第7話 9月15日
放課後、高柳さんがバルーンアートを教えに来てくれた。
孔明は言っていた通り学校を休んだ。
折原の他に手伝ってくれるクラスメイトが3人ほど参加した。
風船が割れたり、お手本と全然違う物が出来上がったりした時にみんなで盛り上がってワイワイとやっていた、折原もその時は一緒になって笑っていた。
こういう時の折原は本当にその辺にいる女子高生って感じに見える。
表情をあまり出さないクールな折原も綺麗だけど、笑っている折原はすごく可愛かった。
1時間くらい教わっていろいろ作ってみたが、思いのほかみんな簡単にマスターした。
「あれ?みんな上手いな笑」
「おれ、何日か教えに来ようと思っていたのに今日で終わっちゃいそうじゃん笑」
「じゃあ、もっと難しいの教えるわ」
と高柳さんも楽しそうにしていた。
「あっ、高柳さん、風船の費用のことを聞いて学校に予算を出さなきゃいけなくて」
と、俺は高柳さんを呼び出して話をはじめた、他のみんなは新しく教わったバルーンアートの練習をしていた。
「ああ、新谷くん、お姉さんに伝えてくれた?」
「え?いやまだ笑」
「えー、伝えるまで教えない笑、うそうそ」
「うーーんと、この教室を飾るのと、当日に配る分・・・失敗することも想定しなきゃなんだけど、みんな結構上手いから、予備はそんなにいらないかもなぁ」
「まあでも、ちょっと多めにには頼んでおくけど、その2/3の金額でいいかなぁ、余った分は、おれが引き取るよ、どうせ祭りでまた使うから」
「しかし、懐かしいな、もっと古くなってるかと思ったけど、あんまり変わってないなぁ、教室にエアコンついてるけど笑」
「高柳さんもこの高校だったんだんですか?」
「そうだよ、璃子ちゃんのお母さんとは3年間クラス一緒だったよ」
「・・・・どんな人だったんですか?折原のお母さんって」
「璃子ちゃんにそっくりだよ笑、桜井もすごい美人だったから、あっ今も綺麗だけどね、こないだ会ったけど。なんか、雰囲気もちょっと似てるなぁ。。ちょっと人を寄せ付けない感じだけど、話すと意外とそうでもないんだよね」
「似てますね」
「まあ、璃子ちゃんもそうだと思うけど、めちゃくちゃモテたよ」
「学校内だけじゃなくって、他の高校、大学生とかにも告られてたよ」
「折原も一緒です」
「やっぱり?そうだよねーあんだけ可愛いと、ちょっとこの街にいると釣り合わないというか、目立ちすぎちゃうよね。でも、東京でもあんなに可愛い子はあんまり見かけなかったなぁ」
「高柳さん東京の大学に行ってたんですか?」
「うん、おれ画家っていうか、イラストレーターになりたくって東京の美大にいってたんだけどさ、親父が倒れちゃってね。でも、あっちにはめちゃくちゃ絵が上手い奴沢山いてさ、自信なくしてたし、まあいずれは継ぐかもって思ってたから、ちょうどよかったかもね」
「新谷くんは?進学?」
「はい、隣町の大学に行こうかと思ってます、受かればですけど笑」
「そっかー、なんかなりたいものとかあるの?」
「いえ・・特にないんで、大学行って考えようかなぁって思ってます」
「いいね!モラトリアル!大事だよ笑」
「あっ、金額、井澤に伝えなきゃ」
「もう一人会計係のやつがいるんですけど、今日用事で学校休んでて」
そう言って、概算の金額を孔明にLINEを送った
「じゃ、もう少し色々教えようかな」
と高柳さんが戻ろうとした時に俺は
「あの・・・高柳さん、折原のお母さんに当時、なんていうか・・・変な噂とかありませんでしたか?おばあちゃんの話とかも・・・」
本当は、アンドロイドって言ってなかったか?と聞きたかったが、流石に突拍子もないと思い、ぼんやりとした質問をしてしまった。
「悪い噂・・・笑」
「まあねー、いろいろあったよ笑、本当か嘘かわからないような物までね、まあ、桜井もなんていうか。。。そういう部分あったから、嫉妬の混じったひどい噂もあったね」
「折原と一緒ですね・・」
「そんなところまで、親子で似なくて良いのになぁ・・璃子ちゃんも良い子っぽいのに」
ガタッ
教室のドアが開いた、予想通り、隆だった。
「おっやってるやってる、オレにもやらせてよ」
「高木くん、遅かったね、もっと早く邪魔しにくると思ったのに笑」
珍しく折原が隆に話しかけていた。
「邪魔って笑」
「うん、進路相談。前から就職っていうか家の仕事手伝うって言ってんのになぁ」
「あっ高木さんのところの三男じゃん、元気?」
と高柳さんが隆に親しそうに話かけた。
「隆だっけ?お前もこのクラス?」
「いえ笑オレ隣のクラスなんすけど、うちのクラス、メイド喫茶やるから出番がないからいつもこっちに遊びにきてるんすよ」
隆が加わって、より賑やかに準備は盛り上がった。
俺ももう少し教わろうと思った時、スマホに通知が入った。
孔明からだった。
『お前さ、これもうプリントするだけ良いような内容じゃん』
『笑、まあそう言うなよ、なんかそれっぽくまとめておいてよ』
と返すと
三国志のスタンプが返ってきた。
こいつもスタンプなんか使うんだなと思ったのと・・・・三国志って自虐かよ笑
あいつにもユーモアというか、洒落っ気があるんだと思って少し笑ってしまった。
結局下校時間まで練習をして解散した。
高柳さんには前日に追加の風船を持ってきてもらうのと、教室の飾りつけを手伝ってもらうことになった。
「もっと教えてほしかったらいつでも声かけてねー、暇だから笑」
「あと新谷くん、おねえさんの件よろしくね〜」
いつもの隆との帰り道
「高柳さんだったんだ、折原の知り合い」
「うん、折原の母さんの同級生らしい」
「え?あの人結構若いよ、37とかそんくらいじゃなかったかなぁ・・・」
「やっぱ?俺もそうかなって思ったんだけどさ・・・」
「ってことはやっぱ折原ってお母さん二十歳くらいで産んでるよな・・」
「だよなー」
「お前顔見知りっぽかったじゃん」
「ああ、酒屋に酒買いに行かされたりしてたからさ」
「父ちゃんはあの店は顔見知りだから大丈夫、買ってこいって」
「釣りは小遣いにしていいから、ってさ。小遣い欲しさにね笑」
「チャラいよね、あの人笑」
「学生の頃はそうでもなかったって言ってたけどなぁ、父ちゃん」
「東京から帰ってきて少し垢抜けたって笑」
「へー、東京行くと変わるのかねー」
「お前も少しは垢抜けるんじゃない?」
「あんま興味ないし、後ほら、井澤だって東京から来たんだぜ笑」
「人それぞれってことか笑」
「そういえば、あいつ今日いなかったな」
「ああ、用事があって東京に行ってるって」
「ふーん」
「これで前日まで特にやることないなぁ、あっ一応井澤にも教えておくか」
そういってLINEを送ると
「何?お前、あいつのLINE知ってるの?仲良しじゃん笑」
「いや、会計の書類つくって欲しいっていったら、LINEで連絡して欲しいってあいつから交換しようって」
「あいつさ、結構面白いかもよ、三国志のスタンプとか返してきてさ笑」
「うん?三国志?」
「あいつの名前、孔明っていうんだよ、諸葛亮孔明の孔明」
「あー、そういうことね」
「明日から放課後、折原ちゃんに会えなくなってさみしいだろ笑」
「え笑?まあ、ちょっと」
「オレも笑」
「明日から暇だなぁ、ベースでもやろうかなぁ」
「お?ついにバンドやる気になってくれた?」
「やんねーよ笑、つうか間に合うわけないじゃん、もう」
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