラとしてはどこまでもまっすぐな美月ちゃんが一番好きですね。


 凪ちゃんはどちらかというと面白いイメージがありますね。最初はもっと大人しめであったんだけど、、、


 美香は、、、やばいっすしか言えないです。

 

 なんとなく私の中のキャラのイメージを報告してみました。

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