第128話
「僕は……シルビアの……シルビアの夫としての力を……振るいたい」
リック様は私の目を真剣なまなざしで見つめてきます。
シルビアの夫……私の夫? 夫って聞き間違いじゃなければ夫婦になるって事よね? リック様が
ああ、ちょっと待ってください、そんな、そんな目で見られると吸い込まれてしまいそうに……あ、あれ? 私は今何をしてるんでしたっけ?
「あ、あの、リック様、リック様? あ、と、えっと」
ぜ、全然頭が回りません!!
リック様が私を? 私とけけけ、結婚をしたいという事ですか!?!?
「シルビア……少し落ち着こうか……?」
あわわわ、リック様の顔が近づいてきます!
このまま口づけをするんですか!?
と思ったら私の肩に両手を乗せて、トントンと優しく叩いてくださいました。
あ、口づけじゃないんだ……ってそうではなく!
あら? 私は何を考えていたのでしょうか。
「申し訳ありません、少し舞い上がってしまいました」
「ごめん……少し急……だったね」
「い、いえ大丈夫です」
「返事は……今すぐじゃなくていいから……落ち着いて考えて欲しい」
「ありがとうございます。あの、今回の件が終わったら……でよろしいでしょうか」
「わかった……じゃあ学友として……王子として力を貸すよ」
「ご協力、感謝いたします」
「うん……なんでも言ってね」
リック様がお勤めする商店を離れましたが、私は今だに興奮が収まりません。
どうしたんでしょうか私、今までも他の男性から冗談でプロポーズされた事はありますが、こんなにパニックになった事はありませんでした。
それに胸のドキドキが……止まりません。
「は! いけないいけない、今は四か国の戦争回避に全力を向けないと!」
それから王族御兄弟や他の貴族も交え何度も話合いがありました。
戦争回避には反対連合の言い分を聞くことが一番早いですが、それでは参加希望連合を蔑ろにする事になり、ソコに遺恨が残ります。
なので良い落としどころを見つけなくてはいけません。
そして十日ほどが過ぎた時、援軍が到着しました。
「あら、いい大人が雁首揃えて何をしているの?」
茶色い髪で床まで届きそうなロングヘアー、一見優しそうな顔ですが気の強さが見え隠れしています。
青いアオザイを着たスタイルの良い女性が会議室に入ってきました。
「いやですわシーマお姉様。いくら本当でも兄弟姉妹を無能呼ばわりですの?」
髪は生え際から首辺りまでが水色で、そこから足首まで伸びる部分は銀色のストレートの女性がその隣に立っています。
隣国に嫁いだシーマ様とディアマンテ龍王国の大使をしているパルサー様だ。
この御二人がどうして? その疑問にはグロリア様が答えてくださいました。
「ようやく来たと思えばそれか。鳥を飛ばしてから来るまでに時間がかかり過ぎだ」
「女には準備が必要なんですもの。男の様に呼ばれて当日に出るなんて出来ません」
「本当に。グロリアお兄様はデリカシーに欠けていていますわ」
どうやら御二人を呼んだのはグロリア様の様です。
しかしお二人はグロリア様に対して容赦がありませんね。
「ほぅ? ではしっかりと準備が出来たんだな?」
「当たり前です。王太子はすでに私の意のまま、そしてかの四か国の情報は持ってきました」
王太子というのはシーマ様が嫁いだ先の王子様の事でしょうか。
意のまま、という言葉は聞かなかった事にしましょう。
「では会議に参加しろ」
卓を囲んでいる私達の輪に入り、大きな地図が置かれたテーブルの上に丸められた紙が転がされます。
「コレに欲しがりそうな情報が書かれているわ。まったく、この情報を仕入れるのには苦労したわね」
「シーマお姉様だけではありませんの。私もこれを用意しました」
シーマ様に続いてパルサー様も丸められた紙を転がします。
それをグロリア様とシルフィー様が手に取り広げます。
「ほっほぅ? まぁまぁ役に立つ情報だ」
「ふん、パルサーのはギリギリ及第点ではあるな」
グロリア様とシルフィー様は役に立つ情報を見たのか、少しにやけてお二人を見ます。
「当然です。それにいつでもエスクード連合王国を動かせる準備でできているわ」
「ディアマンテ龍王国は今すぐではありませんが、要請をしたら動ける手はずになっておりますの」
「うむ、二国の参加は単純に嬉しいな。他にも参加してくれる国が増えれば……」
「エルグランド王国とプレアデス
「それについてですが、もう二国ほど増やせるかもしれないぜ」
手を上げたのはサファリ様だ。
サファリ様は国外との繋がりは無かったはずだけど……?
「ほぅサファリ、どこが増えるんだ?」
「昨日の敵は今日の友。クラウン帝国とアルピーヌ共和国だぜ」
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