第129話
「昨日の敵は今日の友。クラウン帝国とアルピーヌ共和国だぜ」
戦争を始めそうな四か国を止めるため、参加国を増やしたいとグロリア様がおっしゃると、サファリ様はエルグランド王国に攻め込んできたクラウン王国と、それを支援していたアルピーヌ共和国を上げました。
なぜよりによってその二国なのでしょう。
「サファリ、いくらお前が長く遊んでいたからといってもクラウン帝国が我が国を攻めて来た事は知っているはずだ。アルピーヌ共和国も同罪だが、なぜその二国を引き込もうと思ったんだ? それとしゃべり方はいつも通りに戻せ」
「あ、うんわかった。理由は簡単だよグロリア兄様、クラウン帝国とアルピーヌ共和国は共にアフトヴァース国の小麦に依存しているし、アルピーヌ共和国はワズ国からトウモロコシを輸入しているんだ。だから戦争が始まったらとんでもない打撃を受けるんだよ。特にクラウン帝国はウチとの戦争に負けて賠償金も払ってる最中だから、これ以上の出費は戦争どころか国が崩壊しかねないんだ」
「待ちなさいサファリ、クラウン帝国は小麦を作っているはずよ? アフトヴァース国に依存しているはずがないわ」
「それは五年以上前の話だよシーマ姉様。最近は不作が続いて小麦は壊滅状態さ」
「ま、まってサファリ兄様、私めの情報でもその様な事実は認められませんわよ?」
「いいえ、サファリお兄しゃまの言う通りでしゅ。クラウン帝国はここ数年で小麦の生産が激減し、他国からの輸入に頼っていましゅ」
「ローレルも僕と同じ情報を知っていたのかい? 凄いね」
「待つのだお前達。サファリとローレルが同じ情報を持っているのなら間違いないだろう。だが肝心なのはそこではなく、あの二国が我々に協力するのか?」
「わたちもそれを知りたいでしゅ。どうしてサファリお兄しゃまは味方に出来るとおもったのでしゅか?」
「理由は簡単さ。今あの国は我が国への侵略とプレアデス
「あ……私とローレル様の宿の放火ですか?」
「そうだよ、シルビアとローレルが泊まる宿を放火したのはクラウン帝国の使節だっただろう? その情報はあっという間に広がってさ、逆恨みされるくらいならと手を引く国・商人が次々に出てきたんだ」
確かにあの事件はあちこちに波紋を呼びました。
実行犯の女性は……まだプレアデス
クラウン帝国としても放火犯を擁護できず、返還の手続きはしていないのだったかしら。
「じゃあ……上手く弱みに付け込めれば……こちらの言う通りに動く……って事?」
「言い方が悪いよセドリック。僕達は苦しんでいる国を助けてあげるだけさ」
物は言いようですね。
でも味方になってくれるかもしれませんが、それ以外にも問題はあります。
「ウチは反対や。あんな国と手を組むなんてまっぴらごめんや!」
「俺も反対しますよ。クラウン帝国の盗賊がどれだけ我が国に入り込んでるか知っていますか? 今月だけでも盗賊の半分がクラウン帝国がらみなんだぞ! しかも国はそれを止めようともしていないんだ!」
ステージア様とミストラル様は反対の様です。
それも当たり前でしょう、自国を攻撃した国を簡単に許す事など出来ません。
しかしサファリ様がそれを思い付かないとも思えませんが……
「OKOK、君達の気持ちもわかるよ。ステージアは戦争で商売に影響が出たし、ミストラルは戦前から苦労しっぱなしだね。でもとても便利な魔法があるんだけど、知ってる?」
サファリ様の言葉に、この場にいる全員が首を傾げます。
便利な魔法? お二人の気持ちを収める魔法でしょうか。
「クラウン帝国内にも反戦派がいるみたいだよ」
その言葉にほとんどの人が目を見開きます。
クラウン帝国は過去に何度もエルグランド王国に攻め込んでいます。
それが国策だとでも言わんばかりに。
しかし反戦派が居るのなら……
「なるほど、確かに魔法が使えるかもしれないな」
「それにしても帝国に反戦派がいるなんて、少しはマシな人間がいるのね」
「クラウンとの問題もいっぺんに解消できるという訳なのだな」
「う~ん、それならまぁ……我慢してもエエよ」
「四か国の問題を解決するつもりが、六か国の問題を解決できるわけですわね」
「ああん? おいどういう意味だ? 俺にわかるように説明しろや」
「ふん! 気にくわないが解決出来るのなら妥協しなくもない」
「それは……凄いアイディア……だね」
「流石ですサーお兄様!」
「他国の情報で負けたでしゅ……」
王子王女はバネット様を除いて理解できたようです。
エクシーガ大司教とヒミコ様も大きく頷いています。
「じゃあ満場一致だね。役割分担なんだけど」
なんと、すでに計画まで出来上がっていたようです。
あれ? 私が教えたはずですが、いつの間にか追い越されていませんか?
「よし、では第一王子グロリアが命じる。クラウン帝国とアルピーヌ共和国を懐柔し、そののちに反対派連合に使者を送る!」
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