朝露視点
第101話 1月26日 翔斗くんも連れて行きたいと思います
私は昼休みを経て、翔斗くんに相談しようと思いました。
頼らないって決めたはずなのに……やっぱり頼りたくなってしまったのです。
今は学校も終わり、私の家に向かっています。
もちろん翔斗くんもいます。
先程、翔斗くんに初めて怒られてしまいました。
何気に怒られたのが1番落ち込みました……ヘコ凪です。
家に着いた私はお茶を用意してから早速話すことにしました。
「私、4月から家がなくなるの……」
「うん、ごめん、なんて??」
つい、笑ってしまいそうになりました。
口が悪いと思われるかもしれないですが、翔斗くんがアホみたいな顔をしていたからです。
「もう一度言いますね、3月いっぱいでこの家を出て行かなきゃいけなくなりました。なので私は4月から家がなくなります」
「わかった……それは理解したから、なんでそうなったのか教えてくれる?」
「わかりました」
私は、お母さんとの約束のこと、お父さんと実の母親についてのこと、全てを翔斗くんに話しました。
「そんな事が……」
「そうなんです」
翔斗くんを見ると、手に力が入っている事がわかりました――私のお母さんに怒っているのですね。
「それで……凪はこれを納得しようとしてたわけ?」
「そうですね……もう何しても結果は変えられそうにないですから」
私がそう言うと翔斗くんは急に立ち上がりました。
「そうじゃないじゃん。凪は本当にそれでいいと思ってるわけ?確かにもう決まっている事だし変えられないのかも知れないけど、凪の気持ちは違うじゃん」
翔斗くんの言いたい事はわかります。私だって翔斗くんと同じ意見だから。
「わかりますよ。翔斗くんの言いたいこと、わかります。それでも私の気持ちを伝えても、変わらないお母さんを見る方が私は悲しくなるし嫌なんです」
「そんなの言ってみないとわからないじゃん」
「翔斗くんは私のお母さんにあった事がないから言えるんです。私は今のお母さんになってから一度もお母さんと呼ばない日はありません。実の母親でなくてもお母さんと思っているからです。
今は、距離を取られているのに私だけ距離を縮めようとしているのが嫌で距離を取り、話さないようにしていますが、私は一回くらい娘として扱ってほしいと思ってるんです」
少し口調が強くなってしまいました。
翔斗くんとこうして言い合うのも初めてな気がします。
嫌がられなきゃいいのですか……そう思い翔斗くんを見ると翔斗くんは笑っていました。
「な、なんでこの状況で笑っているんですか」
私は翔斗くんに怒りを覚えました――これも初めての事です。
真剣に話している中、笑っている事が馬鹿にしていると私は感じました。
「ごめん、ごめん。てっきり諦めているのかと思ったけどそうじゃないってわかったらなんだか嬉しくなっちゃったんだよ」
言っている意味がわかりません。
「ど、どう言う事ですか……」
「凪はお母さんに娘として認めて欲しい。今そう言ったじゃん。それが今凪が納得出来ていない答えじゃないの?」
何が答えだと言うんですか……。
「いや……そんな事お母さんに伝えたって何も変わら……」
「そうじゃないよ」
翔斗くんに言葉を遮られてしまいました。
「お母さんに伝わるか伝わらないかじゃないの。凪が凪の気持ちを口に出すか出さないかが重要なの。
凪はあの時もそうだった……初めて2人で出かけ時も。凪は何かを悩んでいたよね、でも最後まで口には出さなかったよ。あの時はたまたま僕だったから、凪のことを理解しようと勝手にしていた僕だったから凪の悩んでいる事が間違っているってわかったんだ。でもね、凪のことを理解しようとしない人には一度でもいいから口に出さないと伝わらないんだよ」
「…………」
言葉が出ませんでした……。
翔斗くんが言っていることは私に当てはまる事が多かったから……。
初めてお母さんがお母さんとなった日、私は何も声をかけなかった――歓迎していたのに。
翔斗くんと初めて出かけ時、私が思っていることを言わなかったからすれ違いが起きそうになった。
クリスマスイブの時だって、翔斗くんから指摘されなかったらずっと自分の気持ちを言わなかったと思う。
私は全部行動をしないで勝手に先を読んで諦めていたんです――口にしないと何も始まらないって言うのに。
「伝わったみたいだね」
翔斗くんを見ると呑気にお茶を飲んで「アチッ」っと言葉をもらしています。
感謝したいのにこれでは出来ないじゃないですか……今日の翔斗くんには本当に、おこ凪です。
「ありがとうございました。翔斗くんのお陰で分かった気がします。土曜日にお母さんに会うので気持ちを伝えて来ますね」
お母さんに響かなくてもいい、伝わらなくてもいい。
私がお母さんに伝えられたと思えるならそれでいいんです。
あ、でも1人ぐらいは私の意見に賛成してほしいので……
「うん!頑張って来な」
「いや、翔斗くんも一緒に行くんですよ?私に勇気をくれたんです最後まで責任とってください」
「え……なんでそうなる?」
翔斗くんも一緒に連れて行きたいと思います。
ふふ、わがまま凪――久しぶりな気がします。
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101話読んで頂きありがとうございます。
翔斗くんと凪のお母さん大丈夫かな、、
コメント、応援いつもありがとうございます。
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