美香視点
第154話 6月30日 美香行動開始
昨日の夜、凪ちゃんから「改めて、これからよろしくね」という連絡をもらった。
これで残すところあと1人となった。
朝のこの時間は、日課の朝ごはんを作るところだが、2人からの公認になった今、美香は全てをお兄ちゃんのために動こうとはしない。
だから、朝ごはんも今からは作らない。
ゆっくりと美香はお兄ちゃんの部屋へと入る。
美香が朝ごはんを作る様になった最初の頃は、お兄ちゃんも美香に合わせて朝早くに起きてくれてた。
最近は朝ごはんを作り終わった美香が起こしに行くというのが一連の流れ。
この何の変哲もない日常すら、美香には攻め落とすチャンスの様に思える。
例えばこうやって……
バフッと音を出しながら、ベットの上に仰向けで寝ているお兄ちゃんの上に美香は乗る。
「おはようお兄ちゃん!大好きだよ……」
と美香は独り言を呟きながらお兄ちゃんの唇に美香の唇を合わせる。
寝ているお兄ちゃんの顔はとても可愛い。
そんな可愛い顔も、妹と思っている美香にキスをされていると知ったらとても焦った顔をするのだろうなと思いながら、美香はキスを続ける。
凪ちゃんや美月ちゃんはもうキスをしたのかな?
お兄ちゃんの合意の上でキスをしているわけじゃないから、ちょっとだけ悔しいし罪悪感があるけどずっと我慢してきたしいいよね。
美香はお兄ちゃんが起きるまでキスを続けることにした。
無防備なお兄ちゃんの唇だけではなく、頬や首筋、耳からおでこといろんなところにキスをしていく。
少しだけ、赤いリップを付ければよかったかもってキスをしながら美香は思った。
そんなことを思っていると、お兄ちゃんの息遣いに変化が起きた。
……あ、起きる。
と同時に、お兄ちゃんは少し重そうな顔をしながらゆっくりと目を開けた。
「ふゎぁ〜美香おは!?……」
あくびをしながら上に乗ってる美香に挨拶をしようとするお兄ちゃん。
そのお兄ちゃんの挨拶を遮り、美香は再度キスをした。
あくびをしていたせいで下唇を噛む様な形になってしまったが、キスみたいなことをするとお兄ちゃんにわからせてあげることが目的なのでこれでいい。
数秒間のキスの末、お兄ちゃんは驚いた様に美香から顔を離す。
「おはようお兄ちゃん」
とお兄ちゃんが何かを言う前に美香は挨拶をする。
そして、そのまま何も言わず美香はお兄ちゃんの部屋を後にした。
これは昨日、妹と思ってるからと言ったお兄ちゃんへの罰。
少しは美香のことを女性として意識しやがれ!
朝ごはんを準備して、テーブルに座る。
お兄ちゃんは美香が部屋を出てからすぐに出てきて何かを言おうとしていたが、美香が聞く雰囲気を出さなかったため大人しく洗面所へと向かった。
こういう時だけは、人の心情を読み取れるのだなと美香は心の中で愚痴を吐いた――その読み取りを少しは恋愛感情に使いやがれ!!とは決して言葉に出さない。
今は向かい合い朝ごはんを食べている。
「きょ、今日もありがとう。ごめんねいつも1人でやらせちゃって」
というお兄ちゃんはとても気まずそう。
理由は明白、美香がお兄ちゃんにキスをしていたから。
昔はいっぱいしてたはずなんだけどね……あの時からキスを毎日の日課にしておけばよかったと美香は少しだけ前の自分を後悔した。
と言っても、花さんと付き合い始めたから自重したんだけどね……。
「まぁ〜これからは2人で朝ごはん作るのも悪くないよね」
と美香はいう。
それは、これから2人で作らないなら今日みたいになるぞという美香からの圧と、朝から2人でイチャイチャしながら朝ごはんを作れないかなという美香の願いと二つの意味がかかっていた。
お兄ちゃんがどっちを選ぼうと美香には利益がある。
最高の2択である。
「……そうだな、僕も甘えてばかりかはダメか。明日からは一緒に作るね」
「わかった!なら明日から一緒に作ろうね!」
「うん……それでさ、美香……」
「ねーお兄ちゃん」
と美香はまたもやお兄ちゃんの話を遮る。
「あ、うん、どうした?」
「それで、いつ美香のことも彼女にしてくれるの?」
美香はもうお兄ちゃんに考える暇を与えない。
お兄ちゃんが美香のことを好きだというのはわかってるから。
家族としての好きの中に違う好きが混ざっていることを美香は気が付いているから。
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