複数視点

第115話  4月20日 現実との向き合い

 ※ここから、視点が複数になります。


「……僕たちの関係と宣戦布告?」


 僕にはよくわからなかった。


 わからないと言っても僕たちの関係を聞いてくる人は多いし、僕たちの関係についての質問なら理解できた。だが、宣戦布告については理解ができなかった。


「そう!よくわかってないみたいだけどそれはいいや。まずは君たちの関係を教えてよ」


 僕たちの関係……正直になんと伝えればいいかわからなかった。

 2人と付き合っているわけではないけど、到底友達だと言える仲ではない。もっと深い関係なのは僕じゃなくてもわかるだろう。


 その上で高橋くんに伝えられらることだと、僕の気持ちを伝えればいいのだろうか……いや、とりあえずこれだけを伝えておこう。


「友達だよ……まだ」


「まだ……か。なら少なからず古巻くんは好意がある中で2人と仲良くしているのか。それでどっちなんだい?」


 高橋くんの質問は止まらない。

 少しは僕に質問をさせてくれてもいいと思うんだけど。


 しかし、どっちとはどう言うことなのだろうか。

 僕は言葉の意味が理解できず頭を傾げた。

 だって、どちらかが好きなのであれば他の女子と一緒にいる事なんてしないだろう。


「どっちとは?」


「………………え?」


 次は高橋くんの方が意味がわからないみたいな顔を僕に向けて来た。


 話が噛み合っていなように思う……いや、噛み合っていないんじゃなくて僕と高橋くんの価値観が違うのかもしれない。


「まさか、2人のことが好きなのかい??」


「いけない事だとは分かっているけど、そうだね、僕は2人のことが好きだよ」


 言ってしまった……改めて言葉にすると、自分はダメな人間だなと感じる。


「そうなのか……僕からみるに古巻くんは中途半端なことをしなさそうな気がするし本気で2人のことが好きなんだろうな」


 ん?なんかよくわからないけど理解してくれたのかな?そう思っていると、高橋くんはさらに言葉を続けた。


「でも、それとこれとは話が違う。単刀直入に言おう。僕は夜行さんのことが好きだ。別に仲が良いわけではない。一年生の時に一目惚れをしてしまったのだ。初めてだよこんなの……何回も話しかけようとしたのに、ドキドキしてしまって話しかけられなかったなんて」


 高橋くんからは美月に対しての想いがよく伝わって来た。



 その瞬間、自分の心臓が波打つのがわかった。


 その波打ちがなんなのかはわからない。わからないけどその中に焦りが入っているのだけはわかった。


 なぜなら、高橋くんは今まで美月に告白して来た男子たちとは違い本気で美月の事を好きだと思っているから。


 美月のことを本当に好きでいる僕がわからないわけがない。


 僕はここに来て初めてわかった。

 正樹がわざわざ僕のところまで来て、高橋くんの噂を教えてくれた理由が。


 正樹は気付いていたのだろう。

 これで美月が高橋くんに取られた場合、花の時と同じことが起きると。


 僕はとても混乱している。好きな人をまた取られるかもしれないから。

 怖い。とても怖い。




「申し訳ない。古巻くんを困らせてしまったみたいだね。別に宣戦布告したからと言って古巻くんをどうこうするつもりもない。逆に同じ人を好きになったんだし仲良くなれたらなと思う。

 けど、これだけは言わせてほしい。どんなに古巻くんが、本気で2人のことを好きだったとしても、必ずどちらかを選ばないといけない時が来る。僕が言うことではないかもしれないけど、古巻くんが答えを出した時、片方は幸福に、片方は不幸になるだろう。彼女たちはそれをわかった上で古巻くんと一緒に居るみたいだけど、古巻くん自身が少なくとも好きな女性を傷つける覚悟はないといけないと僕は思うよ。

 という事で言うことは言ったし僕は帰るね。初めての関わりがこんな形になってしまったけど、仲良くしたいから来週もよろしくね」


「………………うん、」


 僕ができた返事はその一言だけだった。


 本当は何か返さなきゃいけないんだろうけど、返せるわけなかった。


 だって、高橋くんに言われて改めて気がついたから。僕がどれだけあの2人に失礼なことをしているのかって。


 美月が取られるかもしれない?怖い?なんてお門違いな考えなんだ。

 本当に僕は馬鹿だと思う。


 僕はまず、この中途半端な関係をやめて、2人のうちどちらかを選ばなくてはいけないのだ。






 高橋くんが去ってから数分後にいつも見たいな言い合いしながら、凪と美月が僕のところまで来た。


 いつも通り、話しかけようとする……だが、僕にはそのいつも通りができなかった。


 予定ではこの後カフェなどで買った本を読むことになっていたが、今日は家に帰ることにした。


 自分の事だけではなく、ちゃんと2人のことを考えた上で二人との関係のことを……自分の答えを考えるために。




 ―――――――――


 今日は、翔くんと凪ちゃんとで久しぶりの本屋さんに来ました。


 本を買うつもりはありません。

 まだまだ読んでいない本がいっぱいありますからね。


 だったら行かなくては良いじゃん!!と思うでしょ?実際凪ちゃんにも言われました。ですが、そんなの許しません!!凪ちゃんだけが誘われているわけではないですからね。そう易々と、凪ちゃんをデートに行かせないですよ。




 そんなこんなで3人で来たのですが、漫画コーナーに一人で行った翔くんと合流した時、翔くんは明らかに落ち込んでいると言うか元気がありませんでした。


 更には、カフェ行く予定をなくして、今日は帰るねと帰ってしまったのです。


 今は、凪ちゃんとゆっくり歩いて帰っています。

 こんな状況で、カフェに行くとはなりません。



「翔くんどうしたんだろう……一緒にラノベ見てた時はいつも通りだったのに」


 私たちが落ち込んでも始まらないので私は凪ちゃんに話を振ります。


「そうですね……私もいつも通りだと思うんですけどね」


 やっぱり凪ちゃんも翔くんの変化には気が付かなかったし、心当たりは無さそう……ってことは私たちが何かしたとかはないと思う。


「漫画コーナーで何かあったかね」


「そうですね。これは何かありましたね。翔斗くんが途中で帰るとか私されたことないですから」


「私だってないよ。私たちが!帰ったことはあるけどね」


「あはは、そうですね。あっ!でも本見てる時、高橋くんでしたっけ?同じクラスの男子が本屋さんから出るところを見ましたよ」


「そう……なんだ。高橋くん、か……」


 高橋くん…………最近よく耳にする名前でした。


 本当かどうかはわかりませんが、高橋くんが私のことを狙っているらしいのです。

 あくまで噂なので信じてはいませんが……。


 私からしたら、それが本当だとしても男子から告白されることは多々あるので気にしていません。


 そもそも、明らかに翔くんのことが好きだとわかっているのに声をかけるとか、それだけで私からしたら恋愛の対象にはなりませんよ。


「………………美月ちゃん??話聞いてます?」


「あ、え??ごめん聞いてなかった」


 今はそんなこと気にせず翔くんのことだけ考えないと。


「もう、ちゃんと聞いてくださいよ……それで、高橋くんが関わっているとかないですかね??今回のこと」


 やっぱりそう思うよね。前までならそんなことないよって言うんだけど、噂を聞いてしまったからには否定はできないんだよな。

 翔くんに話しかける理由にはなるし。ここは正直に凪ちゃんに言うべきかも。


 別に、高橋くんの噂が真実ではないし、告白されても受けるつもりないから話さなくていいと思ってたけど、もし高橋くんが翔くんに接触して翔くんがあの様になってしまったのなら解決に向けて話し合うべきだと思う。


「その可能性はあると思う。理由としては、最近噂されていることなんだけどね……」


 そう言って、私は凪ちゃんに噂のことを話した。


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115話読んで頂きありがとうございます!


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視点変わる際に名前など付けさせて頂きます!


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いつも読んで頂きありがとうございます。

これからもよろしくお願いいたします!





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