第120話 4月29日 軽井沢旅行 (1)
軽井沢までは電車で移動。
元々チケットを3枚で取っていた為、残りの一枚は同じ車両ではあるものの少し離れた位置しか取れなかった。
もちろん美香を一人で座らせる訳もなく、僕が一人席ということで話はおさまった。
最初の30分ほどは外を眺めて電車での旅を頼んしでいたが、首が疲れた為持ってきた本を読むことにした。
もちろん今日読む本は、この間本屋に行った時に買いそこね、最近やっと買えた「連れ○の」
途中までは読み進めていた為、本の世界へと入っていくのに時間はかからなかった。
―――――――――
「ゴホンッ!せっかく3人になったことだし、少しだけこれからのことを話しましょうか」
わざとらしく咳をして、私の右隣に座る二人に話しかける。
並び順は通路側から、私、美香ちゃん、美月ちゃんです。
実を言うと窓側がよかったんですけど、ジャンケンで勝った順に奥から座ろうと決めてしまったので、我慢。
どっちみち、真ん中にいる筈の翔斗くんがいないので、どこに座っても変わらない気はします。
…………この言い方だと、美香ちゃんのことを拒絶しているように感じるかもしれませんが、そんなことはありませんからね!
話が脱線してしまいましたが話したいことは、美香ちゃんはどのようにこの旅行を過ごしたいのかっと言うこと。
それによっては私たちの動きというのも変わってきますからね。
「それで凪さん話って?」
美香ちゃんが私に聞き返してくれました。
美月ちゃんは私が何を話したいのか、薄々わかっているようで話を聞きながら、目だけは外の景色を追っています。
「まず、この旅行で私たちが考えたスケジュールがあってね、1日目に私と翔斗くん、2日目に美月ちゃんと翔斗くん、3日目と4日目は3人で、と言うスケジュールだったんです」
それを聞くと、少しだけ美香ちゃんがバツの悪い顔をしました。
…………これじゃ、私がとても性格悪い女みたいになってしまいます。そんなつもりじゃないからね?ないからね??
そうならないよう、さらに話を続けます。
「でもね、元々せ……美香ちゃんを誘う予定だったから、せん……美香ちゃんが来る時のバージョンも考えてて、3日目になっちゃうけど、せんせ……美香ちゃんも翔斗くんと二人で出かけるってどうかな?」
せっかく来たんだから、先生だけ他とは違うと言うのは私的に嫌だった。
もちろん断られたら、3日目と4日目はみんなで観光するつもりです。
先生……!?……美香ちゃんは何か考えているらしく、私は美香ちゃんのことを待つことにした。
―――――――――
「3日目なら今答え出さなくていいんじゃない??」
そう言って、外の景色から目線を二人の方に向けて私は提案をした。
なんとなくだけど、美香ちゃんがここまで譲ろうとしたり、気を遣ったりするのは、私や凪ちゃん、翔くんの為だけにやっている、と言うわけではないと思っている。
なぜなら、初めて美香ちゃんに会った時は敵意剥き出しで翔くんに近寄らないでと言うオーラが全開だったから。
…………翔くんは鈍ちゃんだから気がつくことはなかったと思うけどね。長い間気がついてもらえない。そう思ったら、美香ちゃんがかわいそうだと思った。
凪ちゃんですら最近は信頼しきって、美香ちゃんがもしかしたら……と言う考えを捨てているように思う。
私も美香ちゃんのことは信頼しているし、出会った頃よりかは仲良くなったと思っている。
だが、それとこれとは話は別!
美香ちゃんがもしもだけど、翔くんのことを好きで独り占めをしようと考えた場合、美香ちゃんなら簡単に翔くんのことを独り占めにできてしまうのだ。
私はもちろん凪ちゃんでも、手も足も出ないと思う。
いくら気持ちで負けてないって言っても、一緒にいる時間だけは絶対に勝てないから。
ってそんなことを言っておきながら、私の予想が合っていて美香ちゃんが翔くんに対して本気で悩んでいるのなら助けてあげたいし、3日目のデートだって今ここで決めないで、しっかり考えてから決めて欲しいと思った。
…………好きな人が目の前にいるのに、何もできず、楽しそうにしている姿を眺めている辛さは私が一番知っていると思うから。
その苦痛を旅行に来てまで味わって欲しくはなかった。
全く関係ないことだけど、これだけは言わせて欲しい。
…………凪ちゃん、もう先生って呼べばいいじゃん。
―――――――――
「そうだね、美香ちゃんゆっくり考えていいからね」
美月さんの気遣いによって、3日目のスケジュールが保留になった。
正直に言うと、お兄ちゃんと一緒に周りたい。
もう旅行に来てしまっているのだから、気を遣っても今更だと思うし……これが素直な美香の思いだから。
…………でも、こんな状態でお兄ちゃんと2人きりって美香何するかわからない。
凪ちゃんの言い方的に、お出かけまで2人きりとか言ってなかったし、考えすぎかもしれないけど、部屋二つ取っといてよかったねって言ってたから多分、部屋すらも2人きりになると思う。
……本当にどうするべきなんだろう。
お兄ちゃんに対しての気持ちは誰にも負けていないと思ってる。
まず、負けたくなんかない。物心ついた時からずっと好きだったんだから。
これまでずっと我慢してきた。
花さんから始まり、今の今まで。
だけど、我慢するのが当たり前だと美香は思う。
血のつながっているお兄ちゃんを好きになる美香が一般的に変なのだから。
それに、どれだけ美香がお兄ちゃんを好きであろうと、お兄ちゃんが恋愛的に美香のことを好きじゃないことぐらいわかってる。
だからこそ適度な距離で、お兄ちゃんにとって1番の味方が美香であることを美香自身が望んでいたのだ。
やっぱりこれが美香にとって一番正解に近いものなんだと思う。人とは違う感性を持ってしまった美香に対しての……。
…………ってことで、これ以上考えても無駄!!3日目の予定なんてもう決まったようなものです!
「やっぱり、3日目はみんなで周りましょう。お兄ちゃんと2人きりはそれはそれで楽しいと思うけど、なんか勿体無い感じがするんで」
自分に対してため息が出そうになるけど、どうにかいつも通りに美香は美香を演じることにします。
―――――――――
ドキドキが止まらない。
ここまでドキドキしたことは一度もなかった思う。
僕は気付いてしまった。やっぱり一番好きなのは……だと。
家族というのが枷になっているのが本当に辛い。
どうしたらこの大きな壁を乗り越えていけるだろうかと必死に考えるが、答えを僕が知るわけがない。
答えを知っているのは………この世でたったの1人。
「…………今回も「連れ○の」は最高だった」
そう呟いて、本を閉じると残り5分で軽井沢に着くところまで電車は来ていた。
さぁ〜本格的に旅行が始まるぞ!と思いながら僕は固まった体を伸ばし降りる準備をするのであった。
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120読んで頂きありがとうございます!
次から本格的に旅行、観光に入ります。
応援、コメントいつもありがとうございます!
お陰様で総合PVが32万に行きました。
本当にありがとうございます!
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