第122話
プリメラとの休日が終わり、本日からシルフィー様付きのメイドとなります。
今までは執務室か自室に行っていましたが、シルフィー様からグロリア様の執務室に行くようにと指示されました。
なのでグロリア様の執務室へ向かうと、今までにない厳重な警備が敷かれていました。
「こ、これは流石に第一王子という所でしょうか」
廊下の途中から兵士が壁際にたくさん並び、執務室に近づくにつれて騎士へと変わりました。
そして執務室の正面には大きな部屋があり、中は騎士の待機場室になっています。
私が廊下を進むたびにジロリと睨まれるので、何もしていないのにとても不安になってしまいました。
執務室の両開き扉の両脇には騎士が立っており、片方には執事さんらしき男性が立っています。
その方に私の名前と要件を言うと、執事さんが扉をノックしてくれました。
扉が開かれると執務室には三人の男性がおり、正面と左右の机で仕事をしていまました。
正面のひと際大きな机にはグロリア様、私から見て左側にシルフィー様、右には知らない若い男性がいます。
「来たかシルビア。早速だがこの書類を各所に届けて欲しいのだ」
シルフィー様の指が机の上の書類……を通り過ぎて机の後ろにある棚を指さします。
よく見ると棚には複数の箱が並べられており、その中の一つの事を言っているようです。
箱は私の手を広げたよりも深く、箱を持つとズシリと重さを感じます。
「それを今日中に届けろ」
「かしこまりました。あちらの台をお借りしてもよろしいですか?」
広い部屋の片隅にまだ書類が置かれていない作業台がありました。
「かまわない」
「ありがとうございます」
私は作業台に順番に書類を並べていきます。
少なくともこのお城にはこの分厚い枚数分の部署はありません。
全てが分けられていればよいですが、まあそういう事はほぼありませんから、最初に行く場所を調べて効率よく回りましょう。
熱い紅茶が冷めないくらいの時間で仕分けが終わり、ルートも決まりました。
「それでは行ってまいります」
今度は午後のティータイムが終わるくらいの時間で帰ってきました。
書類は全て渡したのですが、箱の中には数枚の書類が入っています。
「ただいま戻りました」
「……そうか、速かったではないか」
「シルフィー様、兵装備からと厨房から書類を預かりました。今月の交換装備の一覧と、メニュー変更に伴う追加予算申請のようです」
「む? 兵の装備は先月分で一通り交換が終わったはずだが」
「どうやら訓練に熱が入り、模擬刀と鎧が破損したようです」
「そうなのか。メニューの変更というのは?」
「なにやら珍しい調味料が王都に入ったらしく、それを使った料理を出したいとおっしゃっていました」
「ふむ……ちなみにこの二枚は誰から渡されたのだ?」
「兵装備は訓練隊長から、厨房は料理長から預かりました」
シルフィー様の目が細くなります。
あら? グロリア様の目は大きくなってるし、もう一人の方は眉をひそめています。
何かあったのでしょうか。
「ごほん。よろしい、兄上、両方とも問題はありませんね?」
「ん? おお、かまわない、通してくれ」
グロリア様に確認を取ると、書類にシルフィー様のサインが入りました。
「では二枚を届けてくるのだ」
書類を渡して戻ってくると、私が使った作業台に書類が一束乗っていました。
「今度はその書類に目を通し、間違いがないかの確認を」
「間違いがあった書類はどうしますか?」
「差し戻せ」
ふと見ると作業台の横に丸椅子が置いてありました。
さっきまでは無かったはずですが、椅子があると助かりますね。
椅子に座り書類が入る小箱を二つ用意します。
さて、どのような書類があるのでしょうか。
調べたところ三分の一が計算間違いと書式違いや誤字脱字がありました。
この手の書類は
「チェック完了しました」
「では問題の無かったものを私に、問題ありは明日にでも各所に取りに来させろ」
書類をシルフィー様に渡し、ダメな書類は作業台に乗せたままにします。
間違いは本当に単純なものばかりで、根本的にダメなのは数枚だけでした。
逆に根本的にダメな部署は大丈夫なのでしょうか。
「次は何をいたしましょうか」
「え? ああ、うんそうだな……お茶を入れてくれ」
「かしこまりました」
ティーカップは皆さんの机に置いてありますが、飲み干してあるか冷めています。
では精いっぱい美味しい紅茶を飲んでいただきましょう。
翌朝執務室へ向かうと、昨日とは違い兵士や騎士に睨まれる事はありませんでした。
そして部屋に入ると……シルフィー様の隣に机が増えていました。
「この机に乗っている書類を確認しろ」
久しぶりに書類の山を見ました。
といってもサファリ様を矯正させるときに見た書類の山脈ほどではありません。
それよりもメイドが執務室で王子と、しかも第一・第二王子と共に仕事??
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