第125話

 プレアデス教国きょうこくやスリーヒルズ連邦などと食料の話をするのですが……これがなかなか進みません。


 理由は単純で、友好国であっても自国の利益は確保しないといけないため、季節や国の状況により価格が変動しているのです。

 なので上手い妥協点が見つかれば良いのですが……


「ふぅ、このままでは進まぬな。少し休憩を挟むとしよう」


 グロリア殿下でんかの提案でしばしの休息がはいります。

 各国の代表が自室に戻る中、二名が私の元にやってきました。


「シルビアさん、少しいいでしょうか」


「シルビアさん、ちょっとよろしくて?」


 褐色の肌で目付が鋭く、白い髪は少々乱雑に切られているが後ろ髪の一束だけが長い。

 背はスラリと高く百八十センチを超えており、白い詰襟で肩には金糸で刺繍が施された男性、プレアデス教国きょうこくのエクシーガ大司教様。


 金髪の縦ロールで貴族の御令嬢に見えますが、とてもお化粧が厚くて……大人びて見える女性、スリーヒルズ連邦のヒミコさまだ。


 私はシルフィー様に確認を取るとOKがでたので、御二人とともに会議場をでた。

 そして会議場から少し離れた小部屋に入ります。


「シルビアさん、今回の会議だが少し様子がおかしいですね」


 エクシーガ大司教様が壁に背を持たれ、腕を組んでそんな事をおっしゃいました。

 

「ええ、私もそう思っておりました」


 ヒミコ様は近くにあった小さな椅子を手に取り、座りながらおっしゃいます。


「様子がおかしいとはどういった事ですか?」


「まず一つ、何か国かの外交官が交代しています」


「外交官が変わる事は珍しいのですか?」


「はい。年齢や不手際により更迭こうてつされる事はありますが、そう簡単に交代する事はないでしょう。しかも数か国も同時に」


「二つ目、小麦とトウモロコシの価格が高騰し過ぎているわ。特に外交官が代っている国の高騰が著しいわね」


「小麦とトウモロコシの価格が上がっている国……ああ、あの四か国の事ですね。あの国は小麦とトウモロコシの産出量が多いので、あそこが値上げをすると他国にも直接影響が出てしまいます」


 小麦やトウモロコシはどの国でも生産されていますが、広大な土地があり気候が適している場所だと生産量が跳ね上がります。

 なのでその四か国からは多くの国が輸入しているはずです。


「そして三つ目ですが……鉄の価格が微増しています」


「ええ、ゆっくりとですが上がっていますわね」


 鉄の価格が? 鉄の価格が上がる理由は色々ありますが、小麦やトウモロコシの高騰と併せて考えるとある事が思い浮かびます。


「まさか戦争が始まろうとしているのですか?」


 お二人がコクリと頷きます。

 エルグランド王国はクラウン帝国と戦争があり、まだ傷跡は残っています。

 四か国がどこと戦争をしようとしているのか、四か国同士で戦争をしようとしているのか、それもハッキリしていません。

 エルグランド王国が攻められる心配は少ないでしょうが、戦争の影響は少なからず受けるでしょう。


「我々が口で言う事は出来ますが、どうやら引けない所まで来ているようです」


「あの四か国、恐らく二国対二国の戦争になると思いますが、最近は国際機関への参加についてもめていましたわ」


 国際機関? あの四か国に関係がある機関というと……


統括的とうかつてき軍事同盟でしょうか」


「その通りです。二国が統括的軍事同盟に参加を表明した事で、隣接する二国がそれに猛反発し、参加するなら侵略行為と受け止め攻撃を開始する。と表明しました」


 元々は一つの大国だったのが、紆余曲折あって四つに分かれたんだったかしら。

 それがさらに戦争まで始めようなんて、元は兄弟のようなものなのに仲良くできないのでしょうか。


「なので統括的軍事同盟も戦争回避のために二国の参加を見合わせていますが、そんな中途半端な状態がいつまでも続くはずもなく、まさに一触即発といった状態なのです」


「戦争は……回避できないと?」


 この問いにお二人は何も答えません。

 回避は難しいようです。

 戦争はどこに影響が出るか完全な予想は難しいです。

 クラウン帝国との戦争は短期間で終わったので良いのですが、これが泥沼化したら目も当てられません。

 国民の生活にも影響が出て来るでしょう。


 これは何としても戦争を回避してもらわないといけません!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る