第137話  5月27日 母からの指摘


 美香ちゃんから指摘を受けた日から2日が経ち、週末を迎えた。


 あの日から、翔斗と話したりすることはやめている。


 美香ちゃんにあそこまで言われて流石に話し続けることができなかったからである。


 それに、少しだけ何かはわからないが自分自身引っかかるものがあったからであった。


 ―――――――――


 朝、リビングへとご飯を食べに行くとお母さんの姿が見えた。


 お父さんはまだ寝ているのだと思う。


「おはよう」


 何気なく挨拶をすると、


「おはよう……ってあんたまた最近なんかあった?」


 急にお母さんから質問を受けた。


「……いや、ないよ」


 無いわけでは無いため返答に困り、少し間が空いてしまった。


「あるのね、まぁどうせ翔斗くん関係なんでしょ、話してごらん」


 言わないという選択肢は用意されていないらしく、お母さんが座っているソファーの横に座れてと合図をされる。


 お母さんやお父さんには、私が翔斗と友達に戻りたい思っていること、私が自分勝手なところを治そうとしていることを伝えている。


 だけど、美香ちゃんとの約束までは伝えてはいなかった。


 ――――――


 お母さんの横に座り、私はここ最近あった事と過去に美香ちゃんとの約束のことを話した。


 お母さんの第一声は、 


「はぁ……」


 大きなため息だった。


「美香ちゃんとそんな約束をしていた癖に友達にもどろうと近付いてくるなんて、そりゃー怒られて当然だわ」


「……そうだね」


 言い返す言葉がない―――。


「まぁ、美香ちゃんの言葉だけで結構効き目あったみたいだから私からこれ以上言うことはないけれど、一つだけ質問していい?」


「うん。なに?」


「前から思ってたんだけど、あんたは本当に翔斗くんと友達に戻りたいと思っているわけ?」


 その質問に少しだけ動揺した。


 お母さんの質問は最近私も気になっていることであったから。


「お父さんとはあなたがまた変な方向にいかない限り口を出さないって約束をしてたから黙ってみてはいた。高校生にもなって自分のことを自分で解決できないようじゃこれからが心配だしね」


「うん……」


「だけどあえて言わせてもらうとあんた逃げてるだけじゃないの?」


「逃げてるだけ?」


「そもそも翔斗くんと友達に戻ってどうする気?もう新しい彼女もできたって言ってたじゃない。今更あなたが入れる場所なんてないと思うのだけど」


「いや、だからそれは美香ちゃんにも言われたことで……」


「わかってるわよ、わざわざ2回も同じことを言うつもりもないわ。私が言いたいのは、本当は翔斗くんのことをまだ好きなのに告白する勇気もなく、告白したとしても振られるから、翔斗くんの友達に戻ろうと逃げてるんじゃないのって言ってるの」


「そ、そんなこと……」


 流石に認めることができないと否定をしようとしたけれど、なぜか否定をすることができなかった。


「自分自身を治したいと言うのはわかるけれども、自分に嘘をついていたらいつまで経ってもあなたは成長できないわよ。それに、少しぐらいあなたは辛い経験をした方がいいのよ。今辛いと思ってるのはあなたが勝手に思ってるだけなんだから。少しだけ考えてみることね」


 そう言って、お母さんは「朝ごはん置いてあるから食べるのよ」とだけ言い残してリビングを出て行った。



 ―――――――――



 リビングで一人、時計の針が進む音だけがやけに大きく聞こえる。


 お母さんの話を聞いて否定できなかったのは、薄々自分でも気づいていたからなんだと思う。


 お母さんは直接私にどうしなさい、こうしなさいとは言わなかった。


 本当は違う言葉一言でさっきの話は終われたのに……。


 要は、その答えは自分で自分に言ってあげなさいと言うことなんだと思う。


「あなたも少しは辛い経験をした方がいいわよ―――か」


 一人、リビングでつぶやく。


 辛いことが待っていると分かっていながら、その選択を取ると言うのはとてもじゃないができるとは思えない。


 だけど、私が今の自分を変えるにはもう辛いことを経験しないといけないのだろう。


 やっぱり逃げることはできないのだ。



 翔斗との関係を断つことは。



 だったら最後に、美香ちゃんとの約束をまた破ってしまうことにはなるけど、私の気持ちを伝えようと思う。


 先延ばしはしない。


 体育祭が行われる日の朝、私は翔斗に気持ちを伝えよう。


 決してうまく行くことのない告白を……。



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137話読んで頂きありがとうございます!


少しグダってきているので、後数話で花問題は解決させます。


いつも見て頂きありがとうございます!

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