第120話
ディアマンテ龍王国にリック様と戻り、大使館へと向かいます。
「シルビア……パルサーお姉様には……きつく言っておいたけど……一応言い訳は聞いてあげて……ほしい」
「わかりました。私も勝手に逃げてしまいましたから、お互いにしっかりとお話をした方が良いですね」
馬上で言われ、私は素直にうなずきました。
そもそも私の方が分が悪いので、むしろ謝罪をするのはこちらになるでしょう。
大使館が見えてきました。
すでに日が沈み辺りは薄暗くなっていますが、大使館の前だけは明るいです。
「ただいま……戻りました」
大使館前には沢山の人が待っており、リック様の元に集まってきます。
その先頭にいるのはパルサー様。
「お帰りなさいですのセドリック。そしてシルビア」
「ただいま戻りました。ご迷惑をおかけして――」
「それはいいんですの。まずは中に入って下さいまし」
そう言われて馬から降り、大使館内へと入っていきます。
お出迎えに来ていた人たちは変装したままの私を誰だかわからなかった様で、少ししてからようやく気が付く人が多いです。
リック様が連れてきたから私だとわかっていてもこうなのに、リック様はどうして一目で私だとわかったのでしょう。
応接室に行くのかと思ったらパルサー様の自室でした。
すでにお茶の用意がされており、私が最初にソファーに座り、リック様、パルサー様が座ると私達を残して全員部屋から出て行きます。
「まずは謝罪をさせて欲しいんですの。シルビア、あなたに気を使わせるような事を言ってしまった事を謝罪しますわ。ごめんなさい」
そう言って頭を下げます。
「お、お待ちくださいパルサー様! 私が勝手に勘違いしただけです! 顔をお上げください!」
「いいえ、私はあなたが優秀だと聞き、どこまで出来るのか試したかったんですわ。だから丁度良い『たんねんべるくがん』を調べるように誘導したんですの。でもそれがあなたにどれだけ負担になるかを考えていませんでしたの」
確かにとてつもない負担でした。
主の元に帰るのが嫌になるくらいに。
でもそれは私が断ったりとぼけたりしたら回避できたはずです。
きっと自分なら調べられるのではないか、そんな
「いいえ、結局は自分が知りたかったのです。だからこそ知った情報を伝えたら戦争に繋がるのではないか、そう考えて怖くなって逃げたのです」
「え? 知ったんですの? たんねんべるくがんの使い方を?」
「シルビア? ……知ってるの?」
「あ」
しまった! 重圧に負けて逃げたと思われていたのに、タンネンベルク・ガンの使い方を知ったから逃げた事がバレてしまいました!
思わず目をそらしてしまいましたが、これは……どうしましょう!?
「ま、構いませんわ。その情報はあなたの心にしまっておいてくださいまし」
「よろしいのですか?」
「ええ。そもそも私の仕事は、相手が攻めて来た際に情報を不足なく伝える事ですわ。だから知らない兵器や兵種、戦い方などを知っておく必要があったんですの」
「こちらからは攻めないのですか?」
「父上が戦争を嫌っておりますもの。だからクラウン帝国との戦いでも、最後の最後まで交渉で粘ったのですわ」
「そうでしたか。しかしパルサー様でしたら相手から攻めさせる事も可能なのではありませんか?」
「おほほほほ。そのような面倒な事はしませんわ。私も戦争は嫌いですもの、そこは親子で変わりありませんわ」
それなら良いのですが……パルサー様は本心が読めないから何とも言えません。
「シルビア……お姉様は本当にシルビアの事……心配していた……だから今回は……許してあげてほしい」
「もちろんです。そもそも私が謝罪する側だと思っていましたから」
「許してくれてありがとうですわ。今日は疲れてるでしょう? お風呂に入ってさっぱりしていらっしゃいな」
翌日の朝食後、私はリック様に呼ばれてリビングに来ました。
「おはようございますパルサー様」
「おはようですわシルビア」
パルサー様はソファーに座りお茶を飲んでいました。
今日もお城に用事を言われるのでしょうか。
「お姉様……もうシルビアは……いいよね」
「ええ、もう構いませんわ」
「ありがとう……じゃあシルビア……戻ろうか」
「え? え? 要件は何だったんですか?」
「シルビアの……ディアマンテ龍王国での役目は……終わったって事」
パルサー様を見ると、何事も無かった様にお菓子を食べています。
なるほど、昨晩の内に決まっていたのですね。
「わかりました。短い間ではありましたがお世話になりました」
「いいえ、こちらこそ助かりましたわ。特に龍の化石を発掘した事は本当に感謝しておりますの」
そういえば龍の化石を発掘したんだったわ、タンネンベルク・ガンの事に気を取られてすっかり忘れてた。
「それでお城に挨拶だけ行って欲しいんですの。アウトランダー
「はい、かしこまりました」
そうしてお城に挨拶に伺うと、
喧嘩でもしたのでしょうか。
龍博物館にも挨拶に伺い、他にもお世話になった方々に挨拶をして回ります。
なんだか随分とお土産をもらいましたが、こんなにもらって良いのでしょうか。
翌日になりエルグランド王国へと戻るのですが……リック様と同じ馬車になりました。
「あのリック様? 王族の方と同じ馬車というのは」
「なにを言っているの……ここにいるのはシルビアの友人……ただのリックだよ」
帰路は楽しい時間になりそうです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます