夜光視点

第97話  1月25日 あの日の思い出 (上)

 私は今、とても幸せです。

 独り占めとまではいかないですが、翔くんに好きと言って貰えたから……。


 好きと言う気持ちも改めて伝えることができました。

 好きだとわかってもらった上でこれからアピールしていくことになりますが、私はチャンスだと思っています。





「それよりもさ!しょうちゃん!」


 しょうちゃんと呼んだ時、少しだけ顔が赤くなる翔くんが私は好きです。


「どうしたの急にその呼び方……」


「せっかく再開した?のかわからないけど再会したんだからさ昔の話しようよ!」


「まぁ……久しぶりだしね。そうしようか」


 素っ気ない感じで話す翔くんも好きです!

 好きが止まらない私は初恋は翔くんだったと伝えたく、思い出話しをすることにしました。





「覚えてる?私と翔くんが初めて会った場所」


 最近は幸せだったので、思い出すことはなかったですが、私の記憶の中にはしっかり残っています。


「そりゃ〜覚えてるよ。お父さんの釣りについて行った時の場所でしょ」


 翔くんも覚えていてくれたみたいです。


「翔くんのことだから忘れてるのかと思ってたよー」


「僕のことそんなふうに思ってたの?」


「ふふ、冗談ですよ」


 翔くんとこうして話していると、話すことに必死だった自分が懐かしく感じます。




「あの時の美月は人見知り凄かったよね」


 確かに、あの頃の私は人見知りが酷かった記憶があります。


「よく覚え……てるね……」


「まーね。初めて声かけた時、"いやっ"て言われたの覚えてるもん」


「なっ……もう〜恥ずかしいから人見知りの話はいいですー」


「あはは、仕返し、仕返し!」


 悪戯している子供のように笑う翔くん。

 私との会話を楽しんでくれているのがわかって嬉しいです。




 そう言えば私はいつから人見知りじゃなくなったんだっけ―――小学校の頃には治っていた記憶がありますが……。



 ――――――――――――


「いやっ!!」


 みっちゃんはとても恥ずかしがり屋です。

 知らない子が話しかけてくるととても恥ずかしくなって、つい、いやって言っちゃうから。


 …………みっちゃんも遊びたかったのに。









 今日、みっちゃんはパパと釣りに来ました。

 釣りが何かはわかりませんがパパが楽しそうにしてたから一緒に行くことにしたの。


「おーい!大和、久しぶり!そっちの方が早かったか……待たせたか?」


「久しぶり孝宏。いや、俺らも今来たとこだぞ」


 やっと着いたと思ったら、パパが急に知らない人と話し始めました。

 知らない人がいる時はパパの後ろに隠れます。

 みっちゃん大きい人は怖くて嫌いだからです。


「そっか、ならよかった。おっ!そこにいるのは翔斗くんか?」


「ああ、そうだよ。ほら、翔斗挨拶しなさい」


「は、はじめまして。古巻翔斗です」


 パパと話している人の後ろからみっちゃんと同じ年くらいの男の子が出てきました。


「ちゃんと自分の名前が言えて偉いじゃないか。よしよし」


 あっ……あれはみっちゃんが好きなパパのよしよし。

 あの子だけパパからよしよし……ずるい。


「パパ、パパ、みっちゃんによしよしは??」


 みっちゃんがパパにそう言うと、パパと話していた人が話しかけて来ました。


「おや……そこに居るのは噂に聞く孝宏のお嬢さん、美月ちゃんかい」


「ひぃ……パパッ!!」


 怖くて、またパパの後ろに隠れます。

 おじさん、みっちゃんの名前なんで知ってるの……怖い。


「ごめんな、大和。美月は絶賛人見知り中なんだ……」


「なるほどな。まぁ、普通はそうだよな。人見知りしない翔斗が珍しいと思うよ」


「美月よしよしして欲しいなら、しっかり挨拶しなきゃダメだぞ」


 …………いつもなら、よしよししてくれるのに。


「……夜光……美月……5歳です」


「よろしくね美月ちゃん。僕はね、古巻大和って言うんだ。やまとおじさんでも呼び方はなんでもいいからね。

 そして、この子は古巻翔斗。美月ちゃんと同い年だから仲良くしてあげてね」


「う……うん」


 やまおじちゃん……優しそうだった。

 怖い人じゃないのかも……


「よくできました。はい!よしよし!」


 みっちゃんがしっかり挨拶できからパパがよしよししてくれた。

 パパのよしよし、気持ち良くて好き。






「そろそろ始めようか。翔斗、あそこの砂浜なら危なくないし遊んできていいからな」


「はーい。じゃあ僕、砂浜で遊んでくるね」


 砂浜……みっちゃんも遊びたい……


「美月も海行くか?」


「みっちゃんもい……」


「一緒に行く??」


 みっちゃんが行くって言おうとしたら、砂浜の方に行こうとしてたしょうとくんが声をかけて来ました。



 みっちゃんはママに、よく恥ずかしがり屋さんねって言われます。

 いつもママに恥ずかしがり屋さんねって言われるタイミングでは、みっちゃんの顔は熱くなります。


 今、みっちゃんの顔はとても熱いです。

 恥ずかしがり屋さんになってしまったみたいです。




「いやっ!!」


 本当は行きたいのにいやって言ってしまいました。

 みっちゃんにいやって言われたせいで、しょうとくんは悲しそうです。


「あはは、振られちゃったな翔斗」


「ごめんね、翔斗くん。美月は恥ずかしがり屋さんなんだ」


「うん……。大丈夫」


 しょうとくんは1人で砂浜の方に行っちゃいました。

 みっちゃんは悪い子です。

 行きたいのに、いやって嘘ついちゃったから……。




「パパ……みっちゃん悪い子……」


 パパはみっちゃんの言葉を聞いてコショコショ話しをしてきました。


「美月は翔斗くんと遊びに行きたいのか?」


「……う、うん。行きたい」


「行きたいのに、嘘ついちゃったわけだな?」


「うん……だから、みっちゃん悪い子……」


「でも、翔斗くんは砂浜についてないぞ?今追いついたら嘘じゃないんじゃないか?」


「そう……なの?悪い子じゃない??」


「そうだよ。まだ、悪い子じゃないぞ。転ばないよう気をつけながら行ってきな。翔斗くん喜ぶと思うよ」


「うん、わかった!みっちゃん行ってくる」


「はい!行ってらっしゃい!」


 転ばないよう気をつけながら、しょうとくんに追いつけるよう走りました。






「しょうとくん」


 みっちゃんが名前を呼ぶとしょうとくんはとても嬉しそうな顔をしてくれました。


「ごめん……なさい。みっちゃんさっき嘘ついた」


「うそ??」


「うん……嘘ついた。だからごめんなさい」


「う〜ん。いいよ!その代わり今度はいやって言わないでね」


「うん。言わない」



 ―――――――――――――――




「確かに、こんな事あったね……あまりいやって言われた事なかったから悲しかったんだよね」


 やっぱりあの顔は悲しい顔だったみたいですね。




「いやって言われたあと僕たちどうやって遊んだんだっけ?」と翔くんが聞いて来たので、私の覚えている範囲で話をしたのですが……想像以上に恥ずかしいものでした。


「5歳だとこんなものでしょ」と翔くんは言いますが、わかっていても恥ずかしいものは恥ずかしいのです。





 ここまで思い出しても、結局いつ人見知りが治ったのかは思い出せませんでした。


「確かさ美月、一緒に遊んでる時僕に質問したよね?」


「質問???」


「そうそう、保育園でみんなと遊ぶにはどうしたらいいのかって質問」


 ん〜したような、しなかったような……あまり記憶にないです。


「それで、翔くんはなんて答えたの?」


「確か、僕には声かけられたじゃんって言った気がする。今思えばなんの答えにもなってないよね……あはは」


 そんな事はないと思います。

 翔くんにとっては何気無いない一言でも、当時の私からしたら誰かと遊ぶために声をかけると言う行為が出来ていたことを気付かせてくれていたと思うから。

 当時の私ならそう思う、となんとなく思いました。


 やっぱり、私が人見知りを克服できたのは翔くんのお陰みたいですね。





 中学一年生の時、小学生の時の自分を恨んだことがあります。

 なぜ、誰とでも仲良くしないで、しっかり友達を選んで作らなかったのかと……。


 今思えば、自分を恨んでしまったからこそ立ち直ることができず、心からの友達を作ることができなかったのでは、と思いますが――。





「そんなことないよ。翔くんは気付いてないかも知れないけど、翔くんの言葉で救われた人は居るんだよ。だから翔くんからしたら答えになってなかったとしても当時の私からしたら100点満点の大当たりだったと思う」


「そ、そうなんだ……もしそうなら、なんか照れるね」


「えへへ。そうだね、照れるね――しょうちゃん、ありがとね」


「え?なんでお礼?」


「別に、今の翔くんにお礼を言ってるわけではないもんね!」


 私は5歳の頃のしょうちゃんに向けて言ったのです。


「そうなんだ……なら、みっちゃんどう致しまして」



___________________________________________

97話読んで頂きありがとうございます。


いやぁ〜みっちゃん視点書くの難しすぎます笑

手入れをしてたら更新遅れました笑


次の古巻視点で今回の夜ちゃんイベントは終わりです。




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