第127話
グロリア様、シルフィー様、ローレル様のみならず、プレアデス
なんて心強いのでしょうか。
一人で走り回っていた時と違い、これほど安心できるなんて思いもしませんでした。
しかし一つだけ譲れない事があります。
シルフィー様は兄弟を全員呼び出してまとめて話をするとおっしゃいましたが、私は自らの口で皆さんにお話をしたいのです。
なので今日中にエルグランド王国にいらっしゃるご兄弟に会いに行きましょう。
「シルビア、そういう事はもっと早くに言ってくれないと困るよ」
第四子三男のサファリ様にお会いしましたが、口に手を当てて困り顔です。
フワリと左右に分かれた茶色っぽい黒髪が風になびき、口を押さえた手で鼻の下の短い髭を撫でています。
「何とかお力を貸して頂けないでしょうか」
「だからシルビア、どうしてもっと早く言ってくれないの?」
「それは先ほど決まったばかりなので……」
「だ・か・ら! どうして一番最初に、グロリアお兄様やシルフィーお兄様より先に言ってくれないのさ! 僕はシルビアのお願いを一番最初にかなえてあげたいの!!」
そっちですか!? と思わず困惑しましたが、ここは素直に謝り喜んでおきましょう。
「申し訳ありません。なにぶん今の私はシルフィー様付きのメイドなのです。最初にお伺いをするのはシルフィー様となってしまいます」
と、少し照れた表情で答えます。
「あ、シルビアずっる」
「ほんとね。シルフィー様に付いてずる賢さを身に着けたわ」
「今の表情、ちょっとイイ」
「あら~、つまり聞きに来る必要すらなかったって事ね~」
側室の四人がからかうように口を開きます。
そしてサンタナ妃殿下がニヤリと口の端を吊り上げます。
「こういう時はどうしたらサファリが喜ぶか、シルビアはわかっているわよね?」
なるほど、アレですか。仕方がありません。
「こほん。私達はこれより参加希望連合と反対連合の戦争回避に向けて動き出します。サファリ様は私のフォローにまわりなさい!」
「「「「「イエス、マム!」」」」」
サファリ様だけでなく、妃殿下、側室までもが口を揃えました。
「ほほぅ? そら面白そうな話やな」
第五子次女のステージア様の商店の一室で、ニッコリ笑顔で机に両肘をつき、手にアゴを乗せています。
「ステージア様にもご協力をいただきたく参上いたしました」
「ふむふむ、あの四か国は前から気にくわんかったんや。あそこには資源が多い分横柄な商人が多くてな、あからさまにこっちを見下してくるんや!」
ニッコリ笑顔でしたが目元がピクピク痙攣しています。
ああ、随分と煮え湯を飲まされてきたのですね。
茶色い長めのサイドポニーに手ぐしを入れながら真剣な目で私を見つめます。
「まかしとき。ウチの商人として、王女としての力を全て貸したる!」
次は第七子四女のバネット様です。
「ああん⁉ お前そんな事よりも新しい剣術の技を教えろよ! ちっくしょう騎士団長のジジーめ、
少し薄めの赤い長髪をかき上げて、相変わらず鋭い? 怖い? 目付で私を睨みつけます。
「新しい剣術と言われましても、上級の上にはエキスパートもあるんですよ?」
「だから上級の範囲で新しい剣技を教えろ!」
相変らず衣装と同じで頭の中は傭兵、戦闘狂ですね。
どこから攻めましょうか……よし。
「バネット様、バネット様はご自身の傭兵団をお持ちですよね?」
「おうよ! あいつらはそんじょそこらの兵には負けやしねぇ。まだ銀閃流は門外不出だが、許可が下りれば全員に教えるつもりだ」
「あの四か国に強い傭兵は居ないんですか?」
「いるいる! 北海の
「戦力を削ぎがてら、ご自身の傭兵団にスカウトしてはどうですか?」
「のった!!」
次は少し憂鬱です、第八子四男のミストラル様です。
「ほほぅ? お前は俺にそんな事を頼める立場になったのか?」
青いマッシュルームヘアーが勢いよく広がる程に首を回し、ミストラル様は私を睨みつけてきます。
細身で背が高いので、ツカツカと歩み寄られると威圧感がスゴイです。
「何とかお願いできないでしょうか」
「ふん、お前なんぞに何ができる。俺達を利用するだけ利用して、やっぱりダメでしたとなるのが関の山だ」
「そうですね……ミストラル様がいたところで状況が変わるはずもなく……やはり他の優秀な方にお願いした方が成果がで――」
「お前っ! 俺が役に立たないと言いたいのか! ようし見ていろ、俺が誰よりも優秀だと証明してくれる!!」
第十子五女リーフ様。
「へぇ、面白そうじゃない。国内は安定して見えるけど、外部からの影響はどこまであるか見えにくいものね。いいわ、手を貸してあげる」
バルコニーでお茶をされていたようですが、どことなく寂し気な雰囲気が漂っています。
しかしどうしたのでしょうか、私は断られると思っていました。
「ありがとうございます。私はてっきり嫌われていると思っていましたので、断られると思っていました」
「あら心外ね、私は今でもあなたが嫌いよ」
「ではどうして」
「そんなの決まっているじゃない。私の感情よりも国を優先する、それが王族というものよ」
国の為なら嫌いな相手とも手を取る。
この方は立派な王女殿下だわ。
そして最後の一人です。
「やあ……待っていたよ……シルビア」
リック様は行商もしている商店で働いておいでなので、休憩時間を見計らってお邪魔しました。
「セドリック様、今私は大それたことをしようとしています」
「うん……」
「その為には皆さんの、セドリック様のご協力が不可欠なのです」
「うん……」
「何とか四か国の戦争を回避し、国内への影響を無くさなくてはいけません」
「そうだね……」
「私のような立場の者が言っていいのかわかりませんが、国の為に、そのお力を貸して頂けないでしょうか!」
「そうだね……それはセドリックの力を借りたいの……? それともリックの力?」
「私の持てる全てを使って取り組みたいのです。ですので学友としてのリック様、そして王族としてのセドリック様のお力をお貸しください!」
「ふふふ……二つの力だけで……いいの?」
「え? それ以外にも?」
「僕は……シルビアの……シルビアの夫としての力を……振るいたい」
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