朝露視点

第99話  1月25日 お母さんとの約束

「とりあえず詳しいことなどは、今度直接会って話しましょう。そうね……土曜日に私の家まで来て頂戴。交通費ぐらいは払ってあげるから。じゃーね」


 そう言って、私の意見などは聞かず、一方的に電話を切られてしまいました。


「私の家」って――私の実家でもあるんだけど……。




 お母さんはこの話のことを約束と言いますが、こんなの約束でもなんでもありません。

 お母さんの独断で決められたことだからです。


 お母さんは本当のお母さんではありません。

 小学5年生の時、お父さんが再婚をしたことでお母さんになりました。

 実のお母さんは、もともと体が弱く私を産んだ時に亡くなってしまったとお父さんからは聞いています。



 別にお父さんが幸せになるのであれば、新しいお母さんができたとしても私はいいと思っていました。

 思っていましたが、お母さんは違ったみたいです。


 お父さんがいる時はとても優しくしてくれるお母さんですが、お父さんがいない時は人が変わったかのように私への態度が冷たくなります。

 冷たくなる時に必ず口にするのが、「本当、あの女に似てるわね……」この一言です。


 中学生にもなると流石の私にもその言葉の意味が理解できました。

 お母さんは私の実のお母さんのことを恨んでいるのです。

 理由は知りませんが、大体予想は付きます。


 中学2年生の時、お父さんが病気により亡くなりました。

 私はお母さんと2人っきりになってしまったんです。

 その時、お母さんから言われました。


「お父さんとの約束だから、貴方のことはある程度面倒を見るけど、これから貴方には別のところに住んでもらうわ。高校もその近くの高校を受けなさい。どうせあの女と一緒で頭もいいんだろうから、高校なんて楽に入れるでしょう。

 貴方がこれから住む家には、高校卒業するまでのお金を私が稼ぎ終わるまで居ていいわ。稼ぎ終わり次第あとはお金だけ渡すからその家を出て、貴方1人でやって行きなさい。わかったわね」


 これがお母さんの言う約束です。



 最初聞いた時は、なんでここまで嫌うんだろう、私はお母さんに何をしたって言うの、と思いました。

 必死に探しましたがわかりません。

 実のお母さんが原因なのかと思ってしまった日だってあります。


 お父さんが亡くなったことは、私の中でとても辛いことなのに、追い討ちをかけるようにお母さんは私に辛さを与えて来ました。


 どうして、私だけこんなに目に合わないといけないのか――私にはわかりませんでした。




 中学2年生の夏の初めにお父さんが亡くなり、夏の終わりには、今私が住んでいるこの家で一人暮らしが始まりました。

 実家からは電車で1時間以上も離れています。

 もちろん中学校だって……。

 私は一年半もの間、往復で2時間の道を通学したのです。


 一人暮らしに慣れてくると、お母さんから言われたこともそこまで辛くは無いのではないかと思い始めました。

 全然1人でも大丈夫だ、覚悟はできた、と私は思っていました。



 ですが……いざ言われるとなると、辛い物ですね。

 覚悟はできていたと思っていたのに……お母さんが頑張って仕事をしているのが、私と関わらないためと考えてしまうとどうしても辛いと思ってしまうのです。


 やっぱり辛い思いを我慢なんて出来るわけがないんですよ……。



 土曜日に私はお母さんに会いに行かなくては行けません。

 本当のところ行きたくはないです。

 辛い思いをするとわかってて行きたいとは思わないでしょう。

 お母さんに会いに行くくらいなら私は翔斗くんと一緒に居たいですから。



 翔斗くん……翔斗くんこういう時どうしますか??





 気が付けば外はもうすっかり暗くなっていました。

 相当長い時間考え込んでいたみたいですね。


 こうして1人でいる時間が久しぶりな気がします。


___________________________________________

99話読んで頂きありがとうございます。


凪ちゃん可哀想ですね、、



報告です。

近況ノートにも書かせていただきましたが、第7回カクヨムコンテストの中間審査を通過することができました。

これも、皆さまが読んで、評価をしてくれたおかげです。

本当にありがとうございます。


さらに、総合PVが25万を突破いたしました。

これからも頑張って行きますのでよろしくお願いいたします。



コメント、応援いつもありがとうございます。

小説のフォロー、レビューして頂けたら嬉しいです。

よろしくお願い致します。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る