古巻視点

第100話  1月26日 凪の話を聞こうと思う


 昨日の夜、僕の家に来なかった凪だが、次の日の朝には家の前で待っていた。


「凪、おはよう」


「翔斗くん、おはようございます。昨日は少し忙してくて夜行けなかったです。連絡出来なくてすいません」


 どうしたのだろうか……凪の元気が少しだけ無いように感じる。

 顔もこっちに向けてくれないし。


「いや、大丈夫だよ。お母さんはなんて?」


「お母さんは……少しだけ私の様子を伺っただけみたいです」


「そ、そうなんだ」


「はい。駅で美月ちゃんが待っていると思いますし、行きますか」


 そう言って話を終わらせ、凪は歩き始めてしまった。

 凪は僕に嘘を付いている気がする。

 お母さんに少し様子を伺われただけなら、そんな辛そうな顔をすることないだろう。




 僕は凪の様子が昨日の午前中とは明らかに違うことも合り、お母さんとの電話で何かあったのだろうと思った。


 今日中に話を聞いてあげられればいいんだけど……。






「やっぱり居ましたか―――」


「居たら悪いの?」


「いいえ、別に」


 2人の会話は、いつも通り――。

 僕の勘違いだったのかと思ったが……先に歩く凪の姿を見て、どうも勘違いには見えなかった。






 授業が始まると凪が隠し事をしていることは確信へと変わった。

 先生から指名されても凪はどこか上の空で話を聞いていないことが多かったのだ。


 何かあったのなら、僕に相談してくれればいいのに――それとも僕には言えない事なのだろうか……。


 僕は凪が困っていたり、悩んでいたりするのであれば少しでも支えになりたいと思っている。

 僕が辛い時支えてくれたのは凪だったから……。

 僕も凪が困っているのであれば支えてあげたいと思う。


 今のままでは良くないと思うので、昼ごはんの時にでも聞いてみようと思う。







 お昼になった。


 凪と話すため中庭でお昼を一緒に食べようと誘ったところ、案外簡単に了承してくれた。

 僕と話したくない訳ではない事がわかったのでホッとしている。



「学校で昼ご飯を2人で食べるのって久しぶりじゃない?」


「そうですね。最近は美月ちゃんを含めた3人で食べる事が多かったですし」


 会話は普通にしてくれるけど、全然こっちを見てくれないな。


「凪――お母さんと何かあった?」


「それは……朝話したじゃないですか」


 僕は少しだけ怒っている。


 凪は僕にとって好きな人でもあるが、一番大切だと言える親友以上の存在でもある――そして、2人で積み上げてきたものは、言いたくないのであれば言いたくないと言えるほどのものだと僕は信じていたから。

 僕が勝手に信じて、勝手に裏切られたと思っているのかもしれないけど、僕は凪に隠し事をしたいとは絶対に思わない。


「あれで僕が納得すると思ったの?」


「え……」


「僕には昨日凪にどんな事があって、今どんな気持ちなのかはわからない。それでも、今の凪の顔を見て何もなかったんだ、困ったり悩んだりしてないんだって僕が思う事はないよ。凪の事を一番近くで見てきたのは僕だと思ってるから……」


「う、うん……」


「話したくないなら話したくないでいいよ。僕は話してくれるまで待つから」


 今日初めて凪が、僕のことを見てくれた気がする。


「……話したく……ない訳じゃない」


「うん」


「今回のことは私自身のこと。結果ももう決まってる。私が納得さえすれば解決することを翔斗くんに相談なんて迷惑だから……」


「そんなこと思わない、迷惑だなんて思わないよ。」


「で、でも……」


 初めて凪と出かけた時だってそうだった――全部自分で溜め込んで、どうすることもできなくなってって凪にはそう言う一面があったじゃないか。

 どうして僕は忘れていたんだろう。


「凪が納得していないのにどうして結果が決まるの?確かに、テストの点数とかは納得していなくても結果は決まるよ。

 でも、自分自身のことなんでしょ?納得してないのに結果を決めるべきじゃないじゃん。結果が決まってたとしても納得を無理矢理するんじゃなくて、できるように行動してもいいんじゃないかな。

 凪がどんなことで悩んでいるのかわからないから僕にはまだこれしか言えない。嫌じゃなかったら話してほしい。僕は凪の力になりたい」


 このアドバイスが本当に合っているのかもわからない。

 もしかしたら、僕の想像を超えるものかもしれない。

 それでも、納得ができないならせめて納得してから結果を迎えてもいいと思うんだ。


 凪の過去に何があったとしても、今の凪を見捨てる事は絶対にしないし、僕は受け入れるつもりだ。




 僕のことを見た凪の顔は、先程までとは違いいつも通りに戻りつつある。


「……昨日からずっと考えていました。それでも、私にはどうすればいいのかわかりませんでした。だから翔斗くんに聞いてほしい、私と一緒にどうしたらいいか考えてほしいです。」


「うん、もちろんいいよ。一緒に考えよう」


 力になれるかわからないけど、少しでも凪の心が軽くなれば僕は嬉しいと思う。

 そのための一歩として、まずは凪の話を聞こうと思う。


___________________________________________

ついに100話!読んで頂きありがとうございます。


翔斗が凪の力になれることを祈ります!!


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よろしくお願い致します。









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