第10話 10月7日 僕はナンパをしてよかったと思いました。
「「え???」」
僕と朝露さんは同じような反応をした。
少しの沈黙の後最初に話すことができたのは僕だった。
「お、おはようございます。」
少し噛んでしまった恥ずかしい。
朝露さんもすぐに挨拶してくれた。
「おはようございます。古巻くん。」
うわ、苗字までつけてくれた。
僕はそれだけで嬉しくなったが、今はそれどころではない。今彼女はどこから出て来た?いやそんなのわかっている。毎朝、絶対金持ちが住んでいるんだろうなと思いながら見ていたマンションから朝露さんが出てきたのだ。
と、言うことは僕と朝露さんはお向かいに住んでいることになる。こんな奇跡起こっていいものだろうか。僕そろそろ死ぬのだろうか。
だが、ここで黙っていても何も面白くない話しかけよう。
「えーと、朝露さんこ、こ、このマンションに住んでいたんだね……」
おい僕なんで噛むんだよ。平常心平常心。
「そ、そうですね。それよりもこの立派な一軒家が古巻くんのご自宅だったとは……こんなこともあるんですね。うふふ」
あ〜〜可愛い〜〜…………
じゃなくて何かしら言わないと。
「でも今まで会わなかったのは逆にすごいですよね。一回ぐらい会ってもいいと思うんですけど。」
「確かにそうですね。でも私基本的にこの時間に学校行くのと、終わったらすぐに帰るので会わないのもわかる気がしますね。基本的に買い物以外家から出ないので」
「なるほど、僕も基本買い物はしないですね。
妹の方がしてくれているので」
よしとりあえずは普通に話すことができてるみたいだ。なんだかんだ昨日話したこともあって朝露さんの方もそこまで警戒とかはしてなさそうだし。
「まぁー立ち話もあれなんで、朝早いことですし一緒に学校行きますか??……あ、全然その一緒に行きたいからとかではなく、いや行きたくないとかでもないのですけど……」
僕は何が言いたいんだよ……
「うふふ 相変わらず面白い人ですね古巻くんって。どうせ図書室でお話するんです、一緒にいきましょう」
こうして僕はら一緒に学校へ向かうことになったのだが……
「……」「……」
昨日はあれだけ話したのに会話がない。
いや……でも、そこまで嫌な感じはしないな。
なんか話さなくてもそこまで気にならないな。
2人無言のまま最寄りの駅までの道のりを進む。
「あ、そういえば今日発売ですよね。「○れカノ」」
朝露さんからそう言われた。
「そうですよ!!僕はもう駅の本屋さんに予約しているんで、今日取りに行く予定です」
「え??そうなんですか?私……何もしていないです。こんなに「○れカノ」好きとか言っているのに……」
あれ?僕なんか変なこと言っちゃったかな??
あ〜あれか、作品に対する愛が足りないと思ってしまったのかな……
「いや、朝露さん予約して発売当日に買うことだけが好きの大きさではないので気にしなくていいと思いますよ」
「ですが……やはり古巻くんを見ると私の「○れカノ」の愛はそこまでなのかと思ってしまいますよ」
朝露さんも落ち込んだりするんだな。
落ち込む内容はあれだけど……
「なら一緒に買いに行きますか?発売当日に買いさえすればそんなに変わりませんし」
僕がそう言うと、朝露さんは目をキラキラさせながら言いました。
「是非!行きたいです。お願いします」
あ〜〜幸せ。僕はそう思うのであった。
それから僕たちは駅につき同じ電車に乗り、
まだ朝早いこともありガラガラの席に隣り合わせで座る。
こんな日が来るとは夢にも思わなかったな。
花と付き合っていた時なんてもっと想像できなかっただろうな。
僕自身、この4年間を通して、彼女と言う存在はいないとダメなんだと思っていた。何かをすることに対しても彼女がいることにより目的が作りやすかったのを覚えている。
だからこそ別れた時は、何もかも失ってしまった。これからどうやって生きていけばいいんだっと思ってしまった。
だが、蓋を開けてみたら、好きな人がいなくたって、彼女がいなくたって、やっていけることがわかった。元に僕は朝露さんと言う趣味を共有できる友達ができてから全く花のことを思い出さなくなった。
それに、心も体も今はすごく軽い。楽になった気分だ。
僕は振られてから彼女を作らなければと焦っていたけど、今はどちらかというと彼女を作らない方が人生楽しいんじゃないかとも思う。
僕はもう彼女はいらないのかもしれないな。
そう結論つけようと思った時。
朝露さんが僕のことを見ていたことに気がついた。
……ものすごくガン見している。
「どうしたんですか??朝露さん……」
「あ、いやすいません。古巻くんがずっと難しい顔をしていたので、私何かしてしまったのかなって」
僕は朝露さんに心配をかけてしまっていたようだ。
「いや、そんなことありませんよ。少し花のこと、いや彼女と言う存在について考えていたんです」
「彼女と言う存在についてですか?」
「はい、なんて言いますか……最近まで僕には彼女がいたわけじゃないですか、」
なんか朝露さんにこんな話するの恥ずかしいんだけど……
「はい……」
「それで、僕に彼女と言う存在が居なくなった時、喪失感、虚無感などに襲われたんです。大袈裟に言うとこれからどうやって生きていけばいいんだろうって思ってしまいました」
「そんなに……ですか。私は好きな人ができたことがないのでわからないですが、」
「はい……でも僕の中ではそれほど4年間一緒にいた彼女の存在とは大きかったんだと思います。中学一年生の時から共に過ごしていましたから。僕にとって何をするにも彼女と言う存在がいた気がするんです。だからこそそれを失った時、僕は何を目標にして生きていけばいいのだろうって思ってしまいました。
ですが、昨日朝露さんと出会い。趣味の話をしていた時僕はすごく楽しくて、それに心が楽だったのを感じたんです。だから僕は彼女と言う存在はいらないのではないのか、そう思いました」
「先ほども言いましたが……私には好きになった人がいないので詳しいことは言えないのですが……
私的には彼女と言う存在がいらないというのは少し違うと思います」
「そうなんですか??」
「はい……私的には、古巻くんがそう感じでしまうのは、逆に彼女を大切にしていたからだと思うんです。
そうじゃないと、別れたぐらいでこれからどうやって生きていこうなんて思いません。それに私は、彼女のことを大切にすること自体何も間違っていることだと思いません。逆にそれは相手が幸せだと感じるべき事だと思います。だから、そう言った気持ちを持っているのに、それを自ら捨ててしまうのは勿体無いと思います。今は私と趣味の話をしていれば気が紛れていいのかもしれないですが、またいつか好きな人ができた時絶対その考えでは後悔すると思います。なので古巻くんの彼女を大切にする気持ちだけは残して置いてほしいと私は思います。そして古巻くんが彼女にしたいと思う人がくるまで私は古巻くんと趣味の話をし続けるつもりです……あ、大丈夫ですか?」
「え??あ……」
僕はいつのまにか涙を流していた。なぜ涙が流れたのかはわからない。最近は泣きすぎてもう涙なんか出ないと思っていたんだけど……朝露さんの言葉が僕のこの4年間を肯定してくれた気がして、僕自身やってきたこと何も無駄じゃないと言ってくれている気がして、とても嬉しくて幸せな気持ちになった。
そして、次好きな人ができるまで私の趣味の相手をしてくださいと言われて、心が楽になった。急がなくていいからゆっくり次に進んでくれと言われているような気がして……
僕は、2日目にして朝露さんと出会えたこと、友達になれたことがほんとによかったと思った。
そして僕は本当に日曜日、朝露さんに
ナンパをしてよかったと思いました。
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10話読んでいただきありがとうございます。
今回は少し早い気がしましたが、翔斗にとって凪が、凪にとって翔斗が大切な友達となれるようにしました。ですが、これは友達としてでありますので決して今回の回で翔斗が凪に恋をしているわけではないです。よろしくお願いします。
それよりも、pvやレビュー、小説フォロー、応援、などたくさん増えてきてほんとに嬉しいです。沢山の方にこの作品を読んでもらえていること、皆さんにお届けできていることがなによりも嬉しいです。これからも頑張っていきますのでよろしくお願いします!
コメントしていただいた方ありがとうございます。そしてもっといろんな方たちとこの作品についてでも他の作品についてでも語り合いたいです。コメントお待ちしております。
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