第3話 9月9日

折原と孔明が転校してきてから1週間した頃に事件が起きた、折原が女子トイレで髪の毛を切られた。

理由は学校一のイケメン、バスケ部の小林と折原がヤったとかヤらないとか。

小林の彼女の山田が女子トイレに取り巻きを引き連れて折原を呼び出して、その話を問い詰め、結果折原の髪を切るという事件なったらしい、折原はその後すぐに早退して、山田は職員室呼ばれた。

次の日、折原は間学校に来なかったが、その間に色々な噂が流れた。


「小林ほんとにヤッたらしいよ」

「折原パイパンらしいぜ」

「中出しで2回したって小林言ってたよ」

「前の高校から転校した理由は子供を堕ろしたかららしいぜ」

「おれもやらしてくんねーかな」

「まあ、山田と折原だったらなぁ・・・」


そんな噂が学校中に蔓延したが、次の日、折原は何事もなかったかのように登校してきた。

ただ、セミロングの茶髪が黒髪のショートになっていた。

『ショートヘアは本当に可愛くないと似合わない』と言う定説は本当だった。

いやがらせのために山田がやった行為は、逆に折原の美しさを引き立たせる結果になった。

教室に入ってきた時の、教室の小さなどよめきと山田の驚きと嫉妬に満ちた顔は、笑えるくらいだった。


それからも、折原の悪い噂は絶えない。

男子たちは、より綺麗になった折原をみて、より卑猥な想像を膨らませることになっていった。

山田たちの嫉妬も同じく大きく膨らんで、もっとひどいイジメになっていくんじゃないかと、『俺には関係ないことだ』と思いつつも少しは心配していたんだけど、そんな心配は必要なかった。


その日の放課後、校門の前に一台の黒いレクサスが停まっていた

車の前には、いかにもなジャージをきた怖そうなお兄さんたちが2人立っていて、下校する生徒に何かを聞いているようだった。

それに気づいた先生たちが、お兄さんたちと色々話をして、しばらくして黒いレクサスは帰って行った。

結論からいうと、ジャージのお兄さんたちは山田を探していた。

ジャージのお兄さんたちは、黒いレクサスに乗っていたもっと怖いお兄さんの人の舎弟で、レクサスに乗っていたもっと怖いお兄さんは、折原の母さんの”彼氏”だったらしい。


次の日、山田は折原に必死に謝罪をしていたが折原は


「別に気にしてないから謝らなくなくていいよ」

「あの人たちが勝手にしただけだから、私はなんとも思ってないから」

「だから、これからも今まで通りでね」


と、ほとんど笑った顔を見せたことのない折原が、少しだけ笑って言った。

その笑顔は、言葉とは裏腹に恐怖を感じるくらいの冷たい笑顔だった。

しかし、その笑顔を俺は美しいと感じてしまった。


折原には新しい噂が広まった


『折原のお母さんは、この街の出身で、当時街の誰もが知るくらい美少女だった』

『俗にいうヤリマンで色んな男との噂があった』

『高校の時にすでに街のスナックでバイトをしていた』

『男とかけおちするように東京に出て行った』

『折原のばあちゃんも街で有名な美人だった』

『あそこの家はヤリマンの血統だから仕方ない』


そんな噂が広まっても折原は何一つ表情を変えずに毎日過ごしていた。

折原は完全にカーストの中から飛び出した、触れてはいけない存在になっていった。

それでも、手を出すと何が起きるかわからなくても、折原に言い寄ってくる男たちは絶えなかった、うちの高校だけじゃなく、隣の高校、隣町の大学の大学生、いろんな男が折原を口説こうと近寄ってきた。


どんどん噂は大きくなっていった、下衆な同級生のSNSでは、折原の噂話のグループができた


『隣町のホテル街で男と歩いてる折原を見かけた』

『パパ活やってるらしい』

『折原とやった大学生の一人が行方不明らしい』

『お母さんの借金があるから風俗でバイトをしてるらしい』


男子のグループには折原の隠し撮りグループができた。

隠し撮りの中にはパンチラ写真や、更衣室で着替えている写真など、みんなで自慰行為につかえるような折原の写真を競ってとっていた、中には、グラビアアイドルやセクシー女優との合成を作る強者もいた。


折原は2週間ほどで、すっかり学校の中で触れてはいけない、同級生ではない存在になっていた。



9月12日


9月末に文化祭が行われる。

俺たち高校3年生にとっては迷惑な行事ではある、10月には中間テストがあるし、11月には模試がある、2年生まではスポーツ部は部活を理由に準備には積極的に参加しなかった、俺もその一人だった。

今年はみんな部活は引退しているが、受験に備えて塾に通う奴らが多い。

俺は自分で言うのもなんだが、そんなに成績が悪い方じゃないので、そんなに必死になって勉強をしなくても隣町にある大学なら合格するだろうと言われている。

テスト期間は、人並みに勉強はするけど塾に通ってやるほど熱心にはやっていない。


ある日のホームルームで担任がクラスの出し物の実行委員を決めると言った。


「受験もあるだろうから、あんまり無理に大変なことはしなくていいし、準備も塾とかを優先していいから」

「とはいえ、クラスの出し物はなにかしらやらなきゃいけないので、3名実行委員を中心になにかやってほしい」

「ということで、まずは立候補するやついるか?」


もちろん誰も手をあげるはずはない、このクラスもともとみんなが仲が良いわけでもなかったし、1学期の始めにSNSで問題があって男子と女子の仲が悪くなった。

きっと塾に通っていない人間でくじ引きにでもさせられるんだろうと思った時、折原が手を挙げた。


折原の意外な行動に教室に静寂が続いていたが

「私、塾行ってないし、暇だからやります」

と小さな声で言った。


担任も少し驚いたようで

「おおぉ、じゃあ折原お願いするわ・・じゃああと二人は・・・新谷と・・・・・井澤・・・どうだ?」

と言って、俺と孔明に聞いてきた。

担任が言うには、塾に行ってない人間の中から五十音順で適当に選んだと言っていたが

本当は違う理由があることはクラスのみんなもなんとなく勘づいていた。


事件以来、折原は明らかに学校で、クラスで浮いてしまっていた、担任ですら腫れ物を触るかのように接しているのが、生徒の俺たちにもわかるくらいに。

俺は、良くも悪くもクラスの奴らと距離をとっていた、いや、クラスの奴らだけじゃなく、ほとんどの他人にあんまり興味がなかった。

担任は、そんな俺の性格を知っていて、折原ともある程度距離をとって接するだろうと思ったに違いない。


そんな考えが読み取れたから


「ああ、別にいいですよ」


どうせ部活もないし、塾もない、2週間ほど放課後を拘束されるだけだし、家に帰ったってどうせあんまり勉強もベースの練習だってしないんだから、あと・・・・他の男のように、俺だって折原を可愛いと思っている。

何かのきっかけで仲良くなって・・・・・

なんていう、期待(下心)が全くないわけではなかった。


「僕もいいですよ」


また意外なことが起こった。

孔明がまさかOKするとは思わなかった

というか、こいつ塾行ってないのか?

っていうか、こういう事に参加しないタイプじゃないのか?

休み時間も勉強してるし、昼休みも一人で弁当をくってるし、いつもイヤフォンをしてるし、それこそ人と距離をとるとかとらないとかの問題ではなく完全に孤独、折原とは別の意味で完全にカーストの外にいるような奴だったから。


「じゃあ、3人早速、今日の放課後少し残ってくれな」


放課後担任から説明を受けた

『どうせみんなあんまりやる気がないから、簡単にできそうな案を3つほど出してほしい』

『次のホームルームでその3つに中から多数決で決める』

『2週間ほど準備の期間があるから、その期間は放課後残って準備をしてほしい』


「じゃあ、今日は草案決まったら帰っていいから」

といって教室を出て行った。


3人になり、しばらく沈黙が続いたが、まあ想定内だったので


「どうする?ベタに喫茶店、お化け屋敷・・・あとは、なんだろうなぁ・・」


と俺から話を振ってみた、すると孔明が


「なんでもいい」


「え?」


「なんでもいいよ、二人で決めてくれて」

「僕、勉強してるからさ、二人で早く決めちゃって」


「えーと、じゃあなんで委員やるって言ったんだよ」


「内申」


「?」


「少しでも受験にプラスになると思ったから、別に文化祭なんてどうでもいいよ」


なるほどね、俺たちが勝手に想像していたこいつのイメージはそんなに遠く離れていた訳ではなかったようだ、本当はクラスのみんなと仲良くなりたいけど、言い出せなくてきっかけを作りたいんじゃないかと、ちょっとシャイな部分があるんじゃないか?そんなことを少しでも思った俺の考えは間違っていたようだ。


「でもさ、お前そんなに受験大事なのに塾いかなくていいの?」


「こんな田舎の塾の講師に教わるくらいなら、過去問やっていたほうがよっぽどマシだから」

「だから、僕はこの会には一応参加するけど、勉強してるからほっといていいよ」



性格もどうせ良くないとは思っていたが、想像以上に性格は悪かった。

まあ、別に俺だってこいつと仲良くなりたいわけじゃなかったから、問題はないのだけど


「じゃあ・・・折原・・なんかある?」

孔明とは別に仲良くなりたくはなかったわけじゃないが、折原は別だ、正直こうやって面と向かって会話するのは初めてだった。


「・・・」


ガタっ!


折原が何を言おうとした瞬間に教室のドアが開いた、隆だった


「お前、なに委員会とかやってんだよ」

「あっ折原さん、はじめまして、オレこいつの幼馴染、なんか実行委員になって残ってるっていうから、邪魔しに、いやいや遊びにきてみた、オレ高木、よろしくね」

「折原さん、B組の佐藤のライブに誘われてるって聞いたけど、委員やっていいの?」


「なに?佐藤のライブって?」


「なんか、アイドルっぽいのやるっていってたよ笑あのグループ笑」


B組の佐藤は、折原が転校してくるまでこの学校で一番かわいいと言われていた女子だ、カーストも最上位、大学生のイケメンの彼氏がいるだとか、山田も佐藤のグループでいつもつるんでいたが、折原との事件があってから、グループからはずれたようだった。


「しつこく誘われてて、やりたくないから委員になったら断りやすいと思って」


なるほどね・・・・

折原も別にやりたくて手を挙げたわけじゃなくって、佐藤のライブを断る理由にしたくて手を挙げたわけだ


「じゃあさ、テキトーにササっと決めちゃって、俺たちでバンドやらない?」


隆が折原に無謀な提案を持ちかけた、目立つのが嫌だろうから佐藤のアイドルグループもどきを断っているのだろうに。


「バンド?」


「そう、こいつさベース弾けるんだよ、折原さんなんか楽器できる?できなきゃ折原さんボーカルで、オレ、ドラムやるからさ、リズム感よさそうでしょ?見た目笑

太鼓の達人もうまいし、多分いけると思うんだよね笑」


俺と話していたくだらない話をいきなり折原にぶつけた隆に少し尊敬に似た感情をもちながらも


「ベースとドラムじゃバンドになんねーし、そもそも折原やりたくねーよ、そんなの」

「なあ、折原?」



「あはは、変なアイドルみたいなやつより楽しそうだけど、残念ながら私、楽器もできないし、歌もうまくないから、やめておく笑」


たった2週間ほどしか折原のことは見ていないけど、今まで一番楽しそうに笑っているのをみた、年相応の。。。くだらない話をして笑っている。。。昼休みに弁当を食べながら笑っている。。。他の女子みたいに笑っている折原に正直ときめいた。


「じゃあ、しょうがないかぁ、残念」

「折原さんがボーカルやってくれたら盛り上がりそうだったのになぁ、で、おまえたちのクラスは何やんの?」


空気を読んでいるのか読んでいないのかわからない隆の返しに、俺はすこし安心をした、折原はうちのクラスだけじゃなく、学校の中でも触れてはいけない存在になっているのに、隆のこういう能天気なところが、俺は好きだ。


「つうか、なんであいつはイヤホンつけて勉強してんの?」


「ああ、あいつは別にやる気あるわけじゃないみたい、内申のために手伝ってくれるみたいだからさ、まあ、いいよ俺たちだってそんなに一生懸命なわけじゃないし」


「へー、見た目どおりのガリ勉くんだったんだなぁ」

「で、なにやんの?笑」


「いや、べたに喫茶店とか、お化け屋敷とかじゃないかなぁって折原に相談していたところなんだけど、隆んところのクラスは?」


「うちはメイドカフェだってよ笑佐藤グループの女子とイケメン男子たちが女装するってノリノリで色々やってるけど、他の奴らは冷めてるよ、でも別にいいよ、やってくれるなら、オレたち何もしなくていいし」


「お前もやればいいじゃん、メイド笑」


「オレが?笑バケモンじゃん笑おもしれーけど笑お前くらいしか喜んでくれねーよ笑」


隆といつものようにくだらないやりとりしていたら、折原が少し笑いながら


「仲がいいんだね」


「まあ、小学校からずっと一緒だしね、高校卒業してもオレは多分、この街で親父の仕事を継ぐし、こいつはなんかこの辺の大学に行くって言ってるし、このままこんな感じなんじゃね?オレはバンドやりたかったけどな笑」


「お前、しつこいな笑」


「折原さんはどうするの?卒業したら?」


隆は、唐突に無神経に折原に質問をした。



しばらくの沈黙の後

折原はいつものように感情を出さないで答えた



「私、人間じゃないんだよね」



何を言い出し始めたんだ?

俺と隆は言葉を失ったが折原は続けて語り始めた


「私のおばあちゃんは、誰に造られたか、何の目的で造られたわからないけど、自分よりかわいい、美しい子孫を残すために造られた性的ロボット?アンドロイドなんだって」


何を言っているんだ?

こいつ、ヤクザに薬でも盛られてラリっているのか?


「おばあちゃんは、この街で一番のイケメンとセックスをして、お母さんを産んだ」

「お母さんもこの街一番の美人って言われて、いろんな男の人が言い寄ってきたけど、お母さん以上のかわいい、美人の作るための遺伝子をこの街では手に入れられなそうだったから、東京に出たんだって」

「そして、東京でお父さんと出会って、私が産まれた」

「お父さんが死んじゃったから、こっちに帰ってきたけど、やっぱりこの街には私よりかわいい、美しい子供を私が産むための遺伝子を持っている人がいなそうだから、きっとこの街から出てもっと大きな街にいくんじゃないかな?」


本当にこいつは何を言っているんだ?

俺は完全に言葉を失ってしまった、完全に硬直してしまった。


少しの沈黙のあと隆が話始めた


「えーと?折原さん、ロボットなの?」


「ロボットっていうか、ものすごくに人間に似せた、人間じゃない何か」


「もし本当なら、誰が?なんの為に造ったの?」


「私にもわからないけど、おばあちゃんは、偉い人が考えた何かの実験なんじゃないかって」


「おばあちゃんが・・ボケてたとかは?」

「というか、何の証拠もないでしょ?」


隆がめずらしく、ふざけないで真面目に話をしていた。

俺は正直、この時はまだ折原の言っていることは100%嘘だと思っていたから、隆がなんで真面目に話しているかわからなかった


「証拠・・・ね。。。自分が自分の身体のことは一番わかるって言っても証拠にはならないか」


「・・・・・」


少し時間をおいて折原はまた語り出した


「おばあちゃんには産まれた記録も、名前も、住所も、何一つ残ってなかったの」

「15歳の頃、突然この街に現れて、浜辺を歩いているところを警察に保護されて、初めはただの家出少女だと思われたらしいけど、名前を聞いても、どこから来たかを聞いても、何一つわからない」

「記憶喪失じゃないかって病院で診察してもらったけど、特に異常はなかったんだって」


俺たちは、黙って折原の少し話を聞く事にした。


「可哀想に思ったお医者さんが、おばあちゃんを引き取ることになったんだけど、ある日看護婦さんが、病院のベットでセックスをしてるお医者さんとおばあちゃんを見てしまったの、その噂はすぐに街中に広がって、お医者さんは心が病んじゃって、この街を出て行くことになった」

「その話を聞いた漁師のみんなが、可哀想だからっていってみんなでカンパをしておばあちゃんに家を貸してくれたの、おばあちゃんは港で働きながらその小さな家に住んでいた」

「この街の漁師さんの中には居場所を失ってこの街に来た人が沢山いたから、おばあちゃんに同情してくれたんだと思う」


「しばらくしてから・・夜になるとおばあちゃんの家に男の人が出入りするようになるの、毎日のように、代わる代わる色んな男の人が」

「ここまで話したら大体わかると思うけど、おばあちゃんは、いろんな男の人とセックスをし続けてたの、2年くらいそんなことが続いた頃、一人の男の人が東京の大学を卒業してこの街に戻ってきたの、その人は頭も良くって、顔も整っていて、背も高い、家もお金持ちで、家業を継ぐ為に東京の大学で勉強してきた。」

「その人が、おばあちゃんの噂を聞いて、ある日の夜、おばあちゃんの家に来たの」

「そして、2年以上セックスをし続けても、妊娠しなかったおばあちゃんが妊娠をした」


「あっ、もちろんそれまでもずっと生でしてたんだよ笑」


「港は大騒ぎになった、今まで沢山の男の人とセックスをしてきたから、誰が親なのか?ってね、でも、おばあちゃんは、東京から帰っていた男が親だって言ったの」


「男の親はもちろん反論した、『アバズレが金目当てに適当な嘘を言ってるだけだ証拠を出してみろ』ってね」


「普通に考えたら、みんなそう思うだろうし、おばあちゃんの言うことは誰も信用しなかった、おばあちゃんに『なんでわかるんだ?』と聞いても、私にはわかるから、別に信じてもらわなくてもいい、結婚もしなくていい、私はこの子を産んで、育てるから」

「そう言って、おばあちゃんは一人でお母さんを育てた」


「わたしたちは、男の人の遺伝子が良いか悪いかセックスをしたらわかるようにできているの」


あまりにもとんでもない話だったんで、俺はやっぱりこいつはヤクザに薬漬けにされてるんじゃないかと思った

それか、メンヘラを拗らせて頭がおかしくなったんじゃないかって


「私のいろんな噂あるでしょ?」

「あれ、半分くらいは本当だよ、この街に来てから何人かの男の人とセックスしたよ」

「でも、私よりかわいい子供を産むための遺伝子にはまだ出会えていない」


隆が話を遮るように


「じゃあ、小林とヤッたってのも?」


「小林くん、イケメンだからひょっとしたら?って思ったけど、違ったみたい」


下校の合図の鐘がなった

折原の話を聞いていて、結局出し物の案を決めれなかった、職員室に行って担任に適当な言い訳を伝えた。

明日の放課後も使っていいから早く決めてくれと言われて俺たちは解散した。




孔明はいつの間にかいなくなっていたけど、折原には


「じゃあ、また明日、俺なんか考えておくから」


「うん、私も考えてみるね」


折原の良くわからない告白には触れずに校門で別れた

俺と、隆は途中でコンビニに寄ってからダラダラと歩きながら話をした



「折原の話、本当だと思うか?」


「は?何言ってんだよ、嘘に決まってるだろ」


「だよな・・・でも・・・折原って、造りものみたいに綺麗で、感情をあんまり出さないし、人間じゃないって言われて・・・ひょっとして・・・って」


「お前、大丈夫かよ?いやいや、100歩譲って、いや10000歩譲って、折原の言うようにアンドロイド?がいるとしよう。でも、なんでこの街にいるんだよ、折原の言ったみたいに、良い遺伝子を探すのが目的なら、こんな寂れた街じゃなくて東京に送り込んだ方が良いだろ?」


「どこの誰かもわからない人間を受け入れてくれる街だから?・・・・俺の母ちゃんみたいに・・・」

「あと、東京にも折原みたいなアンドロイドがいないとは限らないだろ・・・」


「・・・・・」


隆の少しだけ曇った表情に俺は言葉を失ってしまった。



「まっ、そんなはずないよな笑」

「でもさ、折原、バンドの話まんざらでもなさそうだったよな、もう少し押してみようぜ」


「お前笑そんなにバンドやりたいのかよ笑」


「まあまあ、明日また勧誘してみようぜ!じゃあまた明日」



隆と別れて家に帰るまでの間、折原の言ったことを考えていた。


『なんであんな嘘をつくんだろうか?』

『本当に思い込んでいるなら、病院に連れていった方が良いんじゃないか?』





『もし、言っていることが本当なら、俺もセックスできるんじゃないか?』






家に帰って久々にベースをさわって、折原に少しだけ似ている女優のAVをみてオナニーをした。






9月13日



次の日の放課後、折原が用事があるから少し遅れると言って、俺は孔明と教室で折原を待っていた、孔明はあいかわらずイヤフォンをつけて勉強をしてたが、唐突に話しかけてきた。


「お前は、昨日の折原の話をどう思う?」


「え?お前、イヤフォンつけてたじゃん?聞こえてたの?」


「これ、別に音楽とか聴いてるわけじゃないし、雑音が少し聞こえなくなる耳栓みたいなもんだから、知らないで悪口言ってる奴らもいたけど」


性格が悪いと思っていたが、相当捻くれてるな・・・・

しかし、孔明から話かけてきたのは初めてのことだったので、少し話してみたいと思った。


「いやぁ、嘘でしょ。本当に本人がそう思っているなら病院に連れて行った方が良いと思うよ笑」


「ああいう女はあっちにもいたよ、自分に興味を持ってほしいんだよ、しかも折原みたいに、自分がかわいいとわかっているタイプは一番タチが悪い。あれは相当な性悪だよ。」


なんとなくこいつに折原の悪口を聞かされるのは癪に触ったが、まあ、別に間違ってないような気もするし、特に反論をはしなかった。


「女ってさ、寿命が短いんだよ。どんなにかわいくったって、歳をとれば男は若い女に惹かれる。折原はそういう事を良く知ってるんだと思うよ、自分の価値が一番高くなる方法を。」


女のことなんて何も知らそうな、多分童貞の癖になにを知ったかぶりをしてるんだ?と、少しづつイラついてきたが、なんでこんな事を話し出したのかが気になって質問をしてみることにした。


「でもよ、あんな話されたらちょっと期待しちゃうじゃんか、俺も折原とヤレるかもしれないって思っちゃったもん。お前だって思わなかった?」


「だからさ、女はそうやって思わせぶりな態度で自分の価値を高めるんだよ、自分の事を好きな人間は沢山いるんだよ、だからもっと私を見なさいって」



ガタっ


「ごめん遅くなって」


折原が教室に入ってきた、孔明は何事もなかったように、無言で勉強を再開していた。

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