古巻&朝露&夜光視点
第109話 3月25日 それぞれのお引越し
1年の3学期も終わり、今日は新しい家へ引っ越す日となっていた。
もちろん荷物はまとめてある。段ボールだらけの家を見ると少しだけ寂しくなった。
3月1日、僕は凪と美月から呼び出された。いつものファミレスだ。
話の内容としては、4月から2人で同棲をすると言うものだった。
最初はびっくりした。凪の一人暮らしは知ってたけど美月もこれから一人暮らしをしなくてはいけないと知らなかったから。
更にびっくりしたのは同棲する場所が、僕の引っ越すマンションであり、僕の家の隣だったと言うこと。
少し嬉しい反面、2人の言い合いが増えるのではないかと心配になった。
美香に伝えると少しだけ考えた後、嬉しそうにした。
なんだかんだで、新生活は楽しくなりそうだ。
美香で思い出しだが、美香がどの高校にしたのか教えてくれない。
両親は知っているみたいだったが、やっぱり教えてくれなかった……。
「ね〜お兄ちゃん!ちょっとリビング来てー」
リビングからかはわからなかったが、美香から呼ばれた。
僕がいるのは洗面所。タオル類を箱に詰めてなかったため入れていたのだ。
「わかった」
手を止め、リビングに向かう……だが、リビングに美香の姿はなかった。
「おい、美香どこいるんだよ」
「お兄ちゃん!」
僕の後ろから声が聞こえてきた。
振り向くと…………そこには制服姿の美香がいた。
やっと発表してくれるみたいだ。
「お!!美香の高校の制……ふく??え……その制服、常磐高校……もしかして、」
「ふふ!ごめんね、今日まで内緒にしてて。本当はもう少し内緒にしようかなって思ったけど、お世話になったこの家で見せたいなって思ったの。どうかな、お兄ちゃんと同じ学校の制服……似合ってる?」
まさか美香が同じ高校を受けているなんて……それにしても、美香の制服はとても似合っている。
凪や美月に引けを取らないと思う。
「すごく似合っていると思うよ!!改めて受験頑張ったな!おめでとう!」
僕がそう言うと、嬉しかったのか涙目にしながら笑う美香。
「うん!ありがとう!4月からもよろしくねお兄ちゃん!いや……翔斗先輩!!!」
グハッ…………僕の心は大ダメージを受けたのだった。
―――――――――――――――
今日は引っ越しの日です。
予め荷物はまとめているので、やることがありません。
暇を持て余しすぎて、リビングの真ん中に座っています。
思い出してみると、この家では色んなことを学んだ気がします。
家事全般は一人暮らし始めてからやり始めましたからね。
2年ぐらいしか過ごしていないのに、やっぱり寂しさを感じます。
これからは美月ちゃんと同棲です。
1人という事は無くなりますが、家族としては1人になってしまいます。
嬉しい半分悲しいですね。
ぼーっと天井を見ていると、スマホのバイブレーションがなりました。
引っ越しの人からかな?と思いスマホを見ると、お母さんからでした。
「はい、もしもし……」
「おはよう……凪」
いつもよりお母さんの声は優しいものでした。
「どうしたの?」
「いや……今日が引っ越しの日だと思って」
やっぱりいつもの、当たりの強い感じがありません。
どこか悪いのでしょうか……。
「そうだね。今は引っ越し業者がくるの待ってる」
「うん……同棲すると言うのは見たわよ。良かったわね、1人じゃなくて」
同棲の話は、決まった時には伝えてありました。返信はありませんでしたけど。
「そうだね。相手の子には感謝しないと」
私がそう言うと、タイミングが良いのか悪いのかインターホンがなった。
今度こそ引っ越し業者です。
「あ、引っ越し業者来ちゃった……落ち着いたらかけ直すでも、」
「いや、それはいいわ。大した用事じゃないし……」
なんとも歯切れが悪い感じだったが、引っ越し業者を待たせる訳にもいかなかった。
「わかった。なら電話切るよ」
「うん。凪……本当に困った時だけは……連絡して来なさいね」
そういって答える暇もなく、電話を切られてしまいました。
お母さんの気持ちはとても伝わりました。
あの時の気持ちが伝わってくれていたようですね。
泣きそうになりましたが、それ以上に嬉しい気持ちでいっぱいです。
引っ越し業者に荷物を運んでもらっています。
荷物はあっという間に無くなりました。
後は私が出て、鍵を閉めるだけです。
もう一度リビングを見渡します。
悩んだこともありましたし、泣いたこともありました。良く支えてくれた家だったと思います。
私はこの家で一人暮らしをして良かったです。
「今までありがとう!行ってきます!!」
―――――――――――――――
「美月ーーーやっぱりお父さん寂しいよー」
引っ越しの日となりました。お父さん達より私の方が家を出るのは早いみたいで、それがダメだったみたいです。
急にお父さんが駄々をこね始めたのです。
「ちょっと、やめてよ。流石に気持ち悪いよ」
「グハッ……そんなこと言うなよ。娘と離れ離れになるんだぞ?」
幸せ者と思うべきなんですかね……私にはどうしたら良いのかわかりません。
こう言う時はお母さんっと思いお母さんに目をやると……。
「2回ぐらいしか会ってないけど、翔斗くんと会えないの寂しい。やっぱり私も翔斗くんの元に行こうかしら!うーん、それとも 連れて行っちゃう?どうしましょう」
こっちはこっちで頭がおかしくなっていました。
もうっ!!!もっと感動的な別れを想像していたのに。
同棲するまでがゴールではありません。ここからが本当の勝負になるのです。
まずは新しい生活に慣れることですが、翔くんにアピールもしていかないと……。
だからこそ、家を出る時はもっと明るく、応援されて出たかったです。
「もう私は行くよ。凪ちゃんと待ち合わせしてるし」
私がそう伝えて家から出ようとすると、2人とも先程の雰囲気が嘘だったかのように、真面目な顔になり引き留められました。
「美月、お父さん本気で言ってるわけじゃないからな。しっかりやるんだぞ。やると決めたら最後までやり通せ!遠くからだけど、応援してるから」
「うん……」
「翔斗くんのこと必ず手に入れるのよ。必ずよ。美月ならできるわ!翔斗くんのことだったら全然相談に乗るから。正々堂々、後悔しないようにやってきなさい」
「うん……お父さん、お母さん、今までありがとう!!後悔しないように頑張ってくる。次に会う時までに必ず家事とかできるようになるから。楽しみにしててね!…………行ってきます」
「「はい、行ってらっしゃい」」
私はお父さん、お母さんのことが大好きです!
2人が頑張れと言ってくれたんです。頑張らないわけがありません。
これから私が向かうのは敵地みたいなものです。
凪ちゃんは本当に強敵です。正直勝てるかと言われたらわかりません。
それでも私は諦めない。
2人からチャンスをもらったのだから必ずものにしてみせる。
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109話読んで頂きありがとうございます!
2章、本編はこれで終わりでございます。
次は番外編ですね、、、もしかしたらいつもより遅くなるかもしれません。ほら、、ね、心の準備が必要となりますので笑笑
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