夜光視点
第103話 2月1日 同じ人を好きになる覚悟
昨日私は凪ちゃんに話がしたいとファミレスに来てもらうようお願いをしました。
主に話す内容として、4月以降のことについて話す予定です――本当は凪ちゃんに言わない方が私に得があるのに。
私は、お父さんにお願いをして、翔斗くんが引っ越しをするマンション、号室を大和さんに聞いてもらいました。
お母さんとの約束は一人暮らしを自分でやれと言うものであって、翔斗くんの家を聞くのはダメとは言われてませんから。
そして昨日、お父さんから翔斗くんの引っ越し場所の詳しい情報を教えてもらいました。
調べたところお隣の家が空いていたので私もそこにしようと決めたのです――一人では大きい家ですが。
これで凪ちゃんよりも有利になる、そう思いましたが少しだけ罪悪感を感じました――お父さんの力を借りてしまったからです。
私は凪ちゃんに翔斗くんの情報を教えるべきだと思いました――正々堂々戦いたいと思っているから。
「と言う理由で今日は呼んだの……ごめんね」
凪ちゃんと合流した私は、経緯を説明した後スマホを見せて場所などを教えました。
「謝らないでください。私はそれをずるいとは思いませんから。それより、美月ちゃん一人暮らしするのですね」
そう言えば凪ちゃんに言うのを忘れていました。
「そうなの、実はね……」
私の親が海外に移住すること、私は残る判断をしたこと、全て凪ちゃんに話しました――
「なるほど……そんなことが」
「うん。そうなの」
「そう言えば、昨日翔斗くんに私の気持ちを伝えました」
あれ……まだ凪ちゃん、伝えてなかったんだ。
「まだ伝えてなかったんだ……凪ちゃんはとっくに気持ちを伝えていたと思ってた。そっか私とほとんど同じタイミングだったんだね」
「え?え?美月ちゃんはもう気持ち伝えていたんですか!?てっきりまだ伝えていないとばかり思ってました」
凪ちゃんってもしかして奥手なのかな?
「私はちょうど1週間前だよ」
「え?1週間前……私が翔斗くんの家に泊まった時だ……」
「え……翔くんの家に泊まった……」
ちょっとこれはお話する必要がありますね……。
「「それ、詳しく終えて」ください」
私と凪ちゃんはあの日、翔くんがとても忙しい1日を送っていたことを知りました。
「なんか……私たちって」
「うん……翔くんのことすごく振り回してるんだね」
クリスマスの時だってそうでした――私と凪ちゃんは翔くんを振り回してばかりいたのです。
「翔くん何も文句言わないもんね……」
「そうですね。全く気が付きませんでした……」
「少しだけ気を遣って行こうか……」
「そうですね……我慢できる範囲で」
初めて2人の意見が一致した気がしました。
そのタイミングで、頼んでいた料理が来たので2人で食べました。
2人ともステーキを注文しています。
こう言うところ似てるんだよな〜――不覚にも私はそう思ってしまいました。
「あの美月ちゃん、ちょっとお願いがあるんです……」
珍しいと思い凪ちゃんの顔を見ると、とても真剣な顔をしていました。
「私にできることなら……」
茶化すことも忘れてしまうぐらい凪ちゃんの顔は真剣です。
「私も4月から引っ越しをしなくてはいけないのですが、」
「う、うん……そうなんだ」
「はい。それで私と同棲しませんか?」
「うん……ってはい???同棲??」
凪ちゃんに言われた内容は私の理解の範疇を超えていました。
だって私たちが同棲しても意味なんてないから……。
「凪ちゃん、どう言う意味?私と同棲するメリットがあるとは思わないんだけど……それに私はお母さんとの約束があるし」
「メリットですか……翔斗くんが私たちの内どちらかを選んだとしても、ラノベが好きと言う共通の趣味を持つ3人の関係が崩れるずに済むというメリットがありますかね」
凪ちゃんはこれを本気で言っているんですかね……言っているなら頭が悪すぎると思うのですが。
「凪ちゃん……自分の言ってることがどう言う意味かわかって言ってるの?そんなのメリットなんかじゃない、デメリットだよ」
「なら聞きます。選ばれなかったら翔斗くんと友達をやめられるんですか?」
「違うそうじゃないよ。これはやめられるとかじゃなくてやめる努力をするべきことなの。どちらかが勝ってどちらかが負ける。それがこの関係の先にある答えでしょ。それなら負けた方は負けを認めて辛くたって関係を立つべきなの」
「そうだと思いますよ、私だって。でも、それはあくまで一般論であって私たちが当てはまるとは限りません」
一般論って……私たちだって一般論の中の一つではありませんか。
「私たちに当てはまらないとはどう言う意味?」
私が質問をすると、凪ちゃんの雰囲気が少し変わった気がしました。
もしかしたらここからが凪ちゃんの本当に伝えたいことなのかもしれません。
「美月ちゃんは翔斗くんが本当に私たちの内1人を選べると思ってるいるのですか?思っているのであれば美月ちゃんは翔斗くんのことを知らなすぎるし、見てなさすぎます」
なにそれ……ここまできてマウント取る気なの?
「どう言うこと?」
「翔斗くんは答えを出せるように頑張るって言ってくれましたけど、無理ですよ翔斗くんにそんなこと出来るはずがありません」
なぜそんなに言い切れるんでしょうか……私と凪ちゃんが見ている翔くんとはそんなにも違うのですか?
「なんで……なんで好きな人の言葉を信じてあげられないの?それでもよく翔くんのこと好きって言えたね、私たちのために努力するって言ってくれてるのに、なんなに悩んでくれているのに……」
「違います!好きだから、大好きだから翔斗くんに頑張ると言われた時、私は気付いてしまったんです」
気付いてしまった?……
「なにを……」
「この関係のことをです。翔斗くんは私たちのことを知り、その中で自分の1番を決めようとしてるんです……だから気付いてないんですよ、どちらか1人を選んだ時この関係が崩れることを」
「あぁ…………」
凪ちゃんの言葉に私は返す言葉もありませんでした――その通りだったから。
凪ちゃんが言いたいのは翔くんのことを信じる信じないの話ではなかったんです。
翔くんの人間性そのものの話をしていたんです。
先程も理解したばかりではありませんか……翔くんの優しさに、一度も振り回されていることに文句を言ったことがないことに……。
「理解できたみたいですね。私たちが好きになった翔斗くんは優しすぎる上に選ばれなかった方がどうなるのかわかっていないんです。もしかしたら少しだけ考えているかも知れませんが、重要だと思っていないと思います。私たち2人に対して平等に接するよう努力しようとしているんですから……」
確かに最初は凪ちゃんを優先していました――けれど今は週ごとに凪ちゃんと遊ぶ週、私と遊ぶ週と自然に平等になってしまっています。
「だから、私たちは覚悟をするべきです。どんなに気まずくても、心が痛んでも、翔斗くんの1人に選ばれても、選ばれなくても、翔斗くんがこの関係を理解せずどちらかを選んだ場合この関係を続ける覚悟を。そのために私は同棲するべきだと思うんです。本当に、2人と付き合える世の中ならこんなことしなくてもいいのにって思いますよ……」
ここまで聞いたら凪ちゃんの提案は呑むべきだと思いました。
私と凪ちゃんは
同棲する相手がライバルなのはお互い高め合えると思えばメリットになりますからね……。
「わかった……同棲する。でも、その前にやらなきゃいけないことがあるから、私のお母さんを説得すること。説得できなかったら同棲すらできないからね」
「わかりました。では今日のところはここで解散しますか」
そう言って私と凪ちゃんは別れました。
今日は凪ちゃんとの差を痛感したような気がします。
翔くんにアピールをするだけではダメだったのです。
もっと私は翔くんのことを知らなきゃいけない……そう思いました。
___________________________________________
103話読んで頂きありがとうございます!
凪ちゃんと夜ちゃん、仲は悪くなっていませんからね〜
コメント、応援、いつもありがとうございます!小説のフォロー、レビュー、して頂けたら嬉しいです。
よろしくお願い致します。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます