古巻視点

第44話  11月13日 僕はどうしたらいいんだ。

文化祭当日を迎えた。


「そろそろ始まりますね」


「そうですね。楽しみです」


僕たちは毎朝恒例の図書室で本を読んでいた。


「あ、私行きますね」


「うん!僕も後から行くね」


今日は早めに集まらなくては行けないので、チャイムがなるより前に出ます。





「では、今日から二日間よろしくお願いします。

決められた時間にだけしっかりここを見ているように、頑張りましょう!」


僕から一言だけ言って、あとは開始の合図を待つのみとなった。



ピーンポーンパーンポーン


"あ、あ、あ、マイクテストー入ってますね

では、これから常磐高校文化祭を開始します。くれぐれも羽目を外しすぎないよう楽しみましょう"


文化祭実行委員長の放送が合図となり文化祭は始まりました。


続々と出て行くクラスメイト。


「じゃー私は図書室で待っているので、翔斗くんは迎えに来てくださいね」


そう耳元で凪は囁いて出ていった。

本当に心臓に悪いからやめてほしい。


「うん。じゃーまた後でね」


そう言って僕たちは一旦わかれました。


本当は最初から一緒に巡る予定だったのですが、

クラスの展示物を見張る係をくじ引きで決めた時、僕が一番を引き当ててしまい、最初の30分、僕は教室に残らないと行けなくなったのでです。



「あ、古巻くんよろしくね」


「あ、夜光さんこちらこそよろしくお願いします」


そう、よりにもよってクラスの男子が引きたがっていた、あたり2枚のうちの僕は一枚を引いてしまったのです。僕的には朝露さんだったらもう少し心が楽だったのですが……


「夜光さんも運が悪かったですね」


「そんなことはないよ?だって最初に終われるし。

翔斗くんと……ですし」


最後の方は声が小さくて聞き取れなかったけど、嫌がられてるとかはないみたいで安心した。


それからはなんだかんだ見に来る人がいたのであまり会話をせずに30分を過ごした。



「お待たせ」


「あれ、もう30分経ちましたか……早かったですね」


僕は凪の待っている図書室に向かい合流しました。

まずは2年生のところから行こうと決まったので向かいます。


「夜光さんとは何かお話したのですか??」


急にどうしたんだろうと思いながら、


「んー特に話してないけどな。文化祭はどうするんですかとかかな?たわいのない会話だよ」


「そうですか……よかったです」


「う、うん」


何がよかったのだろうか。



「朝露さん。そろそろ2年生エリアですが最初何から行きますか??」


少し周りの視線が痛い……

特に男子からの嫉妬の目が……


「そうですね……最初はあれ行きますか!」


周りの視線など全く気にした様子のない凪が指差したのは、1回目の実行委員の集まりでものすごく熱弁にプレゼンしていたクラスだった。


[とても怖いお化け屋敷]


定番だなと思いながら、


「いいよ」


そう言って入ることになりました。


一応腕には実行委員の腕章をつけているので、凪とは実行委員で巡っているのだろうとみんなには思われている。


「はい、次の方どうぞ〜」


僕たちの番が来ました。


入ってみると案外雰囲気がありました。


「結構ちゃんとできてますね」


みんなといる時用の話し方で凪に声をかけると、


「……」


返事が返ってこない。


「ん?朝露さん?」


そう言って後ろを振り返ると、

凪は立ち止まっていた。もしかして……


「もしかして朝露さん怖いの?」


「!!……そんなことありません」


あー絶対怖いんだろうな、と思いました。


「じゃー早く行きますよ。クッ…先に行っちゃいますからね」


「あ、今笑ましたね。待ってください……」


そう言って凪のペースに合わして僕たちは進んでいきました。




「はぁ〜〜〜怖かった〜」


「やっぱり怖かったんじゃないですか」


僕がそう言うと、


「もー翔斗くんは意地悪です」


プイッと拗ねられてしまいました。

しれっと、僕のこと名前で呼んでしまっているし……


「ごめんごめん。ほら、じゃー次行こう」


そう言って僕たちは次に向けて歩き始めました。


次に入ったのが[ドキドキ迷路]


入る時受付の男子からの舌打ちが聞こえた気がしたが……


何故かこの迷路は女子が前、男子が後で入らなくてはいけないルールとなっていた。


……なんか嫌な予感がする。


僕の予想通り、途中から屈まないと進めない場所が出てきた……


これ、凪は何も知らずに行くんだろうな……

ドキドキ迷路ってドキドキするの男だけじゃないか、僕がそう心で呟いていると、案の定、凪は入って行こうとしていたので、


「朝露さん、そのままだと見えちゃうよ」


僕がそう言うと、


「え?……翔斗くんは変態ですね」


そう言って隠された……僕教えてあげたんだけどな。

どっかからまた舌打ちが聞こえた気がする。



そのあとは順に二年生の出し物を回っていきました。



「朝露さん。そろそろお腹空きませんか?それにもう少ししたら見回りの時間ですし」


「そうですね!そうしますか」


僕たちは三年生が出している食べ物エリアへと足を踏み入れました。


僕が買ったのはたこ焼き、凪が買ったのは焼きそば

2人で食べるコーナーにて食べていると……

凪がずっとこっちを見てきます。


「どうしたんですか?」


「あ、いやなんでもありませんよ」


そう言ってはいるがどう考えても僕のたこ焼きを見ていた。


「たこ焼き食べますか?少し飽きてきたので」


僕が聞くと、


「あ、いらないんですか??それは勿体無いですね。私がもらってあげます」


そう言って、僕のたこ焼きを一つ掻っ攫っていきました。普通にほしいと言えばいいのに……


なんかまたどっかから舌打ちが聞こえた気がします。



昼も食べ終わり、ちょうど13時になろうとしていたので、僕たちは本当の見回りを始めました。



1日目は16時に終わりとなっている。凪は15時30分から30分が見張りになっているのでこの見回りが終わったらあとは帰るまで凪とは分かれることになります。





無事、見回りも終わり凪はまだ早いですが教室に向かっていきました。僕は1時間暇になってしまったので、

学校に用意されている休憩スペースで暇を潰すことにしました。



「「あ、、、」」


そして、僕が一番会いたくない人に会ってしまいました。


「花……」


「翔斗……」


本当に最悪です。今日一日とても充実していたのに……何故ここで会ってしまうのだろうか。


僕は無言で引き返そうとしました。この人と一緒にいることだけは僕自身が許せなかったから。


すると……


「待って……」


そう声をかけられて僕は思わず足を止めてしまいました。


「なんですか?」


あくまで初対面という態度で接せることにした。


「そんな敬語なんて使わなくてもいいじゃん……」


「用がないのなら僕は行きますね」


そう言って、僕が休憩スペースを出ようとすると、


「なんか変わっちゃったね……翔斗」


は?この人は何を言ってるんだろうか……

僕の中に、久しぶりの怒りが湧いてきました。

何が変わったねだ……そう思った僕は気づいたら振り向いて言ってました。


「…が変えたんだよ……」


「え?」


「花が変えたって言ってるんだよ」


「いや……それは」


「いやってなんだよ」


ダメだ、僕はこの人といるだけで、イライラしてしまう。


「私だって、色々あったんだよ……」


「なんだよ……色々って。なんで被害者ぶってるんだよ。四年も付き合っておいて、浮気して、謝りもせず僕のことを捨てて、それで私にも色々あったんとか言われたって知っことじゃない。花が誰と付き合っていようが、誰に振られようが俺には関係ないんだよ。だから」


だからもう関わらないでくれ。そう言おうとした時、


「もう別れたんだよ」


そんなことを言われた。


「だからなんだよ……花が別れようが別れまいが関係ないの。僕はもう関わりたくないんだ。それに知ってるよ、どうせ捨てられたんだろ。捨てられたから戻ってきました。そんな都合いいと思うなよ」


「違うよ!!」


「何が違うって言うんだよ!!」


こんなに怒鳴り合うなんて僕の人生では初めてだった。こんな姿、絶対凪には見せたくない。僕はもう花の事なんてなんとも思ってないんだ。そう思っていると……


「私から振ったの。翔斗と別れて、新しい人と付き合ってから私は気づいたの。私はその人のことが好きだった訳ではないと……そしてやっぱり翔斗が好きだって」


「……」


僕は言葉が出なくなった。もう吹っ切れたはずなのに、少しだけ心が高鳴ってしまったから。


「私がやったことは本当に最低だと思ってる。翔斗を傷つけてしまったこと本当にごめんなさい……こんなんで許してもらえるなんて思ってない。翔斗は私のこともう嫌いかもしれない。それでも私は気づいてしまった、翔斗が一番好きだと。この1ヶ月翔斗と離れたからこそ私は気づいたの。だから許して貰うまで謝る。友達とすら思ってもらえないなら友達になるまでこれから話しかける。翔斗に私の気持ちがわかってもらえるまで私はもう諦めないから……」


僕はわかってしまった。幼馴染で4年間一緒にいたからこそ、これは心からの言葉だと。心から僕に謝り、心からやり直したいと言ってることを……だけどそんなんで許せるはずがない。僕がどれだけ辛い思いをして吹っ切ったと思っているんだ。


「そんなこと言ったって許せるはずがないだろ。僕は友達に戻るつもりもないし、必要ない。僕にもできたんだ……心から一緒に居たいと思う友達ができたんだよ。大切なんだ。その人との時間が。今更邪魔をしないでくれ。もう、話しかけないでくれ」


「翔斗……」


僕はそう言って、無理やり休憩スペースから去ったのであった。



文化祭が終わった後、今日は凪とは帰らなかった。

メッセージには「ごめん今日は先に帰る」とだけ伝えて……その後に凪からは「わかりました。教えていただけるなら明日教えてください」とだけ返信がきた。



その日はもう、何もやる気が起きなかった。


なんで今更なんだよ……


なんで浮気をする前に気づかなかったんだよ……


なんで別れてから気づくんだよ……



僕の頭の中でそれだけがずっと繰り返される。

だけど、花の言葉がずっと僕の心に残ってしまっている。それがさらに僕を腹立たせる……


でもこれだけは確信を持てた。花のことはもう好きではない、と……だけど、もしかしたら友達として戻れるのではないかと思ってしまっているのだ。

僕はわからなくなっていた。



もう……僕はどうしたらいいんだ。


___________________________________________

44話読んで頂きありがとうございます。


ものすごく迷いました。翔斗に花と呼ばせるか、お前と呼ばせるか。

悩んだ挙句翔斗がお前というのは何か違和感があったので、花にしました。


もしかしたら思っていたような展開ではないかも知れませんが、許してください。


お知らせです。近況ノートでもお伝えしましたがTwitterを開設しました。呟いたり、投稿報告をしたらするつもりです。質問とかも受け付けておりますので、よかったらフォローしたください!


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本当にありがとうございます。

そしてこれからもよろしくお願いいたします。


誤字脱字報告もありがとうございます。

なくなるように頑張ります、、

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