第127話 5月9日 まさかの発表
高橋くんの言葉に私は衝撃を受けた。
「おい!みんな聞いてくれ。古巻翔斗が朝露凪、夜光美月と二股宣言をしたぞ」
一瞬何を言っているのかわからなかった。
私はすぐさま当事者である2人の顔を見る。
その顔を見て私は悟った――
高橋くんが言っていることは本当なのだと。
改めて私はまだ翔斗のことを諦められていないことに気がついた。
二股であっても、翔斗に新しい彼女ができた。それを考えるだけで、胸の奥が締め付けられとても悲しくなるのだ。
だが、それと同時に少しばかりの怒りもあった。
浮気よりかは全然なのかもしれないけど、翔斗は二股をしているのだ。
あれだけ私のことを責めていながら、翔斗だって中途半端なことをしといる。
なぜ私は今もなお許してもらえず、友達としてもやっていけてないのに、翔斗はこんなことをしているのだろうか……。
私の中の黒い感情が湧き出してくるのがわかった。
翔斗が教室に入ってきた。
周りの人にいろんなことを言われている。
―――言われて当然。
最初はそう思っていた。
だが、翔斗の顔を見たらそんなことは思えなくなっていた。
そう……翔斗の顔には後悔が見えなかったのだ。
他の人から見たら図星だから黙り込んでいるのだと見えると思う。
でも、流石に小学生からの付き合い。わからないわけがなかった。
どうしてそこまで真っ直ぐな顔で居続けられるの?
自分のやっていることが悪いことだと思わないの?
二股するなら、私にだって…………
そこで、私は考えるのをやめた。
これ以上は良くないと感じたのだ。
今ここで、翔斗を非難することに何も徳がないのだ。
好きな人が他の人と付き合いだした。
これがどれほど胸を締め付けれることなのか、それを知れただけでも、私は一歩成長できたのだ。
逆に感謝しないといけないのかもしれない。
だからこそ、私が今やるべきことは何もしないこと。私はそう思った。
助けるなんて、覚悟を決めた翔斗に対して失礼だと思うし、否定するにも3人で話し合って決めたことなのであれば他人である私たちが何を言っても意味がないからである。
私は最近暇な時によく見るネットニュースに目をやる。
あれから、LINE以外SNSをやっていない私にはこれぐらいしかスマホの楽しみがないのだ。
そんな時、ネットニュース内で、緊急ニュースが流れてきた。その内容を見て、気がついたら声を出したいた……。
「あのさ、その心配ももういらないんじゃないかな?」
「は?」
高橋くんから睨まれた。
今この現状では声すらも発してはいけないらしい。
そんな空気読む必要もないのでもちろん無視をする。
「ほら、」
そう言って、記事と共に付けられていた動画を再生する。
『たった今、政府から少子化問題に対する策が発表されました。内容としましては、六月から日本も重婚、一夫多妻制を取り入れるというものです。もう一度お伝えします。たった今、政府から少子化問題に対する策が発表されました。内容としましては、日本も重婚、一夫多妻制を取り入れるというもの。お昼頃に総理大臣の手続き、天皇陛下による憲法公布が生中継される予定となっています。今日から日本の歴史が動こうとしている……』
途中になってしまったが、私は動画を止めた。
これぐらいでも充分、決定打にはなっているだろう。
しかし、余計なことをしてしまったのかと心配になり私は翔斗の顔を見る…………と目があった。翔斗もそれに気がついたのか、少しだけ頭を下げ無言のお礼をしてくれた。
たったそれだけで胸がドキッとすると共に、嬉しくなった。
散々なことをした私が、ほんの少しではあるものの、翔斗のためになることをできた気がした。
それだけで、あの時から少しは変われたのかなと思えて嬉しくなり、私は机に顔を伏せるのであった。
―――――――――
こんな形で高橋くんの話し合いが終わるとは思っていなかった。
花から伝えられた、重婚を認めるというニュースには流石の僕も驚いたのだ。
高橋くんはと言うと、床に座り込んでしまっている。
これ以上は話すこともないので、僕は2人のところに向かった。
「お疲れ様です。翔斗くん!」
「お疲れ!翔くん」
「いや、2人こそお疲れ様!さっきのかっこよかったよ!」
軽めの挨拶と褒め合いをしてから席に座る。
それからは、チャイムがなる間の時間を今まで通りたわいのない話をして過ごす。
みんなに二股をしていると知られている状態でも、今まで通りの日常が過ごせそうで何よりだと思った。
これからは僕たちの未来に向けて本格的に頑張っていく期間となるだろう。
喧嘩もするだろうし、うまくいかないことだってあると思う。
それでも最後には2人に幸せと言ってもらえるように努力をしていこう。
心配なことは何一つない。
この2人に加えて、美香がいる。
助け合いながらでもやっていけばどうにかなるさ。
ということで、付き合い始めてから最初のイベントとなる凪の誕生日を絶対に成功させる。
何事も最初が大事って言うからね!!
気合を入れてやっていこう!そんな気持ちを込めて持ってきたお茶を口に含んだ時、美香から4人で作ったLINEのグループにメッセージが届く。
『なんで、重婚はあって家庭内結婚はないんだろうね。残念……』
あまりにぶっ飛んだ内容だったため、僕は口から壮大にお茶を噴き出した。
そして、それが美月にかかり、付き合ってからはじめてとなる美月のお叱りを受けるのであった。
………………悪いの美香なのに―――。
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127話読んで頂きありがとうございます!
フィクションですので、現実で二股をしないようお願いいたします!
私のせいにされるのはごめんです笑
コメント、応援、いつもありがとうございます!レビューして頂けたら嬉しいです!
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