第78話
「お久しぶりねローレルさん! シルビアさん!」
「お久しぶりでしゅ、ヒミコ様」
「お久しぶりですヒミコ様。お会いできて嬉しいです」
ヒミコ様がエルグランド王国にいらっしゃり、私とローレル様が歓待します。
今日は久しぶりにローレル様と共に行動し、ヒミコ様のお世話をする事になりました。
ヒミコ様は第一王女なのでもう少し上の方が出てきても良いと思いましたが、直接面識があるのが私達だから、というのが理由です。
「今日はゆっくりとおくつろぎください」
「いいえ! ゆっくりするなんて時間がもったいないもの、まずは街の視察を希望します!」
相変らず行動力がありますね。
以前のイメージだと考えるよりも行動というタイプだったけど、まだまだそれは健在のようです。
今日は大人しくしているつもりだったけど、街に行くのなら丁度いいですね。
「それでは街をご案内します。お疲れでしょうから馬車をご用意します」
「疲れていませんから、歩いて行きます!」
だそうなので、ヒミコ様のお荷物運びを他の人にお願いし、私達は小さめのリビングを後にします。
うん、見てる見てる、他のメイド達がヒミコ様やローレル様に頭を下げながらも、私を睨むように見てきます。
今はこれ位でいいでしょう。
市街でのヒミコ様はあらゆる物に興味をしめし、目に付く物全てに「アレは何!?」「これは!?」「あちらにも何かあるわ!」と聞いてきます。
凄い好奇心ね、私はどちらかというと冷めているから、これだけ素直に感情を出してくれると嬉しいです。
きりが無いほど見て回るので、日が沈む前に王宮に戻りました。
それでもヒミコ様はまだまだ元気です。
私とローレル様は……疲れました。
さて、流石に私がヒミコ様のお相手をするのは今日限りなので、明日からは別の人が応対する事になります。
とはいえ今日一日はまだあるので、精いっぱいおもてなししましょう。
お城に戻ってくると、私を見た数名のメイドがそそくさと姿を消します。
これはローレル様やヒミコ様ではなく、間違いなく私を見てどこかへと行きましたね。
さて行った先はどちらの方でしょうか。
ヒミコ様に夕食を共に取ろうと提案されましたが流石にお断りしましたが、中々諦めて下さらないので夕食後のティータイムにお付き合いする事になりました。
なので小さなリビングルームを使用したかったのですが、オマケというかメインというか、他の王子王女も一緒に来る事になりました。
それは困るので逃げようとしたら、リック様がとてもにこやかな顔で私の両肩を掴みます。
「大丈夫……僕が一緒だから……他の兄弟も問題ない」
大ありなんですけどね? しかし王子の一人が無理を言って連れてきた、という事にしたら何とか許されるでしょうか。
シーマ様はいらっしゃらないので、五男五女の王子王女が広いリビングルームに集まり、ヒミコ様と私も参加します。
ワインを飲みながら談笑していますが、話はほとんどスリーヒルズ連邦の事です。
やはり皆様他国の事に興味がおりなのでしょう、政策や法律、市勢の様子などをたくさん聞いています。
ヒミコ様も自国の自慢話を沢山出来るので楽しそう。
しかし楽しくなさそうな人たちがいます。
シルフィー王子とサファリ王子のメイド達です。
理由はもちろん私でしょう。
一介のメイドが国を代表する方々と共に卓を囲んでいるのですから、口の悪い言い方をすると「オメー何もんよ!?」と思っているでしょうね。
これは明日からが面白くなりそうです。
翌朝、目が覚めて着替えをし、部屋から出ようとするとドアが開きません。
あら? 鍵を開けたのに開きませんね。
ドアを力いっぱい引いても開きませんが、上の方はすき間ができる程度には開くようです。
私はベッドの補修部品の鉄の棒を二本使い、ドアを力いっぱい引っ張って出来たスキ間に鉄棒を挟みます。
一本をスキ間に突っこみ、もう一本も上から差し込むと、二本の棒を交差させ、てこの原理で少しずつこじ開けます。
すると途中で何かに引っ掛かり止まりました。
隙間から覗いてみると、どうやら木の棒のようです。
「これは……モップの棒?」
ドアノブ付近が一番しっかりと固定されているので、ここに何か細工がされているのでしょう。
私はてこの原理で広げたすき間に板を少しずつはさみ、ドアの開く量を増やします。
そして遂に大きな音とともにドアが開きました。
「なるほど、モップの棒をロープでドアノブに括りつけ、
お陰でドアノブが壊れてしまいました。
これは後で直しましょう。
周囲を見ると私を見ないように通り抜けるメイドが複数と、何があったのかと驚いているメイドが大多数です。
小手調べにしては中々に手が込んでいますね
これは戻ってきたら部屋の中が大変な事になってそうです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます