古巻&夜光視点

第98話  1月25日 あの日の思い出 (下)

「翔くんの初恋っていつだった?」


 突然、美月から質問をされました。


 質問の答えなどもう出ているのに、すぐに答えることができませんでした。

 前に聞かれた時はすぐ答えられたのに……。






 ※付き合って3年が経ったある日のこと……

 ――――――――――――――――――


「翔斗の初恋っていつだった?」


「僕の初恋?」


「そうそう」


 花は時々、突拍子もない質問をすることがある。


「いきなりだね。どうして?」


「いや、特にないけど……気になっただけ」


 女子の、気になっただけと言う言葉は少しだけ恐怖を感じる。

 返答次第では喧嘩でも起きるのではないかと思ってしまうから……。

 言わないと言う選択肢を選んだ場合、状況は悪化するだけなので半強制的に言わなくてはいけないのだが―――


「5歳の頃だよ」


 よくわからないことで花は嫉妬することが多いからなるべく素っ気なく言うのを心がけた。


「そっか……なら私と会う前なんだ」


 花はとてもムスッとした顔をしていた。

 こうなるから答えるの嫌だったんだよな……。


 ―――――――――――――――


 なんかとても嫌なことを思い出してしまった気がする。

 頭から追い出すため、必死に僕は頭を振った。


「翔くん、大丈夫??」


「あ〜ごめんごめん。それで初恋だっけ?」


「そうそう」


 直接好きって言えたんだし今更だろ、素直に言えばいいんだよ。

 自分で自分に言い聞かし言うことにした。


「僕の初恋は5歳の時――みっちゃんにだよ」


 はっきりと伝えることができた。


「そう……なんだ」


 美月はそれだけ言って俯いてしまった。

 少しだけ耳が赤い気もするが……。




 ――――――――――――――――――


 あ〜どうしよ、どうしよ、どうしよう……勢いで初恋のこと質問したら、翔くんの初恋は私だった。


 となると、私たちは2度もお互い好きになってるってこと……こんなの物語の世界みたいじゃん。


「おーい、僕だけ教えて美月は教えてくれないのはずるくな〜〜い?」


 ずっと下向いているだけじゃダメですね。

 翔くんだって言ってくれたんだから。


「あ……ごめんね。翔くん……わ、私も初恋は5歳の時で、しょうちゃんなんだよ」


 どうにか言うことが出来ました。


「え?そうなの??僕たちはお互いに2回目ってこと?」


 翔くんも驚いていますね……今日は驚くことが多いです。


「そう……なるね」


「そ、そうなんだ。なんか不思議な気分だね」


 不思議な気分―――とてもしっくりくる言葉だと思いました。


「そうだね。なんだか、不思議な気分」





 その後も、翔くんとベットに寄りかかりながら話しをしました。

 肩と肩が触れ合うか触れ合わないかと言う距離を保ちながら……。


 翔くんと話していると時間はあっという間に過ぎています。

 美香ちゃんから『そろそろ帰る』と翔くんにメッセージが来たことにより時刻が17時を回っていることに気がつきました。


 もっと話したいことがあったのに……「今日は帰るか」と言って立ち上がる翔くんを見上げて私はとても寂しい思いになりました。


 それでも私は翔くんを引き止めることはしません。

 こう言う機会は、また作ればいいのですから。


「今日はわざわざ来てくれてありがとう翔くん」


「いや、僕の方こそ楽しかったよありがとう!」





 リビングに行き、お父さん、お母さんに挨拶をしてから翔くんは私の家を出ました。


「いいの?駅まで行くよ?」


 駅まで送って行くと言ったのですが、家の前でいいよと断られてしまいました。


「だって帰り1人は寂しいでしょ。僕は最寄りの駅で美香と待ち合わせして帰るからさ」


 本当に翔くんは優しい人です。

 やっぱり寂しいので、これだけさせてもらいます。


「わかった。ならここでバイバイだね……寂しいからこれだけさせて。えい!」


 私は翔くんの胸に飛び込みました。

 俗に言うハグと言うやつです!!!


 男子とハグをするなんて初めてで心臓の音がとてもうるさいですが、翔くんの体が気持ち良くてそれどころではありません。

 ずっと、していたいとまで思ってしまいます。


 流石にずっとやるのは迷惑なので、10秒ほどで離れます。

 離れたと同時に、羞恥心が私のことを襲います。

 もうこれは、お馴染みのあの手を使うべきですね。


「じゃー家着いたらメッセージ送ってね!待ってるから」


 それだけ言って、私はすぐに家の中に入りました。

 翔くんを1人残して……。



 ――――――――――――――――――


 美月にハグをされた……。


 急な事だったので、今も少し頭が混乱していますがこれだけは今の僕でも理解ができます。


 これは、初めて美月と出かけた日と同じではないか、と……。


 僕はまた1人で照れないと行けないのか……いつか絶対やり返してやる!と心に誓い僕は1人で駅に向かった。




 自分のお腹の辺りに感じた感触を思い出しながら……。








 1人で駅まで歩いている僕は、濃密な1日を振り返っていた――。


 そう言えば、凪から何があったかメッセージしますね、と言われたけどまだ来てなかったな……。

 夜ご飯の時にでもこっそり聞いてみよう。





 無事に美香と合流し、家に着いた僕だったがその日凪が家に来ることはなかった……。


___________________________________________

98話読んで頂きありがとうございます!


久しぶりの深夜投稿!!だと思う。


夜ちゃんのハグ、、、羨ましい。

私もしてほしい。



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