第130話

久々に聞いた奏の声は、懐かしさもあってか以前にも増して癒される声だった。

毎日聞いていたときは当たり前だと思っていたが、こんなに心地よく喋り方も可愛いことを再認識したし、この声に惚れたし好きだった。

俺は正直に気持ちを奏に話した。

アカウントを消したのは思い出が詰まり過ぎていること、イラストは二人の夢の為だったし奏が応援してくれたから頑張れていたこと、連絡しない毎日は苦痛でしかないこと、嫌いな部分を探しても喧嘩になった理由しか出てこなくて嫌いになれないこと、奏がいないと死にたくなるくらい喪失感があるからある程度立ち直るまで支えて欲しいことなど…弱い自分をさらけ出した。

奏は「今は誰とも付き合う気はないぐらい恋愛に疲れたし、この先もまことさんとよりを戻すことはないから支えることは無理」と気持ちいい程ハッキリっと答えた。

奏での気持ちが無いのに下手に優しくしても良いことにならないって考えも理解はできる。

もう奏の中に俺が居ないのは、行動に現れていた。

デートした時に「忘れたしミサンガ送るね」って言ってから一ヶ月近く経っていた。

もし奏が俺がプレゼントしたコフレを使ってくれていたら使うたびにミサンガ送らないとって思い出すだろうが届くことは無かったからだ。

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