第110話
「龍を探して欲しい、というのだ」
「龍? 龍とは物語や神話に出て来る龍ですか?」
サファリ様が困った顔で首を縦に振ります。
パルサー様がサファリ様にお願いした事、それが龍を探すというもの。
しかしそんなものが存在するはずがありません。
「えー、伝説上の生き物を探せとはどういう理由でしょうか?」
「それはねシルビア、ディアマンテ
なるほど理由は理解出来ました。
しかしそれとこれとは話が別です。
「龍……なんてものは空想上の生き物です、それを見つけるというのは何かの比喩でしょうか?」
「いいえ違いますわ、文字通り、聞いた通りの意味ですの」
滅茶苦茶です。
空想上の生き物と理解していながら、どうやって龍を見つけるというのでしょうか。
「ほんとにもう、サファリお兄様が早とちりしてしまったが為に、
「妄想じゃないのか?」
「ち・が・い・ま・す・わ。龍を見つけるというのは本当ですが、それにはきちんとした根拠がございますの」
「「根拠?」」
「ええ。ディアマンテ龍王国のとある場所で、巨大な骨の化石が発見されましたの。それは巨大な龍の爪の化石である、そうディアマンテ龍王国は判断しましたわ」
「爪の化石ですか? 巨大な龍の爪というと大きさはどのくらいでしょうか」
「大人の男性の腕と同じくらいの大きさだそうですわ」
爪だけで腕と同じ長さですか、それは確かに巨大な龍の爪と言われれば納得してしまいますね。
それなら確かに龍がいる証拠に……ん?
「お待ちください、それは化石なのですよね? ならば龍は絶滅したと言えるのではありませんか?」
「化石が見つかった生き物でも、類似種が生存している例は複数ありますわ。龍も同様に類似種が存在している可能性は十分にあると考えられますの」
「では太古に存在していたかもしれない龍の類似種を探しだす、それが目的なのですね?」
「その通りですわ」
なるほど、昔と同じ龍が存在していれば上々、類似種が見つかればそれで良し、といった所ですね。
はぁ、まさか龍が存在しているなんて夢物語の為に、一国の王子王女が駆り出されるなんて。
「わかりました。しかしなぜサファリ様なのですか? 考古学者の方が良いと思うのですが」
「それは簡単ですわ。サファリお兄様、お暇なんでしょう? それにサンタナさんや側室がいれば執務に支障が無いのは知っておりますの。体力が有り余っていらっしゃるのでしょう? 今は体力のある男性が最も必要なんですわ」
労働者としてですか!?
あー……いえ違いますね、建国記念日に向けてエルグランド王国の王族が二人も動いた、その事実が欲しいのでしょう。
見つからなくても全力で探した、だから今後も技術供与をお願いします、と。
だとしたら断る理由なんてありませんが、ふぅ、サファリ様の教育は一時中断ね。
「ではサファリ様の荷物を準備いたします。何日ほどを予定されていますか?」
「そうですわね、ひと月以上半年未満、といったところですわ」
「かしこまりました。サンタナ様や側室の方々はどうされますか?」
「サンタナさんはお城に残っていただき、側室の一人を連れていきたいですわ」
ふむふむ、そうなると荷物は……
「それとメイドが一人、シルビアさんにお願いいたしますわね」
「はいかしこまり……え? 私ですか?」
「もちろんですわ。ディアマンテ龍王国の
私はディアマンテ龍王国に行ったことはありません。
以前はプレアデス
「なぜ私に? お会いした事はないはずですが」
「ウワサに聞いたそうですわよ。王侯貴族を魅了し手玉に取る魔性のメイドだと」
??????
王侯貴族を魅了? 手玉に取る? 私がですか?
「それは勘違いをされているか、別の人と間違えていらっしゃるのではないでしょうか?」
「勘違いなら良かったのですが、
魔性のメイド……絶対に私じゃありませんね。
きっと尾ひれが付いてそんな話になってしまったのでしょう。
はぁ、とため息をついてしまいましたが、あら? サファリ様が困った顔をしておいでだわ。
「あの~、結局僕は行かないといけないのかな?」
「もちろんですの」
「その通りです」
「ううっ! 気分が乗らないなぁ……そうだシルビアいっそ命令してよ、訓練の時みたいに。そうしたら諦めがつくからさ」
「仕方がありませんね。ゴホン、サファリ様! 今回の任務はディアマンテ龍王国におもむき、伝説の龍を探し出す事です! 見事に見つけ出して世間をあっと驚かせて来てください!!」
「イエス! マム!!」
仰々しく敬礼をし、楽しそうに笑います。
そんなサファリ様と私を見て、パルサー様はニコニコしています。
さて、それでは龍を探す旅に出かけるとしましょう。
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