変わった…

〈マリコ視点〉









マリコ「紹介予定派遣?」






「うん…3ヶ月は派遣で

 雇う側とアタシがお互い大丈夫って思えたら

 4ヶ月目から社員に切り替わるみたい」






マリコ「へぇ…そんなのあるんだ」







夢乃から急に連絡がきた時は驚いたけど…

目の前でショートサイズのホットコーヒーを

飲んでいる夢乃を見ながら

大丈夫そうねと安心した…




連日泣き通して

目が腫れているかと思っていた

夢乃の目元は至って普通に見えるし…






( ・・・ちょっとは成長したのかな… )






アタシが思ってた通り…

夢乃はあのお坊さんに恋をして

泣く泣く離れる事となった…






( 初めて…だよね… )






夢乃が誰かと別れるなんて

一年に数回耳にする事もあったし

別に珍しくもないけれど

「まだ一緒にいたい」と言って

泣いて縋ったのは

アタシが知る限り初めてで

夢乃にとってちゃんとした失恋は

コレが初めてだろうな…






マリコ「・・・・・・・」






此処は…コンビニのイートインスペースで

一杯100円のコンビニコーヒーを飲みながら

数日後に面接を受ける

会社の資料を眺めている夢乃の姿は

前とは少しだけ違って見える…






「歩きながらとかなら分かるけど…

 中で座って飲むならコーヒーショップがいい」






なんて事を言って

いつもコーヒーショップで

トールかグランデサイズの

500〜600円代の飲み物を頼んでいた夢乃が

「イートインあるし此処でいい?」と

コンビニを指差した時は「え?」と驚いた






( ・・・・・・ )






マリコ「お給料も悪くないしいいと思うけど

   せっかく転職するなら

   アパレルとかの接客業の方が向いてるんじゃない?」






社割だってある筈だし

身なりを整えるのが好きな夢乃には

向いている気がした…






マリコ「マツエクやネイルも自由だろうし

   お給料も…高いじゃん」






「・・・・ネイルか…」







何もついていない自分の手を

ジーっと眺めている夢乃に

「久しぶりにしてみたら?」と言うと

「面接あるのに無理だよ」と笑っていて

やっぱり少し変わった気がした





前の夢乃なら

オフィス用のシンプルなネイルをつけたり

「面接って手元もみるらしいよ」とか何とか

適当な事を口にしながら

爪磨きだけにサロンに駆け込んで行きそうなのに…






( ・・・コレでいいんだよね… )






今の夢乃はまさに

身の丈に合ったというか…

人並みの金銭感覚に戻っている気がして

ホッとするのが普通なのに

何故か素直に喜べないのは

夢乃があの寺を…

お坊さんを恋しがっているのが

分かってるからだろう…






マリコ「・・・面接決まったら就職祝いしなきゃね」






「新卒じゃないしいいよ?笑」






マリコ「心機一転って事でよ!!

   何がいいオシャレなカフェ?

   それともまつ毛パーマにしようか?笑」







いくら恋しがっても…

忘れられなくても…





( ・・・忘れなくちゃいけない… )






どんなに好きでも

あのお寺に嫁げない夢乃は

お坊さんへの恋心を忘れなきゃいけないし

今の夢乃ならちゃんとが出来る気がした…





だから…

あの田舎のお寺での事は

早く思い出にして

コッチの生活に戻って欲しかった…







マリコ「プー太郎にお酒はダメだから…

   初出勤した週末に乾杯しよ?笑」






「サングリア作ってくれるの?笑」







少しずつ…

少しずつコッチに戻ってきたらいい…









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