第90話
「お久しぶりです、エクシーガ大司教様」
私を訪ねてきた外交官の一人は、プレアデス
他の御二人もプレアデス
「シルビアさん、お久しぶりです! お元気そうで何よりです」
「お陰様で元気でやっています。御二方もお元気そうですね」
「ええ、あなたやリーフ様と別れてから、教えてもらった健康法を実践しているわ」
「まったくですよ。僕もあの健康運動のお陰で少し痩せましたから」
確かに男性は少し、いえかなり痩せたように見えます。
運動が役に立ったのならよかった。
「ささ、シルビアさん座ってください」
「失礼します」
エクシーガ大司教様が上座の一人用ソファーに座り、その右側には外交官の二人が長いソファーに、私はその正面の長ソファーに一人で座ります。
「早速ですがシルビアさん、あなたにお願いがあって来ました」
「私にですか?」
「はい。実は……鳥の巣を作りたいのですが、どうやって作ればよいのでしょうか?」
思わず連続でまばたきをしてしまいました。
鳥の巣? 鳥の巣というのは何かの隠語ではなくてですか?
「えっと、鳥の巣というのは鳥が子供を育てる時に作る巣の事でしょうか?」
「はい! 我が国は鳥を神の使いとしているのですが、シルビアさんが雛を助けて以降、あちこちで雛を保護できるようになりました。ですが、場合によっては親鳥が見捨ててしまう事もあり、何とか自分達で雛を育てられないかという話が出てきました」
ああなるほど、以前は鳥は神の使いだから触れる事は出来なかったのでした。
私がこじつけで巣から落ちた雛を助けて以降、あちこちで助けることが可能になったと。
それなら親鳥が雛を見捨てる数が増えるのも納得できます。
「鳥の巣ですか、確か以前見た辞典の中に、巣箱という物があったはずです」
「巣箱⁉ それは一体どのようなものでしょうか!」
「小さな木箱ですが、雨が入らないように屋根を斜めにしてひさしを作り、その下に鳥が出入りできるだけの穴を開けるのです。鳥の大きさによって箱の大きさが変わりますから、そこは臨機応変にお願いします」
「ふむふむ、ほうほう! 流石ですシルビアさん! いや~、他の国の人にも聞いたのですが、鳥の巣なら小枝で適当に作ればどうかと言われまして、その通りに作ったのですが全く鳥が入ってくれなくて」
「自分が住みやすいように枝を置くようなので、枠組みだけを作ればいいようです」
「ありがとうございます! これで神の使いを救う事が出来るでしょう!」
「良かったわねエクシーガ大司教」
「本当だね。僕達も考えたんだけどさっぱり思い付かなくて」
「お役に立てて何よりです」
その後は色々と雑談をしましたが、御三方もお忙しいので早々にお開きになりました。
それにしても皆さんお元気ですね。
はて、そういえば他にも居たような……あ、ヒミコ様だわ。
そういえばあの方はまだエルグランド王国にいらっしゃるはずだけど、最近はあまりお見掛けしませんね。
そんな事を考えて廊下を歩いていると、バネット様が現れて私を壁に押し付けました。
これは……壁ドン!
まさか女性にされるとは思いもしませんでした。
「男とイチャついてる暇があったら、俺と付き合えってんだよ」
「イチャついてはいませんが……お仕事とあればお付き合いいたします」
「そうかい、じゃあこっちに来な!」
腕を引かれて連れていかれたのは騎士団の訓練場。
兵士の訓練場とは違いかなり広く、集団戦闘訓練も可能な場所です。
「おい連れてきたぞ」
「おおシルビア嬢、よく来てくれた。ささ、早速だが五百対五百の戦闘を見てくれ」
訓練場が一望できる場所に連れていかれ、バネット様、騎士団長と共に戦闘訓練を見せられました。
なるほど凄い数ですね、圧巻です。
一戦だけかと思いきや、なんと五戦連続で見学をさせていただきました。
……疲れた。
「よしシルビア、今の戦いを見てどうだ? なにか新しい剣術を思い付いたか?」
バネット様がキラキラと目を輝かせて聞いてきます。
それに対して私はこう答えます。
「そうですね……距離が遠いので個人の戦いが全く見えませんでした」
「「……あ」」
バネット様と騎士団長も気が付いたようです。
ええ、ここからでは全く個人の動きが見えません。
ですが疑問点が山のようにあります。
「どうして真正面から戦うのでしょうか?」
「あん? そりゃお前、訓練なんだから真正面からぶつかるだろ」
「実戦でも真正面から戦うのですか?」
「シルビア嬢、戦場では様々な戦いがある。正面衝突もあれば裏を攻めたり、引きながら戦う事もある」
「では一つ提案があります」
私はバネット様と離れ、騎士団長と共に反対側の陣へと入ります。
つまりバネット様対私と言う形ですね。
「では皆さん、初動は間違えないでください。次の動きに移る時はこちらで指示します」
騎士達は気の無い返事を返しますが、騎士団長が活を入れると元気な返事が返ってきます。
上手くいけばいいのですが。
結果、私が指示した陣営が圧勝しました。
「うおぉいシルビア! てめー一体何しやがった!!」
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