第126話
会議が再開されましたが、小麦とトウモロコシの価格に折り合いがつかず、今回は保留という形の高い価格のままとなりました。
後日再調整となりましたが、その時もどうなるかわかりません。
統括的軍事同盟に加盟したい二国『ボフダーン国』と『ルーツィク国』は加盟できるなら価格は通常にするらしいですが、そうすると反対している二国『アフトヴァース国』と『ワズ国』が宣戦布告します。
統括的軍事同盟が二国の加盟を拒否したらアフトヴァース国とワズ国は価格を戻し、ボフダーン国とルーツィク国の価格が高いまま。
どちらの場合も戦争になる可能性があり、戦争になると小麦・トウモロコシだけでなく他への影響も出てきます。
なので解決策としては加盟する・しないに関わらず和解してもらうしかありません。
そんな魔法のような手があるのでしょうか。
そもそも統括的軍事同盟に加盟したい理由が、反対している二国との関係が悪化しているからです。
関係改善にはそこから切り込まなくてはいけません。
そんな事を考えていると会議が終わり、外交官たちはいくつかのグループに分かれて話を始めました。
私は会議に参加していた王族の末っ子、六女のローレル様に声をかけます。
「ローレル様、少しお時間よろしいでしょうか」
「シルビアしゃん? 大丈夫でしゅよ」
金色のフワフワカールのロングヘアーを揺らして立ち上がると、相変わらず眠そうな表情ですが歩みはしっかりしています。
会議場を出て近くの個室に入ろうとすると、なぜかグロリア様、シルフィー様、エクシーガ大司教にヒミコ様まで付いてきます。
「あ、あの……?」
「どうした、早く入らないか」
シルフィー様に背を押され、無理やり部屋に押し込められました。
小さな会議室に六人が入ったので少々手狭です。
イスは四脚しかないので私とローレル様が立っています。
「さて、ローレルと二人で何を話すつもりだったのだ?」
グロリア様が腕と足を組み、面白そうな顔でふんぞり返っています。
何をって言われても……
「ローレル様、あの四か国の国内の状況を教えていただけないでしょうか」
「四か国といいましゅと、アフトヴァース国とワズ国、ボフダーン国とルーツィク国の事でしゅか?」
「はい。その四か国が二つに分かれ戦争をする事は何としてでも阻止したいのです。しかし私には他国の新しい情報がありません。なので状況を教えていただきたいのです」
するとローレル様はチラリとエクシーガ大司教とヒミコ様を見ます。
あ、御二人がいるとこちらの情報を知られる事になってしまう。
情報収集能力を知られるのはまずいです。
「そうでしゅね、アフトヴァース国とワズ国、仮に反対連合と呼びましゅが、こちらの国は単純でしゅ。弱小国のワズ国はアフトヴァース国の支援なしには何もできましぇん。そしてアフトヴァース国は資源大国でしゅから、他国に対しても強く出れるのでしゅ」
安心しました。
今のところ当たり障りのない内容なので聞かれても問題はないでしょう。
「そして最大の問題でしゅが、アフトヴァース国は独裁国家といっていいでしゅ。国王制ではありましぇんが、ある貴族が何十年も国家元首になっていましゅ。それにより周囲の貴族は
「ちょ、ちょっと待ってください! その、そこまでの情報をこの場でいうのは」
「かまいましぇん。シルビアしゃんは情報を知りたいのでしょ? では次に加盟希望連合でしゅが――」
加盟希望連合は二国を合わせても大国アフトヴァース国にかなわないため、統括的軍事同盟に加盟する事で直接的な手を出させないようにしたかったようです。
加盟の交渉は水面下で進められていたようですが、それがどこかからか漏れてしまい今の状況になったのだとか。
各国民の反応として反対連合はとても冷静、逆に言うと無関心。
加盟希望連合は強硬的な意見が多いようです。
おや? 反対連合はどうしてそこまで統括的軍事同盟を嫌うのでしょうか。
この答えは単純で、統括的軍事同盟の主要国に犬猿の仲の国がいるからです。
そんな統括的軍事同盟が隣国に来るのは避けたい、という事でしょう。
「どうでしゅか? 知りたい事は知れましゅたか?」
「はい……私が頑張ったところでどうしようもないと……知りました」
国家間の事なので簡単な事など無い、それはわかっているつもりでしたが、この四か国の関係は単純そうに見えても過去から続く遺恨もあり、何かをしたから関係が改善する、なんてことはありえません。
せめて糸口が見つかればと思いましたが、こうなっていてはどうしたら良いのか見当すらつきません。
「シルビアさん、美しい顔が苦悶の表情になっていますよ」
エクシーガ大司教が私の前に来てかがみ、頬を優しく撫でます。
「私はあなたの味方です。あなたが苦しむ姿なんて見たくありません」
「でも……でも戦争を回避できないと、国民の生活にどんな影響があるか……」
「なら諦めるの? シルビアさん、あなたは私のライバルとしてもっと高みに登ってもらわないといけないの! さあ言いなさい、あなたの望みはなに⁉」
ヒミコ様が立ち上がり、私を指さします。
「戦争を……して欲しくない。でも私ではどうしようもない……」
「お前は存外頭が固いな。お前は今まで何をしてきた? 今まではお前ひとりの力でどうにかなっただろうが、それではダメな時、どうしたらいいのか思い付かないのか?」
「しかし……シルフィー様、私は……」
私は……もう一人じゃないんだった。
ポルテ元男爵の所にいた頃の様に一人で頑張らなくてもいい……?
私には助けてくれる人たちが……
顔を上げるとそこには私に微笑みを向けてくれる人たちがいる。
「皆さんお願いです。戦争を回避させるために力を貸して下さい!!」
「もちろんです! 我がプレアデス
「当然です! スリーヒルズ連邦のヒミコの名を持って」
「エルグランド王家、王子王女の力」
「「「「シルビアに全面的に協力しよう」」」」
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