第122話  4月29日 軽井沢旅行 (3)


 1日目 

 ――――――――――――

 美月&美香side



 誰もが認める可愛い顔、雪みたいな白い肌、空から差し込む光みたいな金色の髪の毛、お椀型のとても綺麗な二つのお山は推定Dくらい、お尻も小さくてぷっくりしている。


 美月さんの裸を目の当たりにして、スペックの高さに美香は改めて驚いた。


「す、すごい……」


 思わず声が漏れてしまった。


「いやいや、美香ちゃんも全然負けてないからね?」


 美月さんは美香の裸を見ながらそう言った。


 確かに美香だって他の人よりはいいものを持っていると思う。胸も決して小さくないのにまだまだ成長途中だし、美容にも気を遣っているから肌も人よりはきめ細かい。だけど、やっぱり美月さんの前だと美香なんて霞んでしまう。


 そのぐらい、美月さんのレベルは高いのだ。

 その美月さんと肩を並べる凪さんも当然ハイスペックなのだと思う。




 考えないと決めていても、やっぱりお兄ちゃんのことを考えてしまう。


 今日なんて徐に凪さんとデートをしているであろう、お兄ちゃんのことを考えてしまっていた。


 お兄ちゃんに対する気持ちは誰にも負けていない。譲る気もない。

 でも……それだけ。

 美香がどれだけ頑張っても美月さんや凪さんには勝てないものがある。このスペックもその一つ。

 そもそも、美香は家族という大きな壁があるのだ。


 いくら諦めようと思っても結局できないでいる美香は本当にどうしようもない人間だと思う。


 せっかく美月さんと出かけているのに、お兄ちゃんは楽しくしているのか……とか、やっぱり3日目は2人が……とか、考えてしまう。


 この気持ちをどうにかしないといけなくて、一般論的な答えは見つけてる。それでも、美香の心の奥底がその答えを否定してしまっているのだ。


 本当にどうしたらいいのだろうか……。





 今更だけど、美香は美月さんと旅館の大浴場に来ている。もちろん凪さんはいない。


 なんとなくだけど、前まで凪さんと美月さんの中でお兄ちゃんに対する位置付けとして差があるように感じる。


 例えば、お兄ちゃんが2人とそれぞれ遊ぶ時、必ず凪さんが最初なところとか。

 今回の旅行はジャンケンしたと言っていたからたまたまだと思う。


 多分だけど、凪さんが最初なのはお兄ちゃんと仲良くなった順番とかが関係しているのではないのかな?と思うけど、もしそうなら1日目は美香であるべき……ではなく、もしそうなら前までの美月さんの位置って今の美香と似ているような感じがする。


 なんとなくではあるけど、その何かを美月さんに質問できれば美香のこの気持ちも少しだけ解決してくれるんじゃないのかなって……もう、質問してみよう。


「美月さん」


「ん?どうしたの??」


 少し暑くなってきたのか、手で仰ぎながら美月さんが答えてくれる。


 その姿さえとても絵になっていて、ため息が出そうになる。


「美月さんがお兄ちゃんと出会った時って、お兄ちゃんと凪さんって結構仲良しだったんですか??」


「そうだね……2人がどう思っていたのかは分からないけど、私から見たらとても仲が良かったと思う」


 やっぱりそうなんだ。

 美月さんがお兄ちゃんと出会った時は自覚がなかっただけであの2人は既に両思いだったんだ。


 美月さんもそれはわかっていた……その上で声をかけた。


「それでも美月さんはあの2人の中に入って行った……どうしてそんなことができたんですか??」


「うぅ……それを言われると困るな」


 苦笑いしながらバツが悪そうに美月さんは言う。


 美月さん自身も罪悪感はあったと言うことなのか。


「でもね、声かけたのは間違いではなかった……それだけは今も変わらず思ってる」


「どうしてですか?」


「ん……なんだろう。あの時は確かに翔くんと凪ちゃんは仲良くて、付き合っててもおかしくない状況だった。そんな2人を見て何もかも上手くいかないって落ち込んだこともあったよ。文化祭の時なんて途中で帰っちゃったし……えへへ。でも、いくら悩んでも、諦めようとしても、諦める事なんてできないし、好きって気持ちは消えないんだよね。なんかそんなことばかり考えてたら吹っ切れちゃってさ、いくら考えたって2人が付き合ってるなんて分からないんだし、私自身誰にも負けないくらい翔くんのことを思っていたから、後悔するなら声ぐらいかけようって思ったんだよね。結局こんな告白するみたいな感じで言っておきながら友達になってくださいしかいえなかったんだけど……あはは」


 美月さんの話は美香の中の何かに対して確信を突いているような気がした。


 美香だって、お兄ちゃんに対しての気持ちは誰にも負けてない。家族だからとか関係ない、美香はお兄ちゃんのことが好き。このまま自分の気持ちに蓋をしていたら絶対後悔すると思う。


「なんとなく思ってたけど、美香ちゃんも私と似たような感じなんじゃない?」


 美月さんの言葉にドキッとした。


 すぐに返答できない時点でもう美月さんは気がついてしまったと思う。


 話したら少しぐらい楽になるのかな?少しぐらい解決策がわかるのかな?


 自分の隠している事や気持ちを人に話す時ってとても勇気がいる事だと美香は思う。


 だとしても、美月さんには言ってみようかなと思った。美月さん自身が似ていると言っているならこの気持ちの解決策だって知っているかもしれないから。


「そうですね……美香も美月さんと同じ?なのかもしれません」


「ってことは美香ちゃんも翔くんのことを好きってことでいいのかな??」


 元々確信があったような言い方……やっぱりお兄ちゃん以外には美香の気持ちって気付かれているのかな。


「それも、そうですね……美香はお兄ちゃんのことが好きです。美月さん達に負けないくらい美香はお兄ちゃんのことが好きです」


「張り合いたい気持ちはあるけど、今は我慢しとく……。それで、美香ちゃんはあの時の私と同じように悩んでるってわけなんだ」


「はい……最近気持ちが抑えられなくなってきてるんです。2人がお兄ちゃんと一緒にいるだけで嫉妬しちゃうし、羨ましいって思っちゃって。前までこんな事にならなかったのに」


 案外話し始めてみるとスラスラ言えるものだなと思った。


 今まで抑えてきたのはなんだったのかって言えるぐらいには話しいる気がする。


「まぁ、今になって気持ちが抑えられなくなってきてるって言うのはなんとなく理由わかる気がするよ」


 美香もなんとなくわかる……


「お兄ちゃんが答えを出そうとしているから……」


「うん、私もそう思う。元カノさんと別れてから翔くんは誰のものでもなかった。ものって言い方はあれだけど、それが誰かのものになってしまう。焦る気持ちは出てくるよね」


「………………そうですよね」


 ずっと自分の気持ちに向き合わなかったからこうなってるんだ。


 花さんと付き合っていた時に感じていたことを、別れたから忘れていただけで、いざお兄ちゃんがまた誰かのものになってしまうと、また気持ちが溢れてきてしまう。


 結局花さんの時から美香は何も成長してないんだ。


 家族だからとか関係ないって言っていた美香が一番、家族だからに囚われていた。


 自業自得だよね、本当。


「でもね、私思うんだ」


 さっきから思ってたけど、美月さんはどうしてこうも楽しそうに美香と話しているんだろう。


 馬鹿にされてるのかな……。


 勝ったと思われてるのかな……。


「なん……ですか?」


 結局、似ていると思った美月さんですら、家族のことを本気で好きになってしまった美香のことを小馬鹿にするのか……。


 美香の中に話したことの後悔が広がっていく感じがした。


「いや、ごめんね。さっきから言おう、言おうと思ってたけど美香ちゃんどんどん落ち込んでいくから。もう、空気読まずに言わせてもらうね……」


「はい……」


「メッッッッッチャ、ラブコメヒロインだよね!美香ちゃんって!!羨ましいよ!」


「え?!?!」


 あまりにも思っていた言葉とかけ離れていて、変な声を出してしまった。


「だってさ、だってさ、血のつながったお兄ちゃんのことが好きってすごくヒロインじゃん。家族という壁にぶち当たってすごく悩んでて、それでも翔くんの背中を押そうとしている。もう本当にヒロインすぎてやばいよ。羨ましいよ!」


 最初は馬鹿にしているのかなって思った。

 結局みんなそうなんだってガッカリしそうになった。

 けど、どう見ても美月さんが美香のことを馬鹿にしているようには見えなかった。


 強いて言うなら、憧れだったものを目の前にして興奮している女子って感じ。


 美月さんは心から、美香のことを羨ましいって思っているんだ。


「あ、別に馬鹿にしてるとかじゃないからね。むしろ、こんなヒロインな美香ちゃんが幸せになれないなんて私絶対嫌!」


 美月さんはそこで一旦呼吸を整えた。


「だから!絶対諦めることなんてしちゃダメ!!翔くんを好きな気持ちから逃げちゃダメ!!当事者である私たちが言うのもあれだけど……私たちがいるからって気遣っちゃダメ!!美香ちゃんが本当に望むものを手に入れようとすることは誰にも止めることはできないし、誰かが馬鹿にしていいことじゃない。現に私は羨ましいとまで思う。そんなラブコメヒロインみたいな人生送りたいって。私でよければ応援するから。力になれるかわからないけど全力で応援する。


 もう、周りなんか気にしないで、美香ちゃんの望むことをやって!!

 今見えている世界はどんなことをしたって自分にしか見えないんだよ。

 結局、世界は自分中心に回ってるんだから、好き行きた方がいいよ!」


 気が付いたら、美月さんは目の前にいて、あの見惚れてしまった美しい体で美香のことを抱きしめていた。


 涙が止まらない。お兄ちゃん以外の人の前で泣いたことなんてないのに。


 本当にいいんだろうか……。


 お兄ちゃんに対して本気になって……。


 いや、今言われたばかりじゃん。



『この世界は自分が中心で回っている、好きに生きた方がいい』



 考えてみたらその通りだと思う。

 どんなに周りのことを考えても、憶測でしか分からないし、他の人が見ている景色だって美香にはわからない。逆に美香が見ている景色だって誰にも分からない。


 美香がどれだけお兄ちゃんに対しての好きが本物なのかも美香にしかわからない。



 美香の気持ちをお兄ちゃんにぶつけてもいいんだ……。


 自信持って好きだと思っていいんだ。


 お兄ちゃんと2人きりでデートしたっていいんだ!


 だって、美香はお兄ちゃんが大好きだから!!




「美月さん!!ありがとうございます!やっと自分の気持ちに素直になれた気がします!」


「本当!!諦めたりしない??」


「はい!だから、3日目は2人でデートしてきます!」


「うん!!そうしな!凪ちゃんには言っとくから!」


「はい!本当にありがとうございます!前まで美月さんには少しだけ苦手意識持ってたけど、とても好きになりました!!」


「ぐぅっ…………やっぱりそうだっか。なんか悲しいな。まぁ、いいや!好きになってくれたことだし!これからは、お互い頑張って翔くんの恋人になれるように頑張ろうね!!」


「え、美月さん今なんて??」


「え?いや、悲しいな。まぁ、好きになってくれたことだしいいやって言ったけど……」


「いやいやそこじゃなくて、その後です!」


「お互い頑張って翔くんの恋人になれるように頑張ろうね?」


「そう!そこです!なんで美香がお兄ちゃんと恋人にならないといけないんですか??」


「え?あ……え?」


 ……あ、そうか、美香が勘違いさせちゃってたのか。


「別に美香はお兄ちゃんのことは好きですけど、恋人になりたいなんて一回も言ったことないですからね?いや、もしかしたらあるかもだから、今もこれからも美香はお兄ちゃんと付き合いたいとは思わないですよ。美香はずっとお兄ちゃんのそばに居られれば充分です……うんん、たまにベタベタくっつくぐらいで充分……。流石にいくら好きな人でもお兄ちゃんとエッチなこととかはしたくないよ!」


「え……なんだよ!それなら早く言ってよ〜ずっと勘違いしてた見たいじゃん!」


「いや……美月さんが勘違いしてただけですからね?」


「そんなことないもん!!もう美香ちゃん嫌い!!先に出るからね!」


 美月さんはそう言って立派な2つのものを揺らしながらお風呂から出て行きました。



 …………美月さんにはああ言ったけど、お兄ちゃんの恋人に憧れたことはある。


 手を繋いで、デートして、ハグをして、キスをする。


 全部お兄ちゃんとやりたいと思う。


 でも、これは我慢しよう。


 お兄ちゃんのことを好きって堂々と思えるだけ幸せなことだから。




「よし!ここからが美香の旅行だ!!楽しむぞ!!」


 美香も美月さんのことを追いかけてお風呂から出ようとした………………けど、もう一言美香は独り言を言う!







「別に我慢するのはみんながいる時とお兄ちゃんが起きている時だけだから!お兄ちゃん覚悟しててね!!誰も見ていない時は美香我慢しないから!」


 ……3日目の2人部屋すごい楽しみ♡



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122話読んで頂きありがとうございます!


次、2日目に入ります。


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