第9話

初めて俺の枠にエミーが来たのだ。

突然の登場に俺は嬉しさの反面、焦りを感じ不安でいっぱいになった。

当たり前だが、俺はエミーの声を何十回も聞いていたが、エミーが俺の声を聞くのは初めてだ。

つまり、何の前触れもなく俺の声の審査が開始されたのだ。

エミーも俺も動画配信ではなくラジオ配信者、判断基準は声が生理的に受け入れられるかどうかが一番重要な審査ポイントだ。

俺は女性に人気の喋り声からイケメンの顔が想像できるような魅力的な声の「イケボ(イケメンボイスまたはイケてるボイスの略)」でも幼い少年のような声という意味の「ショタボ(ショタボイスの略)」でもない。

間違いなく、俺の声は下水道のように汚い声をしているという意味の「ゲスボ(ゲスいボイス)」だからだ。

審査結果は、直接言われることはほぼないがコメント回数や滞在時間である程度判断できる。

不快な声の枠でコメントしようとも思わないし聞きたくないから直ぐに枠から出ようとするからだ。

俺は処刑台で結果を待つ気分だった。

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