第151話 6月29日 美香の作戦
美香の作戦を伝える前にお兄ちゃんの説明をしよう。
まず、お兄ちゃんはバカ鈍感――好きという言葉をかけられても、お兄ちゃんの脳内では勝手に友達としての好きだと変換させられるくらいにはバカ鈍感。
……本当に勘弁してほしい。
次に、お兄ちゃんは頭が硬い――毎日のようにどうやったら2人を平等に幸せにできるかを考えて生活している。
正直に言わせてもらうと平等なんて無理。
平等については物の例えであって、頭が硬いと言わざる負えないところは一つのところに思考を集中しすぎてしまうところだと思う。もっと開く考えれば違う答えが見つかるのに、それが目に入らないぐらい集中してしまうだ。
どれだけ平等に振る舞うかを考えるのではなくて、どれだけ2人を幸せにできるかを考えるべきなのだ。
……本当に勘弁してほしい。
この二つのめんどくさいところを踏まえて、美香はお兄ちゃんとの関係を外堀から埋めていくことにした。
鈍感だったとしても美香の気持ちが伝わるように、いや、理解させられるように。
そして、2人には申し訳ないけど、硬い頭を持ってしても美香のことを一番だと言わせられるようにしたい。
そのための外堀埋め。
早速だけど行動に移させてもらう。
いつまでも、こうして部屋にこもっていられるか!
美香は勢いよく部屋の扉を開け、リビングへと出る。
「あれ?もう大丈夫なの?」
とリビングのソファーに座っていたお兄ちゃんは振り返りながらいう。
「うん。元々そんな動揺とかしてなかったからね……」
「そうだよな。僕も考えてたんだけど、血が繋がってないにしても美香はやっぱり僕の妹とだって思ってるから」
と普通の顔でお兄ちゃんはいう。
美香が本当に外堀から埋める理由はこれだった。
お兄ちゃんは私のことを妹としか見てない。
美香はずっと好きだと言ってきたのに――そういうところが鈍感。
美香の前では自分のことを「お兄ちゃん」というお兄ちゃんが、今日は僕と言っている。
聞いててため息が出そうになる――必死で美香を妹として思い込もうとしてるところが頭が硬い何よりの証拠。
……本当に勘弁してほしい。
こんなお兄ちゃんを堕とした2人には、流石としか言えない。
まぁ、美香の次に、なんだけど!
「ちょっと隣行ってくるね」
「あ、うん……お昼いらないの?」
と少しだけ寂しそうにお兄ちゃんはいう。
「いや、食べるよ。お兄ちゃんの料理好きだもん」
「そ、そっか、わかった。なら準備しとくな」
嬉しそうな顔をするお兄ちゃんを見て無性に抱きつきたくなる。
先程から攻撃的なことを言ってはいるものの、基本的に美香はお兄ちゃんが大好きなのだ。
だからこそ思う――美香も美香で、まだ怖気付いているところがある……と。
さっきからお兄ちゃんとだけは呼びたくないのに、どうしてもお兄ちゃんと呼んでしまう自分がいた。
なんと呼べばいいのかわからないというのも正直なところではあるが、素直にお兄ちゃん以外で呼ぶのが恥ずかしい。
なにがいいんだろう。
翔斗って呼び捨てするのがいいかな?
翔斗くん、翔くんはできれば使いたくないんだよね――それは2人の呼び方だから。
翔斗さん――
先輩――
にぃに――
うん、お兄ちゃんでいいや。
「行ってきまーす」
考えるのがめんどくさくなりました。
「と、いうわけで美香とお兄ちゃんは義理の兄妹だったみたいです」
と2人の家にお邪魔して早々、美香は爆弾を投げ込んだ。
美月ちゃんはびっくり!とした顔を浮かべ、凪ちゃんに関して椅子に座っていたはずなのに姿が見えなくなった。
椅子から落ちたのだろうか。
チラッと横を見るとなぜか机の下で体育座りをしていた。
どうしたのだろうかと思っているとなにやらブツブツと凪ちゃんの方から声が聞こえてくる。
「……がついに」
ん?
「師匠が……師匠がついに……」
師匠?と思った矢先、凪ちゃんは立ち上がり、座っている美月ちゃんの後ろまでいき肩を掴んだ。
ため息をつく美月ちゃん。
とても慣れた様子。
「ど、ど、どうしようーーーーついに、ついに美香ちゃんが……師匠が……美香ちゃんが、ら、ラスボスがぁ〜」
再度ため息をつく美月ちゃん。
なんかいつもとキャラが逆な気がする――決して口に出して美香は言わない。
その代わり、
「だれがラスボスじゃ!!」
美香も美月ちゃんの肩を前から掴んでゆっさゆさと揺らした。
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151話読んで頂きありがとうございます!
総合PVが43万を突破!
いつも見てくださってありがとうございます!
凪ちゃんのキャラが最近壊れているように感じます、どうにかしてくださいあの子、、
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