古巻視点

第114話  4月20日 蚊帳の外


 2年生になってから、約2週間が経過した。


 今日は日曜日なのだが、家の近くにある本屋に僕、凪、美月は訪れていた。




「本屋に来るの久しぶりな感じがする」


「たしかにそうですね。最近忙しくてこれてなかったですもんね」


「私は、結構本溜まってるから読まなきゃ……気になっている本あるんだけど、ここで買っちゃうとまた溜まっちゃう」


「じゃーなんできたんですか!家で本読んでればよかったのに!」


「いいじゃん!!私も翔くんと久しぶりに本屋に来たかったの!!!」


 あはは……僕から話振ったはずなのに……僕だけ蚊帳の外にされているのが辛い。


 二人の中慎ましく話す姿は絵になってそれはそれでいいんだけどさ。


「とりあえずここ入り口だから中入ろうか」


「「はぁ〜〜い!」」


 なんでここだけは息ピッタリなんだか……。

 そう思いつつ、新しい本を求めて僕達さん本屋に入った。




「お?」「え?」


 ライトノベルコーナーに向かった僕たちが最初に目にしたものは、小説ではシリーズ第8弾、さらには最近アニメ化が決定した作品だった。反応したのはもちろん僕と凪。


「連れ○の新刊出てるじゃん!


「連れ○の新刊出てるじゃないですか!?」


 そう、最初に目にしたものとは「連れ○の」の新刊だった。


 早速買う本が一冊となった僕と凪に対して美月は、


「え〜私だけ仲間はずれひどい〜〜」


 …………ふふ、美月よ僕の寂しさがよくわかっただろうっと言っても僕はほっとくなんてことはしないけどね。


「美月この本読んだことなかったっけ?」


「そうだね……まだこの本は読んだことがないや。どうしようかな……二人が見ただけでそんなに興奮する本なら私も読みたいな……」


「まず、買うなら1巻からだよ。今回のが8巻だから僕たちに追いつくとなると結構時間かかりそうだね」


「うわ……そんなに出てるんだ。じゃーもう買っちゃう!!今の本が読み終わったらとりあえずこの連れ○の全部読むね!」


 相変わらず美月の行動力には驚かされる。


 だとしても、凪だけではなく美月とも大好きな作品である「連れ○の」の話ができるのは僕的に嬉しいことだった。


 3人で話したら絶対楽しいもん!


「今度は私が蚊帳の外なんですけど……もう翔斗くんは私にだけ集中してください!!」


 結局誰かと話すと誰かが蚊帳の外になってしまう。何という負の連鎖なんだろうか。


 まぁ、僕自身二人が話している時に蚊帳の外になっていたとしてもそこまで嫌な気持ちにはならない。


 多分だけど二人も言葉に出すにしても、そこまで本気には思っていなと僕は信じている。実際二人仲良いしね!


「ごめんごめん。じゃーほかの本も探そうか!」


 僕たちは引き続き、今日買う本の物色を再開した。








「あれ?古巻くんだよね?」


 凪と美月がライトノベルを見ている間に、漫画コーナーへと来ていた僕は後ろから声をかけられた。


 振り返るとそこには茶髪で180cmはあると思われる高身長の男子が立っていた。


 年齢は僕と同じくらい。顔もめっちゃイケメン。


 …………ん〜誰だろう。僕にこんな友達いたかな??


「ん?あ、あの〜、え〜と……ごめんなさいどちら様ですか?」


 僕の名前を知っている時点で同じ高校なのだろうとは思ったけど、教室ではあまり凪と美月以外とは話さない。

 そのせいか、男子の名前と顔が未だに覚えられていなかった。


 …………これで同じクラスとかだったら申し訳ないな。やっぱり蔑ろにせず、覚えるべきだな。


 そんなことを思っていると、茶髪の彼は頭をぽりぽりしながら気まずそうに自己紹介をしてくれた。


「いや〜古巻くん、僕は一応同じクラスなのだけど。もう新しいクラスになってから1ヶ月経つんだし、名前と顔ぐらい覚えていてくれてもいいと思うよ……。僕の名前は高橋 京介たかはし きょうすけ。よろしくね」


 高橋京介、その名前を聞いて僕はついこの間、正樹に言われたことを思い出した。


 僕は忘れていただけでこの高橋京介と言う人のことを知っていたのだ。


 なぜなら……



 ―――――――――


 2年生になってから1週間が過ぎたお昼。


「翔斗!今日だけ俺とご飯食べようぜ」


 そう言って元気よく、正樹は教室に入ってきた。


 凪と美月と食べる約束をしていたけれど、その日は2人とも「たまには」と言ってくれたこともあり、正樹と食べることになったのだ。



「どうしたんだよいきなり。珍しいな、僕とご飯食べようとか」


「そんなこと言うなよ。別のクラスになって話すことも減ったんだし、たまにはいいだろう一緒には食べたってさ」


 実際誘われたのは少しだけだけど嬉しかった。

 最近はずっと凪や美月と居たからね。


「まぁ、嫌じゃないからいいけどね」


「…………なんだよそのツンデレキャラみたいなセリフ。気持ち悪いからやめてくれ」


「なんだよツンデレって、そんなつもりで言ってるわけじゃない」


「はいはい。わかったよ」


 なんてことを話しながら僕と正樹はお昼を一緒に過ごした。




 お昼があと15分ほどとなった時だった、正樹が真剣な顔付きで僕に話があると言ってきた。


 多分この話をするのが、今日お昼を共にする本当の理由なのかもしれない……と僕は思った。


「それで話ってなに?」


「あぁ、それでな、翔斗のクラスに高橋京介ってやつがいるだろう」


「ん〜居たかな〜わからないけどその人がどうかしたの??」


「おいおい、同じクラスの人ぐらいは覚えておけよ……高橋京介、そいつはこの学校で東條に次ぐ人気を誇るイケメンと女子の間で言われている人物だよ。まぁ、性格もいいし、運動も勉強もできると、全てが揃っているところを見ると東條を凌ぐ人物だと思うが……」


 東條と言う名前を聞いて懐かしい名前だと思ったが、今はなんでその高橋って人のことを僕に教えてきているのかと言うのが問題だった。


「それでその高橋って人が僕となんの関係があるの?」


「ありありだよ。その高橋って人が夜光さんを狙っているって言う噂が流れているんだよ」


「そうなのか」


「へぇ〜あんまり動揺しないんだな。まぁ、それだけ翔斗が自信あるって俺は受け取っておくよ」


「う、うん」


 正直、そこまで真剣になって話すことなのだろうかと思っていた。


 だって、噂だし美月は僕のことを好きだと言ってくれたからね。


 その時は……


 ―――――――――


「おーい、聞いてるか〜い」


「あ!?ごめんごめん、高橋くんか思い出したよ。まだ顔があんまり覚えられていないんだ。ごめんね」


「いいよそれは。それよりも今日は1人かい?いつものお二人は?」


「いや、一緒に来てるよ。2人はライトノベルコーナーに居ると思うから、用があるなら行ってみるといいよ」


「いや、それはいいや。僕が用あるのは古巻くん君だよ」


「え?僕?」



 この時、まだ僕は知らなかった。

 恋敵がいると言う意味がどんなことなのかを……。



「そう、君だよ。本当は週明けに話そうと思ってたんだけど偶然会えたからね、君に。今日は君たち3人の関係と宣戦布告をしに来たよ」


 そう言って、真剣な表情で高橋くんは僕のことを見つめた。


__________________________________________

114話読んで頂きありがとうございます。


ついに出てきましたね。


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